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2013年7月23日 (火)

食事【こどものころ(10)】

仙台では、ごはんのときに、おかずは一人一皿が当たり前だったようです。
少なくとも私の家やご近所は、みんなそうでした。
先輩と結婚した他県出身のかたが
「一人一皿なんてびっくりでしたよ」
と仰っていたので、ウチやご近所だけではなかったとは分かっているのですが。
今はどうなのでしょう?
魚が食卓にのるのがほとんどでしたけれど、焼き魚でも煮魚でも、一人一皿です。誰が多くて誰が少ない、みたいな不公平はありませんでした。
豪勢なのは大晦日で、朝食は普段通りですが昼は食べずに三時過ぎまで待ちます。すると、この日ばかりは大皿に数種類の魚とかまぼこがどっさり盛られて出て来るのでした。全員集まってお屠蘇をいただき・・・このときだけは、お酒のまったく飲めない祖父も必ずおちょこに一杯はお酒を飲みました・・・、一年間のご苦労様をねぎらったあと、菜箸で好きなところを自分の皿にとるのです。(年越し蕎麦なるものは私の小さい頃はなかった気がするのですが、気のせいでしょうか?)

父は「鍋をみんなでつつく」みたいな食事に憧れていたらしく、いろんな道具を買って来ました。
忘れられないのは「卓上てんぷら揚げ器」とでも呼べばいいようなもので、真中の容器に注いだ油を電気で熱くして、そこへ串で刺した具を手に手に突っ込んで揚げ、揚がったら周りに張り巡らされた網に引き上げるのでした。ちくわやうずらの卵なんかを揚げたのがとても美味かった。これで何度か卓上天ぷらをやったのでしたが、どうも家族には不評で、機器が活躍したのはわずかなあいだだけでした。父の執念がみのって、土鍋でおでん、土鍋でたら鍋、が我が家に定着したのは、私が中学生になってから、くらいの頃ではかったかなぁ。
鍋のいちばんの妨げになったのは食事の仕方の習慣にあったのではないかと思います。食事中はお喋り厳禁でした。正座して、黙って食べなければいけませんでした。おかずが一人一皿ずつなら不自然にはなりませんが、六人家族が楽しくおしゃべりするでもなく黙々と鍋をつついていたりしたら、やっぱりなんだか奇妙です。

女子供(という言い方は、社会が変わった今はしませんね)の朝飯は、前の晩か、男の大人が今朝食べたものの残りでした。大人がごちそうを残していればラッキーでした。ごちそうはそう残っていることはありませんでした。それというのも、魚は身を全部食べると、骨から善いダシが出るというので、祖父などはカラになったご飯茶碗に魚の骨を入れ、そこにお湯を注いで美味そうに飲むのでしたから。このダシを飲むために、当然、祖父は魚はきれいに食べてしまっているわけです。

いま思い返すと家庭の食卓の方がよっぽど贅沢だったことが分かるのですけれど、そのころはバスでデパートまで行って、屋上の食堂でスパゲティを食べる方がよっぽど素敵なことだと思っていました。スパゲティ(当時の日本語ではティ、が言えないのでスパゲッテーと呼んでいたんじゃないかな)なんて、ナポリタンとミートソースの二種類しかなかったのですが。デパートのメニューで他に覚えているのはオムライスとお子様ランチくらいで、さほど種類はなかったのかもしれません。コーヒーは一杯50円だったのだけを、かすかに覚えています。

体質でお酒が飲めなかった祖父は、蕎麦が大好きでした。
家からいなくなったなぁ、と思うと、ひとりで街に出掛けて、好きな映画(洋画が好きでした)を見て、帰りにひとりで蕎麦を食ってきていたらしいです。
そういえば、お酒が飲めないかわりにものすごい甘党だった祖父は、練り羊羹なんかも、3センチ厚くらいの封筒サイズのものを、みるみるうちに一本、ぺろりと平らげてしまっていました。
祖父の兄弟はみんなお酒がダメだったのか、祖父の弟には、これまたおはぎが大好きというおじさんがいました。このおじさんは、私が小学校に入ったばかりの年に胃がんで東北大学附属病院に入院したのでしたが、祖母と母がおみやげにおはぎを両手に一抱えくらい持って行ったら、うまいうまい、と、むしゃむしゃ見る間に食べ尽くしてしまったのでした。
この附属病院、空襲にあわなかったので、入院していた建物は、たしか大正の頃建てられた、薄緑に塗られた下見板の平屋だった気がします。誰か覚えていないか知らん?

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