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2009年3月21日 (土)

歳をとらない誕生日

心臓移植への応援の願いサイト「大樹君を救う会」
http://savedm.web.fc2.com/
・・・是非、お目通し下さい。



齋藤友美賀ヴァイオリンリサイタル(2009年4月28日、市ヶ谷にて)、是非お出掛け下さい。

書籍「金沢城のヒキガエル」、記事をお読みになってお気が向くようでしたら、どうぞご一読下さい。

「生誕○年」・「没後○年」で回想される人々は、作家か音楽家、というのが圧倒的に多い気がします。
私の唯一の趣味であるクラシック音楽では、今年は有名どころではメンデルスゾーンの生誕200年、ハイドンの没後200年、ヘンデルの没後250年、といったところです。

文学やポピュラー系音楽でこうした記念年を迎える人物は、調べていないので分かりません。それぞれをお好きな方には、でも、こちらの方が、ご自身の思い出と密接に関わっている小説や詩や歌を身近に懐かしむことができているかもしれません。それが、懐かしんだり祝ったりすることにおいては、より自然なことでもあると思われます。

クラシック音楽系は、ちょっと特異で、常識はずれかもしれません。
200年以上も前に生まれたり死んだりした人を懐かしむ理由なんて、私たちには全くありません。人間の一世代が30年(人生を60年と見て、25歳くらいから55歳くらいまでが活躍の盛期である、と仮定します)とすると、200年前に生まれた人の活躍期は、祖父の父親の祖父、くらいの関係で、こう綴っただけで、普通のお宅ならば「ありゃ、なんだか実感ねえや、顔も逸話も残ってないしな」というくらい、遠い存在になってしまいます。

では、何のために「生誕○年・没後○年」を云々するのか、となると、これは(下衆の勘ぐりに当たるようなことは、わざと無視をして述べますが)、名前の知れたそういう人たち、その音楽を通じて、その当時の人の営みの中に私たち自身をも時間を超えさせ得る「タイムマシン」に乗せてもらえる、そんな遊園地に楽しみに行った気分にさせてもらえるからだと思います。
世代が遠ければ遠いほど、実生活とはかけ離れるので良さそうに考えてしまいますが、あまりに遠いと「タイムマシン」から何となく降り損ねてしまう。・・・どうしてか、というと、あまり古い時代にさかのぼってしまわれると、今度は、降りたとしても、その時代が遡れば遡るほど、当時の人と私たちとは直接にお話をするのが大変難しくなるからでしょう。日本の例でも、たかだか200年前の江戸時代の人たちを前にして会話しようと思ったら、まず江戸弁が通じる範囲、あるいは西鶴や近松から推測できるその頃の大阪弁をばっちり身につけたとしても、もし薩摩(鹿児島)や津軽なんかで降ろされちゃったら、たぶん外国人同士が顔を合わせたみたいになって、へたに言葉を交わしたりしてしまったら、
「あやつは夷狄(野蛮人)じゃ!」
だなんてことになって、斬り殺されかねないかも知れないですから。

・・・まあ、それでも少なくとも江戸時代は江戸言葉はある程度は浸透していたでしょうから、タイムマシンで行けるのはこのあたりまでが限度かな、という感じなのでしょう。
クラシック音楽で一般に親しまれる音楽も(相当に凝り性の人でなければ)200年から300年前あたりまでのものが限度で、そこから先になると、ちかごろではだいぶ身近になったモンテヴェルディやパレストリーナあたりまでがなんとかすんなり耳に入る、というところで(これでもまだ日本の「関ヶ原の合戦」頃です)、鎌倉時代に相当する頃の音楽となると、世界が全く違うため、「親しむ」のはなかなか難しいことではなかろうかと、私などは感じます。

先ほどの「一世代30年」という尺度をもとにしてみた時、人間が全世界的に「歴史」なるものを記し始めた時(西暦1000年頃に出揃います)から数えても、私たちはせいぜい30世代を経たに過ぎず、最も古く歴史を記した特定の地域の人間からみても150世代、ホモサピエンスの営みが始まったのが100万年程度前だとしても、3万世代という、思いのほか浅い積み重ねを経て来たに過ぎません。
ところが、私たちの記憶力というと、寿命の関係からいってもせいぜい、「歴史」の出揃った時期の10分の1未満、人間始まって以来の1万分の1、という、まことにわずかな「実感」以上には持ち得ないのでして、そこから先をなんとなく推測できるとして、明瞭な記憶時間はせいぜい倍に延びるのがいいところなわけです。

・・・なんと、ちっこくてわずかであることか!

