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2008年7月 2日 (水)

目次紹介「バッハ 演奏法と解釈」

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昨日おすすめした パウル・バドゥーラ=スコダ「バッハ 演奏法と解釈」 は、税抜7,500円という高価なものですので,図書館でお読みになれるのでしたら図書館の利用もご検討なさったらよろしいかと思います。 ただ、本文部分だけで622頁、楽譜及び作品、文献の参考リストに前書き・あとがき等を加えると686頁の大著でもあり,そうした資料部分やちょっとした文章にも無駄なところがありません。本当に読み込むためには、あげられた譜例も逐一「観察」すべきです。 言えるのは、確かにこの本は副題に「ピアニストのためのバッハ」とある通り、鍵盤奏者を念頭に置いて書かれた本ではありますが,鍵盤楽器が弾けない人、あるいは楽器は全く演奏出来ない人、さらに楽譜が読めない人でも、バッハ作品を通じて「音楽の本質とは何か」を考える上で非常に有益な情報を得ることが出来、考える材料を豊かに提供してくれる、ということです。

そこで、以下に目次だけでもご紹介し、必要に応じ、たとえば「楽譜が読めない人も大丈夫です」・「これは演奏者なら熟読すべきです」等の簡単なコメントを添えて置きたいと思います。



日本語版によせて

はじめに

第1部 演奏に関する諸問題

第1章 18世紀の演奏を伝承するC.F.コルトの手回しオルガン
この本が実は「ミステリー」に匹敵するスリルがあることを、最初のこの章がよく知らせてくれます。ですから、内容はヒミツです。楽譜が読める読めないに関わらず、この本を手にしたら必読です。

第2章 リズムの研究
「リズム」とは「ブレス」ありき、であるというところから念頭に置いて読むべきです。楽譜が読めない方は譜例は「絵」として眺める程度で参考にすることは必要でしょうが、それで理解が大変になるようでしたら、まずは楽譜は見ないで、本文の趣旨をお掴み下さい。その際、むずかしい用語については、「だいたいこういう意味かなあ」と推測するだけでも結構です。

第3章 バッハの正しいテンポを求めて
<はじめに>以外は楽譜の知識がないと読むのが大変かもしれません。その場合、<はじめに>だけは是非お目通し下さい。

第4章 バッハのアーティキュレーション
この章と次章は譜例が豊富なので、楽譜の知識がないかたには理解するのが大変かもしれませんが、逆に楽譜が読めても著者の言わんとするところが汲み取れなければ、そこに秘められた非常に重要な<意味>は分からずじまいに終わります。些細な譜例(では決してないのですが、敢てそう言っておきます)に囚われず、じっくり本文をお読み下さい。

第5章 強弱法
第4章と同じことがいえます。

第6章 響きの問題
本章と次章は譜例が少なく、楽譜の知識がなくてもほぼ大丈夫です。が、バッハがこんにちの「ピアノ」の前身を弾いていたかも知れず、「音楽の捧げもの」はその楽器を念頭に書かれたかも知れない、など、歴史的に貴重な、面白い読み物でもあります。ただ、そうした記述の表面に囚われず、標題にあるとおりの「響きの問題」を・・・これはちょっとした著者の意地悪だと思えてしまうのですが・・・本文を通じて、自分なりに問題設定し直し、考察し直さなければなりません。

第7章 チェンバロとピアノのテクニックおよび表情豊かな演奏について
第6章に準じます。

第8章 原典版楽譜の諸問題
*鍵盤作品の楽譜にご興味のある方だけしか、実用上は用がないでしょう。・・・ただし、版の考え方・選び方についてどう考えるべきかの重要な議論がなされていますので、演奏をなさる方は目を通しておくことをお勧めします。楽譜に縁のないかたでも、もし文献などの比較検討、注釈の是非に関してご興味がおありでしたら、本文を追いかけてみるだけで、「ほう、音楽の世界ではこう考えるのか!」ということが、視界を広げてくれるでしょう。

第9章 作品の構造と演奏のまとめかた
短い章ですが、この本における、一つの頂点です。必読、とだけ申し上げておきます。

第10章 平均率クラヴィーア曲集第1巻の<プレリュードとフーガ第8番>
・・・楽譜を読めない方は、いちおう、お読みにならないほうがいいかもしれません・・・というのは、この章はCD等の録音を聴きながら読むべき章ではないからです。この点は、楽譜をお読みになれるかたもご留意下さい。この章は、楽譜の「読み方」についてのレクチャーです。


第2部 装飾音の研究
※この「第2部」については基本的に章の名称を記すに留めますが、大切なことは、第2部から受けとめるべきことは「装飾音の種類別の演奏法」ではなくて、「装飾音」というもの(とくに記譜と各種文献や習慣との異同比較を再読三読して概観的に掴めるようにしたうえで)、その現象を通じて、第1部第7章及び第9章にまとめられた「豊かな音楽表現は如何にあるべきか」を考察するディテイルが、ここにリスト化されているのだ、という本質です。ですから、演奏にあたる人は、自分が理解出来るかぎりの範囲で(私などは力量不足で理解しきれなかったのですが)、この第2部をいつでも大切な「手引き」として参照出来るよう読み込むべきであると考えます。

