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2008年6月10日 (火)

予言の鳥

Tokiomusikfroh

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先日(6月8日)は、シューマンの誕生日だったそうで、バナーを作って下さったsergejOさん特集記事を組んでいらっしゃいました。

それで、久々に私も、雑文として、シューマンを取り上げたいと思いました。カテゴリは作ってあるのですが、とんとご無沙汰でしたし。

前期ロマン派の作曲家は、私には「はかない」イメージを与える人が多いのですが、その中でもシューマンは、公の場よりは個人的な場で、その音楽に接する機会が多く、そういうプライベートな演奏の都度、彼が精神を病んでライン川への投身自殺に失敗、精神病院で死去するという悲劇的な最後を遂げたことに思いを致さずにはいられませんでした。

シューベルトも病気で早世しました。メンデルスゾーンも、幼少期から常に音楽を共にした彼の最大の理解者である姉が亡くなったことをきっかけに、失意の高まりから病を得て死んだのでした。

これら二人に比べれば、シューマンは少しは長く生きました。死んだときの年令は46歳でした。
ですが、彼が死に至った病は、上の二人よりも悲惨なものだった、と感じずにはいられません。

彼が狂気を発したのは1851年ごろらしく、その引き金となったのは、この年に深まった、デュッセルドルフの音楽協会との埋めがたい溝でした。
推測でしかありませんが、シューマンの音楽に対する「内面的なものへの強い志向」は、普通の感覚で音楽をたのしみたい常識人たちには耐え難かったことでしょう。ですから、シューマンと対立した人たちを「悪者」にしてはいけないのだとは思います。
一方で、クララとの結婚に際しても、クララの父ヴィークの執拗な反対・・・これは法廷沙汰にまでなりました・・・で長年非常に苦労した経験のあるシューマンは、何年にもわたったそのような裁判にも自分をいっさい曲げなかった頑固者でありました。頑固者の常で、彼は、なぜ人々が彼を理解出来ないのか、皆目見当がつかず、ただ腹立たしいばかりではなかったのでしょうか?



個人的には、ピアノを習ったことのない私は、学生時代、ヴァイオリンを含む室内楽数曲を先輩と演奏するというかたちでシューマンの音楽に出会い、自己流でも数曲は弾けそうな「子供の情景」の楽譜を買って来て、学校のピアノでつっかえつっかえ弾くうちに魅力を感じるようになりました。でも、ピアノの経験が豊富な人に言われたのは、
「おまえのトロイメライ、ちょっと、思い入れし過ぎ!」

シューマンがデュッセルドルフの音楽協会とトラブルになった原因は、シューマンがあまりに主情的な指揮をしたせいだ、と、読んだ伝記にありました。ですが、具体例は出ていませんでしたので、トラブルにまで至った「主情的な指揮」とはどのようなものであったのかは、分かりません。

抑鬱から発狂へと坂を転げ落ちて行ったシューマンは、数年前にまだ、作曲家として栄誉に包まれはじめたばかりでした。

ピアノ作品でもうひとつ、タイトルに情景の言葉が付された作品集が、「森の情景」です。

9曲から成るこの曲集も、シューマンのピアノ曲としては平易な方に属し、こちらも自己流で数曲手を出しましたが、ちょっと手に負えませんでした。
ですが、シューマンのピアノ作品の中では、最も好きな作品集です。
書かれたのは1848年、出版は1849年。作曲家としてのシューマンの絶頂期でした。

この作品集の中に、奇妙な曲が、ひとつあります。有名なのでご存知の方も少なくないでしょうが、

(Vogel ais Prophet)
  Wilhelm Kempf(pf) Polydor 459 383-2
 
というものです。(曲名のところに音声をリンクしましたので、お聴き頂けます。)
作曲年代をみても、この当時、シューマンはまだ狂気に囚われていないはずです。

なのに、この曲の、異様な薄暗さは何なのでしょう?

シューマンがこの先狂ってしまうことを、神が彼の手に教え賜うたのでしょうか?
それとも、そんな個人的なことではなく、もっと大きななにものかについての予言なのでしょうか?

いや、「薄暗い」のは、いまこのときの「うつつ」の世界です。
「うつつ」を薄暗く感じるのは、「予言の鳥」が、羽から金粉をふりまいて、あっという間に飛び去って行くからです。金粉が舞うあいだ、「うつつ」は一瞬光につつまれます。でも、金粉は瞬く間に地に落ち、土ぼこりのあいだに隠れて輝きを失います。

「予言の鳥」が向かう先の世界には、この鳥の羽に降り掛かっていた金が豊かにあるのか、そうではないのか・・・飛んで行ったこの鳥以外には、結局だれも知らないのでしょうか?

・・・本来、「森の情景」の各曲には詩が付されていて、それが曲の性格を説明していたのですが、現在では省かれていますし、ついていた詩がどのようなものであったかを、私は知りません。

今日は、ただ、印象だけを綴りました。・・・失礼致しました。


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