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2008年6月26日 (木)

モーツァルト:弦楽三重奏のためのアダージョとメヌエットK.266

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ここまで読んできたモーツァルト作品の個々へのリンクを作成し直しました。ご利用下さい。
つまらん長文続きですみませんでした。 ・・・でも、別記事でまた長くなりますので。

今回は、モーツァルトの小さな作品の、ささやかなご紹介です。

というのも、ささやか、とする以外にご紹介の手だてがないからです。
・・・ささやか、と言いながら、それでもこのところの長文の半分にはなるのですが。

そのかわり、これもザルツブルクどっぷり時代の最後を飾る「隠れた名作」の一つ、かつ、演奏も容易ですから、できるだけ多くのかたに、実際にかなででみてもいただきたいな、と思っています。

併せて疑作のコントルダンスも取り上げるべきかな、と一瞬考えましたが、大き目の例外を除き、いまのところは疑作は素通りを決め込んでいますので、すみませんが、今回もそのように致します(疑作K.269bは量としても3分の1しか残っていません。)



先に申し上げますと、オリジナルの編成はヴァイオリン2本にチェロですが、次のような組み合わせで演奏するのも面白いかと思います。(但し、ヴァイオリンパートには重音【和音で演奏しなければならないところ】)があるので、管楽器だけを使用する場合は5本必要になり、ヴァイオリン1パートを二人ずつで吹くことになります。

・ヴァイオリン2またはヴァイオリン1にヴィオラ1、チェロがいなければファゴットもしくはヴィオラ
 (チェロ代わりのヴィオラはオクターヴ上で演奏する・・・響きがアンバランスになりますが。)
*ヴァイオリンの代わりにフルート、は音域的に厳しいので編曲が、かつ、原音域で吹くとなるとアルトフルートが必要。また、次のオーボエと似た意味での編曲の考慮の余地あり)
・オーボエ2、クラリネット2(但し、オーボエの音域の関係から編曲が必要)、ファゴット(オーケストラの木管奏者向け)
・クラリネット4、ホルンかユーフォニアムかチューバあたりを1(ブラスバンドの室内楽練習向け)
・サキソフォン5(低音パートをテナーあるいはバリトンサックスで吹く以外は任意、同上)
・ヴァイオリンかフルート一人にピアノ(ピアノはファーストヴァイオリンパートとチェロパートを弾く・・・そのほうが、モーツァルトの書いたいわゆる「ヴァイオリンソナタ」の様式にあう気がします。セカンドヴァイオリンが、往々にしてファーストヴァイオリンよりも高い音域を演奏しているからです。)
・ヴァイオリン2人またはヴァイオリン・ヴィオラ各1にピアノ(・・・通奏低音風に和音をつけるのも面白そうですが、その場合にはバスライン以外は控えめに!)


1777年の春先に作られたことが分かっているだけの、演奏された機会も判明しない、ささやかなものです。家庭演奏のためにでも作られたのでしょうか? 作風も、弦楽器で室内楽の初級段階でよく教材にされる、この年よりも前に完成された弦楽四重奏曲にくらべて、さらにいっそう簡潔になっている、といえます。

前回見た「第2ロドロン」ナハトムジークが後年の大傑作群であるハイドンセット(6曲の弦楽四重奏曲)の域に足を突っ込んでいたのに、見ただけだと「後退したのかな」と一瞬目を疑うようなシンプルさです。

ですので、「モーツァルト演奏入門」には恰好の材料となるわけです。

が、見た目にごまかされてはいけません。

この三重奏、実に愛くるしい美人さんです。
内面的なお化粧を、決して怠っていない。ただし、そのお化粧は、とてもさりげない。だからこそ、美しい。

三重奏でありながら、先に「管楽器だけでやるためには5本必要です」と言ったことでピンと来て下さった方もいるのではないかと思いますが、モーツァルトは、とくに最初のAdagioを作るに当たっては、和声として安定する「四声」を明確に意識しています(Adagio終結部などは五つの音が必要ですが、セカンドヴァイオリンの下の音、もしくはファーストヴァイオリンの下の音を省略出来ます)。冒頭部からして、ファーストヴァイオリンには2音からなる和音を演奏させています。
もちろん、三声だけの部分が大きな割合を占める(これは彼の初期のクラヴィアソナタ、とくにト長調の冒頭楽章と似ています)のですけれど、まず第1にはセカンドヴァイオリンが決して伴奏一方に回るのではなく、ファーストヴァイオリンと交代で「歌う」ことにより、第2には難易度こそ低いものの跳躍音型を多用することにより、「そこには書かれていない」第四の音が常に存在するかのように聞こえる効果が得られています(こうした工夫は、この先も、たとえばヴァイオリンとヴィオラのための二重奏や、有名な「弦楽三重奏のためのディヴェルティメント」でもなされていくこととなります)。・・・ヴァイオリニストでなくても、同じ楽器の組み合わせで、二人のプレイヤーがいれば音色も2つになるのが普通ですから、これは勘ぐりすぎですが、そこまで計算したかも知れませんね。

メヌエットの方は、Adagioの延長でホモフォニック(旋律に和音の伴奏ををつけただけ・・・Adagioの方も、この点ではそこまで単純ではないのですが)に作られているのではないか、と思うと、さにあらず。単純な手法ながら、バスラインは四声体の根音(ドミソなら「ド」の音)を意識しつつ、単純な転回型を逸脱しない程度に動くだけなのですけれど、セカンドヴァイオリンがなかなか曲者です。ファーストヴァイオリンを相手に対位法上のルールではありえない平行三度で動く、と見せかけながら、キモとなる個所では二声の対位法の禁則を守って「古風」な味付けをする、という<目立たない>離れ業をやっていたりします。

(第1楽章のためと思われる数小節のハ長調の異稿もありますが、ファーストヴァイオリンが12小節記入されているだけです。)

B Dur
1.Adagio3/4,77小節
2.MENUETTO Allegretto 41小節 & Trio 20小節

フランスの名ヴァイオリニスト、グリュミオーが、仲間と組んだトリオとデュオの2枚組の全集に、美しい録音を残しています。

演奏譜は店頭売りはなかなか見かけませんが、輸入楽譜販売サイトでいいものを探せばよろしいかと思います。
NMA(新モーツァルト全集)(PDFで見られるサイトにリンクを貼ってあります)では第18分冊に収録されています(18/779頁から)。

擦弦楽器奏者ではないかたでも、是非、いちど接してごらんになってみて下さい。

モーツァルト : 弦楽三重奏曲、二重奏曲集Musicモーツァルト : 弦楽三重奏曲、二重奏曲集


アーティスト:グリュミオー・トリオ

販売元:マーキュリー・ミュージックエンタテインメント

発売日:1998/06/17
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