第11章 はじめに
第12章 17〜18世紀における装飾法の発展
 *トリルは上から始めるべきか下から始めるべきか・・・それが問題だ!
  答えは、この章をまず読んでみて下さい。楽譜が読めなければ本文だけ読んでも興味深いです

第13章 J.S.バッハの装飾
第14章 プラルトリラー(第2部の中で最も長大で重要な章です)
第15章 アポッジャトゥーラ
第16章 長いトリル
第17章 モルデント
第18章 アルペッジョ(17、18章は、読む方によっては「目から鱗」になります!)
第19章 記譜されていない装飾音の適用
第20章 バッハの鍵盤作品における自由な装飾


エピローグ

付録1 鍵盤作品の主要楽譜
付録2 <半音階的幻想曲とフーガ>におけるテキストおよび演奏に関する諸問題

編集後記

参考文献一覧
楽曲索引(バロック時代の作曲家はともかく、古典派から20世紀音楽まで幅広く引用されていることが分かり、驚嘆なさると思います。引用例にはマーラー「大地の歌」やベルクの「叙情組曲」他などまであるのです!)



図書館で、充分に時間を割いてお読みになれる場合、1〜4章、6〜7章、9章は是非、楽譜が読める読めないに関わらず、お目通しをお勧めします。ただし、図書館で読む場合には、楽譜に拘泥しないで、文意を「大きく」捉えられるよう、ある程度「跳ばし読み」することも辞さない読み方をなさったほうがよろしいでしょう。

ピアノで演奏なさるかたにとっては、目の前に特定の作品しかなく、発表会も迫っている、という時には、ちょっとタイミング的に役に立たないかもしれません。表層的に「課題曲」の部分だけを読んでも、そのかたのためになるような記述は全くされていないからです。
演奏者にとっては、どこにどの譜例があるかまで読み込んで「事典代わり」になるのが理想なのでしょう。・・・私にはちょっと無理そうでしたが、本来はそこまで読み込めなければいけないのだ、と痛感しております。

・・・それでも、自分が「フレーズ」を考えるためには、たいへん参考になりました。とても悔しかったのは、自分たちの演奏会の前に読み終えることが出来なかったことです(実は昨日やっと1回目を読み終えました)。・・・バロックの演奏会ではなかったとはいえ、「ああ、演奏会の前に知っていれば!」と、とくに第2部に関して傷みを覚えるほど切なく感じた本でした。

この本の価値が、上手く伝わりましたかどうか。自信がありませんが、今回はこれにて。

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コメント

目次ご紹介有り難うございます。いまインヴェンションをやっており、疑問点が多々あるので、ますます読みたくなりました。
いま読んでいる、橋本 英二著『バロックから初期古典派までの音楽の奏法—当時の演奏習慣を知り、正しい解釈をするために』を終えたら、読みまーす。

投稿: sergejO | 2008年7月 3日 (木) 05時49分

sergejOさん、インベンションには練習順番の問題もありますが、このことについてはバドゥラ=スコダの本では分かりません。

お読みになっている「バロックから初期古典派までの音楽の奏法」よりは先に、

村上隆「ピアノ教師バッハ」音楽之友社

にお目通しなさることをお勧めします。副題に「教育目的からみた<インベンションとシンフォニア>の演奏法」とある通り、内容はもっぱらインベンションを取り扱ったものです。装飾法についてはインベンションを考えるのに必要な諸説を載せているので、バドゥラ=スコダをお読みになる前に手にされてもいいかと存じますし、読みやすい本でもあります。バドゥラ=スコダの本ではインベンションは少ししか出ていません。ただし、装飾法に関してはバドゥラ=スコダ(第2部)も参照するといいでしょうね。

「バロックから初期古典派までの音楽の奏法」は網羅的で確かに助かりますが、たとえば装飾法についてはとくに、なぜ奏しなければいけないか、の記述が、さらりとし過ぎですからご注意下さい。
「バロックから初期古典派までの音楽の奏法」は事典的に<見る>上では興味深いし、これほどまとまったものが他にはないので便利と言えば便利ですが、どの項目についても残念ながら本当にきちんと知りたい場合には、別の書籍を参照する必要に迫られる結果とないます。たとえば装飾法についても「なぜそうなのか(バッハとラモーでは違うのはどうしてか)などの疑問が出ると、それには答えてくれません。(悪く評価しているのではなく、即座の閲覧向けに書かれている本だ、ということです。)同じようなことは殆ど全ての章の項目について言えます。・・・持っていて損ではない本ではあるとは思います。
他にも、たとえば音律については、中全音律がなぜそのように考えられなければいけないかは、キルンベルガー「純正作曲の方法」(春秋社)の最初の章を、平均率についても西口・森共著「もっと知りたいピアノのしくみ」(音楽之友社)あるいは小方厚「音律と音階の科学」(講談社ブルーバックス)などを読むと良いです。楽器についても、たとえばチェンバロ・ピアノなら伊東信宏編「ピアノはいつピアノになったか」(HANDAI Live)という本を読むと、ずっと興味深い。オルガンに関してもその他の楽器についても、橋本著では何も分からないに等しいと言えます。その点はくれぐれもご注意下さいね。


投稿: ken | 2008年7月 3日 (木) 06時43分

いつも済みません!実は読み進めるのに困って居りました。
お世話になりっぱなしであります。

投稿: sergejO | 2008年7月 3日 (木) 13時03分

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