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2009年11月 2日 (月)

ヘーゲルの言葉から

ヘーゲルの「歴史哲学講義」は聴講者によるノートであり、ヘーゲル純正の著作ではありませんが、歴史を題材にしているという点で、ロマン派への転換期を迎えたドイツの、どちらかというと保守側の精神的状況を、彼のどんな主著よりも明らかにしており、後の世代にはなりますがヘーゲルとは対照を成すマルクス、ヘーゲルよりも内面的な指向の強いショーペンハウエルの、いずれも簡便な諸著作と併せて、比較的分かり易く貴重な文献です。

ヘーゲルやマルクス、ショーペンハウエル、あるいはバルザック、さらに先へ進むならばカフカやロマン・ロランの記述から読みとれる19世紀の感性とロマン派音楽との関係は、音楽史の話題で観察するとして・・・実質上ヘーゲルに始まる東洋への「偏見」には東洋人として寂しさも覚えるのですが、日本人の場合は明治以後はヘーゲルの歴史観にそのまま染まってこんにちに至っていますので、いまだに純粋に東洋人としてヘーゲルの歴史観に異を唱える感性は熟していないかと思われます、それでもなお・・・彼が古代ギリシャ精神を「解釈」した発言(実はそれを聴講した無名人の解釈なのかも知れません)には耳を傾けるべきものがありますので、音楽に直結させても良かろうと感じられるいくつかをご紹介を致します。テキストは岩波文庫(長谷川宏訳)の上下巻のうちの下巻によります。

「哲学はおどろきから出発する、といったのはアリストテレスですが、ギリシャの自然観もおどろきから出発します。・・・ギリシャ精神は、あたえられた自然をぼんやりとうけいれるのではなく、最初は違和感をいだきつつも、しかし信頼できるという予感のもとで、自分と親しく、自分が積極的にかかわることができるようなものとして自然に信頼をよせるのです。・・・自然物は、むきだしの自然物としてではなく、精神の息のかかったものとしてとらえられる。」(25-26頁)

「予感に満ちて耳かたむけ、内面の意味をさぐろうとする自然との関係をイメージ化したものが、牧神パーンの全体像です。・・・空おそろしさをよびさますパーンは、笛吹きとしてもあらわされる。・・・このイメージには、一方で、怪物の音楽が聞こえてくるという意味とともに、他方で、聞こえてくるのは聞き手自身の主観的な想像音だという意味がこめられています。」(26-27頁)

「解釈は詩ですが、自分勝手な空想ではなく、自然のなかに精神的なものを読みとる知性ゆたかな空想です。」(29頁)

「ギリシャ精神はいわば石を芸術作品につくりあげる造形芸術家です。・・・石は自然な石でありながら、精神を表現するものとなり、そのように加工されたのです。逆に、芸術家は石の精神的な可能性を理解するために、色その他の感覚的な表現形式を必要とする。そうした材料がなかったら、芸術家は自分の理念をみずから意識することもできないし、他人に対象としてしめすこともできません。芸術家の理念は思考の対象となることが出来ないものですから。」(32-33頁)

このところ綴った記事

・曲解音楽史61):近世日本2
 http://ken-hongou2.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/61-4454.html

・「悲しい」と正直に言えば喜劇になる
 http://ken-hongou2.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/15end-1107.html

・CD本、読みますか?
 http://ken-hongou2.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/14-2852.html

・たとえば「モーツァルトを聴く」
 http://ken-hongou2.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/13-6e6d.html

・たとえば「ガーシュウィンを聴く」
 http://ken-hongou2.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/12-6254.html

・たとえば「グールドを聴く」
 http://ken-hongou2.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-ac04.html

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