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2014年7月31日 (木)

菜の葉にとまる蝶の話(6)

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(*数字 とあるのは、文中に資料名を入れると面倒なので末尾に載せた印です。)


【日本人と蝶1】

筋立てみたいなことはなく、とにかく興味に向かって突き進んでいます。
なので、読み返すと自分でもとっても読みにくい!
ほんとうに先が見えて整理が出来るようになったら一からまとめなおすんだ、と、いちおうそんなことを楽しみにしましょう。

今度は菜の葉をいったん離れて、日本人はそもそも蝶をどのように捉えてきたのか、を探ってみたいと思います。


最初に、身近なお友達に教えていただいた蝶の色イメージを載せておきましょう。

【蝶といえば何色?】〜これは楽隊の身内にヒヤリング。
 白10人 黄6人、具体的に蝶の名前をあげたひと2人。
 ・・・見るのはアゲハで「真っ黒なやつ」が多いんだよね、というひと2人。

【よく見る蝶は?】〜SNSで答えて下さったもの
 ・一番多いのはキアゲハ。ごく普通に近所で咲く花の蜜を求めてます。
 ・クロアゲハ、随所、春の終わりから真夏にかけて。近所に畑はありません。
  子どものころには見かけたモンシロチョウはもう何年もまったく姿を見せません。
  熱帯化を感じます。
 ・アゲハ蝶、ミカンの木で育って。家の軒先から羽化します。
 ・クロアゲハ系が多いですが、
  すこし前まではツマグロヒョウモンもよく見かけました
  ( 庭で羽化したこともあります )。
 ・モンシロチョウ。保育園周辺。いまくらいの季節の前後辺り。
 べつにじかにお聞きした例ですが、小さい畑が近くにあるお宅だと、
 モンシロチョウをいちばん見るんだそうです。作物は不明でした。
 ・子供の頃は、ジャノメチョウをよく見ました。
  家の裏にイチジクの木があったのを思い出します。今は見なくなりました。
 ・白または黄色で、アゲハ蝶よりも小さいです。
 ・うちの庭に白い小さい蝶が、飛んでいます。かわいいです。
 ・ウチの周りのブドウ畑はモンシロチョウが多いし・・・
   ・・・あ、これはドイツ在住の方。(^^;;
 ・夜の蝶は見たことある←論外!!!

季節については春か夏、というところでおおむね一致していて差がありませんでした。

「何色?」の質問で答えて下さったのと似て、実際に見るのはアゲハかモンシロチョウが多いようです。


それに対し、実際の蝶の生態はどうか、というところを、日本の蝶の生態を日本チョウ類保全協会編『フィールドガイド 日本のチョウ』(2012年 誠文堂新光社)によって手短にまとめてみます。(*1)

世界中だと1万8千以上の種に達する蝶ですが、日本で見られるのは240種以上だということで、本書では外来種を除くと255種掲載されていました。
日本人が触れてきた、と言っても、そのうちまず北海道と東北、四国九州以南、沖縄あたりでしか見られない種は、歴史的にどうだったかを古典文学から探ることは出来ません。
さらにまた高山など人が入りにくい場所にしかいない蝶は検討の対象が意図しなければならないかと思います。
そんな制約を勘案し、関東以西の本州で見られる蝶に対象を絞りますと、該当するのは71種ほどになります。
内訳はアゲハチョウ科10種、シロチョウ科7種、シジミチョウ科17種、タテハチョウ科28種、セセリチョウ科9種、といったところです。

それぞれの特徴を整理しますと、

・アゲハチョウ科(該当10種)〜5月から8月によく見られる。森林や公園、農地に多く現れる。おもな食餌(幼虫の食べ物のこと)はミカン科の葉。

・シロチョウ科(該当7種)〜8月にもっともよく見られる。河川や農地に多く現れる。食餌は3種がマメ科、4種がアブラナ科。

・シジミチョウ科(該当17種)〜5月から9月によく見られるが、4月にも4種ほどよく見られる。森林、公園、人家周辺等比較的どこでもよく現れる。食餌はおもにブナ科。

・タテハチョウ科(該当28種)〜5月から9月によく見られるが、3月にも4種ほどはよく見られる。森林、河川に多く見られ、林でもっとも多く見られる。食餌はおもにスミレ科/イネ科。

・セセリチョウ科(該当9種)〜5月から8月によく見られる。林に多い。主な食餌はイネ科。

蝶の成虫は圧倒的に夏の虫であることが分かります。なおかつ、ここでだけ菜種に触れておきますと、菜種(アブラナ科)を餌にするのはシロチョウの仲間だけであることも判明します。

また、生態上人家周辺でみかけやすいはずのシジミチョウ科が(「うちの庭に白い小さい蝶が」という一例が該当するかも知れないのを除き)実際に見かけるとの答えに現れていないのが印象的です。

じつは蝶のことをこんなふうに考え始めてから気づいたのですが、たしかにチラチラ飛んでいるのを見かけるのはシジミチョウ科のものが多いのです。けれども小さいのであっというまに見失うし、印象にも残りません。・・・このあたりはちゃんと統計をとるべきなのですが、どういう軸でとったらいいかを決めかねてしまいました。
私自身、目撃して印象に残るのはどうしてもアゲハで、やはり大きいからなのではないかなあと思います。モンシロチョウも、あるいはモンキチョウも、シジミチョウに比べれば大きいのです。
私がほんとうはいちばん目にしたらしい小型の蝶は、色合いからするとヤマトシジミではないかと思うのですが、じっととまってくれませんし、すぐ見失うのでした。(*2)

ということで、いまの人が目にして最も印象に残るのはアゲハ科の大型蝶、次いで白か黄の蝶なのだ、と、当面は記憶しておきましょう。

もうひとつ気に留めておかなければならないのは、先述の、蝶の成虫は圧倒的に夏の虫である、という点です。
この先の話で触れることもあるかと思いますが、現在の俳句では蝶は基本的に春の季語で、それは連歌以来の伝統です。しかしながら現実の蝶(の成虫)は夏の出現率が高いのです。ここにも何か探らなければならないことが潜んでいるかも知れません。はっきり分かるかどうかはこころもとありませんけれど、このことを忘れずにおこうと思います。

と、こんなあたりを念頭におきながら、次から古典などの世界で捉えられている蝶の像と現代の蝶の像との共通点や乖離する点を、また少しずつ見てまいります。


*1:他の図鑑類もいくつも目を通しましたが、この本がいろいろな点でいちばんよくまとまっていました。ただし幼虫(毛虫や芋虫)についての情報は掲載されていません。

*2:チョウの大きさについてまとめたサイト http://nakaikemi.com/zenshicho0.htm

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