それでも、その実感のわかない世界に思いを馳せることは、楽しい。実感がわかなければわかないほど、楽しい。



「祖父の父の祖父」あたりまでは会話できるとして、そこではやや、楽しさは「無条件」とはいかなくなります。
この時期の歴史的人物については往々にして感情の交じった議論が・・・ときには大きな喧嘩にまで発展するようなものが・・・生まれてくるのは、漠然とでも、まだ会話が可能である「祖父の父の祖父」の人生の輪郭には、私たちは思い入れ無しに接することが出来ないからかもしれません。

それでも、時の経った、直接出会ったことの無い「ご先祖様」に対しては、「感情まじり」で接することはあっても、そこに「感傷」までは混じることは無いでしょう。「ご先祖様」は、私たちの心の中で歳をとらないままであることが、私たちにとってはごく自然に「当然」なことなのですから。

それが、祖父母、父母、友人、我が子、伴侶、と身近になればなるほど、私たちは今度は感傷無しには接し得ないようになって行きます。
何故なら、この人たちはまぎれも無く、「私」と同じ時代を、(それが今のようにネットを通じての接触だけである相手の場合であっても)共に「生きていた・生きている」のであって、祖父母が連れて行ってくれた遊園地、父母を拝み倒して買わせた品々、また自分が親となってつい甘い顔をして与えた品々、友と共有した趣味や利害を争った仕事、くじけた時に黙って差し伸べてくれた伴侶の手、という「もの・てざわり」を通した実感として、いつもありありと私たちの心に浮かんでくる人々であるからにほかなりません。

それが、いつまでも、いや、そう欲張らず、せめて「私」の目の黒いうちは存在し続けてくれるのなら、いい。
ですが、それぞれのいのちは、それぞれに与えられたものであって、そこには生活の上でいくら深い繋がりを求め、強い絆が生まれたとしても、いのちそのものまでを結び合うことは、自然の法則が許さない。



いつの日にか、私たちは、誰もが「歳をとらない誕生日」を迎え、だんだんに、遠いご先祖様の、顔も思い浮かべられない「その他大勢」の中に組み込まれて行くのです。いま有名な「過去の人物」でも、おなじことはやがて避けられなくなる日が来るのです。

明後日3月23日は、私の家内が、3回目の「歳をとらない誕生日」を迎えます。
そして、その5ヶ月後に、
「ああ、50歳になんか、絶対なりたくない!」
と始終口にしていた家内は永遠にならずに済んだ、その年齢になる誕生日を、私が迎えます。

・・・かあちゃん、あんたは、幸せなヤツだよなあ。



今週綴った記事(昨日まで)
・「モーツァルト・レクイエムの悲劇」:書籍紹介
 http://ken-hongou2.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-b58b.html
 ※ 日本での翻訳は2年前の出版ですが、肩が凝らずに読めます。


・ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」:好きな曲025
 http://ken-hongou2.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/025-3ca9.html
 ※ 自作自演の演奏で第1楽章をお聴き頂けます。


・金沢城のヒキガエル
 http://ken-hongou2.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-2b0c.html
 ※ 読んで「ヒキガエルになりたい」と思って下さったら嬉しい本。
   最近読んだ本の中では、もっとも素晴らしいものでした。


・「響き」で大切なこと(オーケストラの場合)
 http://ken-hongou2.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-8cfb.html
 ※ 長〜い屁理屈ですから、ご興味があれば。


・モーツァルト:「パリ」交響曲 (K.297【300a】)
 http://ken-hongou2.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-9b0f.html
 ※ いろいろ研究されている作品で、私には太刀打ちできないのですが・・・
   これからも補足を綴ることになると思います。


・3月15日練習記録(TMF)
 http://ken-hongou2.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/15tmf-5651.html


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