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2008年6月15日 (日)

モーツァルト:1777年のディヴェルティメント

Tokiomusikfroh

来たる6月22日は、私共のアマチュアオーケストラ、東京ムジークフローの定期演奏会です。詳しくはバナーをクリック下さい!20名様(ペア換算10組)まで無料ご招待申し上げます。ご希望の方は本ブログのプロフィールページから、記事掲載者宛メール下さい。・・・バナーは、sergejOさんがご好意で作って下さったものです。



ここまで読んできたモーツァルト作品の個々へのリンクを作成し直しました。ご利用下さい。

この年の室内楽は、ディヴェルティメント系のもの・舞曲系のもの(疑作含む)・フルート四重奏曲群(ただし、翌年作説あり)の3系統ありますが、フルート四重奏曲以外は前年のこの手の作品の延長線上にあり、ザルツブルクで書かれています。

そのうちのディヴェルティメント2作を見ておきましょう。



1つはK.270、変ロ長調の、管楽だけのディヴェルティメント(1月作、2オーボエ、2ホルン、2ファゴット)です。
こちらは、前年の管楽ディヴェルティメント群、とくにK.242、K.252と同じともいえる編成・構成で、いわばザルツブルクでの管楽ディヴェルティメントの卒業作品とでもいうべきものです。形式的には非常に整った印象を与えてくれ、「明るい」モーツァルトの典型例とでもいうべきものです。その分、演奏をする人には素直に楽しめるのではなかろうかと思います。・・・ですが、作品として取り立てて個性的な特徴はなく、<無難>を心がけて仕上げなければならない何らかの制約があった可能性はあります。
この作品の終楽章は、作品中では速いロンドですが、そのメロディは後年、<フィガロの結婚>の有名な美しい小二重唱(第21曲、スザンナと伯爵夫人のもの、第3幕第9場)で応用されることになります。(二重唱の方ではAllegrettoの6/8拍子になっています。)

第1楽章:Allegro molto,4/4(118小節)ソナタ形式、展開部52〜、再現部66〜、コーダなし
第2楽章:Andantino,2/4(46小節)ヘ長調。A-B-A-B'-A(coda)
第3楽章:Menuetto,moderato(22小節)&Trio(20小節、半音上行を取り入れた柔らかい味わい)
第4楽章:Presto,3/4(132小節)A-B-A-C-A-B-A-codaのロンド形式です。各主題は初出の時に反復記号がついています。



もうひとつはK.287の通称「第2ロドロンセレナーデ」(第1のときと同様、もとのドイツ語ではナハトムジークとなっています)で、これは第1の際に述べました通り、愛称とは異なって、明確に「ディヴェルティメント」と称することができる構成になっています。
この作品はアルフレート・アインシュタインも絶賛しているもので、ミヒャエル・ハイドン弦楽五重奏からの影響について言及しながらも(どう言う影響かは私には把握出来る材料がありません)、「唯一無二の傑作である」とまで言っています。
ただ、
「夏でなく冬の作品だから、当然入場と退場の行進曲はない」(訳書279頁)とも言っています。行進曲の有無と「セレナードかディヴェルティメントか」の呼称の関連性等も考量する必要があるのではないか、という疑問は、アインシュタインは持っていません(私は持っています)し、アインシュタインの著述当時は2月と考えられていたこの作品は、現在、アイゼンの説では6月とされています。全集版のスコアにも「6月」と記されています。第2次大戦後の自筆譜の研究により判明したことで、この作品がロドロン伯爵夫人の命名祝日である6月13日のために用意された蓋然性が高くなった、と全集版(NMA)の緒言に記されてます。

すなわち、以前疑問として呈示したものが解決しないうちに断言してはならないかもしれませんが、この作品に行進曲がないのは、「第2ロドロンセレナーデ」はセレナードではなく、全集の分類通り、ディヴェルティメントだからなのだ、と私は思います。

傑作である最大の理由は、弦楽部の扱いにあるか、と思われます。
2本のホルンにヴァイオリン2つ、ヴィオラ、バス(チェロ、とは書かれていません)という編成ですが、弦楽声部に注目すると、ヴィオラが独立して、あるいは他声部と明確な対照を示しながら動く場面の割合が、前年までの作品に比べ圧倒的に高くなっているのが分かります。・・・楽譜上で見ると、前年までのヴィオラは、2ndヴァイオリンにくっついてみたり、低音側にくっついてみたり、と、依存先を探して大忙し、でも汗をかいたそぶりは絶対に見せてはならない、という書法なのですが、K.287のヴィオラパートは、それにくらべて何と伸び伸びとした線を描いていることでしょう!・・・ごれは、楽譜を絵画的に見た場合、感動的でさえあります。
このヴィオラの独立は、確実に「ハイドンセット(1782〜85の、彼にとって最も重要な6曲の弦楽四重奏曲)」に道を開いています。

主調は、変ロ長調です。ディヴェルティメントに番号が付けられた旧称では第4番ということになっています。

第1楽章:Allegro(3/4), 334小節, ソナタ形式
第2楽章:Andante grazioso con Variationi  ヘ長調(属調ですので明るさが増します。16小節の主題を6つの変奏に仕立てています。第3変奏は、ホルンで始まる書法をとっています。また、最終変奏の第2ヴァイオリン以下の弦楽器はピチカートで、本来的な意味での「セレナータ」的な雰囲気を醸し出しています。最終変奏には6小節のコーダがつきます。)
第3楽章:MENUETTO(28) & Trio(36)
第4楽章:Adagio(4/4), 51小節、変ホ長調
第5楽章:MENUETTO(40) & Trio(24) 弦楽のみですが、非常に色彩豊かです。
第6楽章:序奏Andante(4/4、14小節)&主部Allegro molto(3/8)。全440小節。

いずれも収録されているのはこれしかありませんが・・・
ディヴェルティメント&管楽のためのセレナード全集 マリナー&ASMF(11CD)

探すとK.270は管楽アンサンブルのCD1枚ものに、K.287にも新旧様々なディスクが見つかると思います。
困ったときにはsegejOさんの検索サイトをご利用になってみてください。便利です!(バナーをクリックして下さい。)
L4WBanner20080616a.jpg

総譜は、NMAでは第17分冊に収録されています。

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コメント

連日、申し訳ございません、、、ほそぼそとやって居ります。
(細腕非繁盛記!)

投稿: sergejO | 2008年6月16日 (月) 00時19分

sergejOさんの「良心的な運営」が理解されれば、「非」の字はすぐに取れますよ!

まあ、私んとこじゃあ、マイナーで、あんまりお役に立ちませんが。。。m(_ _)m

投稿: ken | 2008年6月16日 (月) 10時29分

何故、アマデウスにとって一番うんざりしていたザルツブルグでのこの時期に、これほど洗練された機会音楽を作曲できるたのか、いつも不思議に思うと同時に驚嘆させられるのです。

投稿: ランスロット | 2008年6月18日 (水) 02時58分

やっぱり、「職人魂」でしょうね。第2ロドロンには特に、意地のようなものを感じます。

投稿: ken | 2008年6月18日 (水) 06時18分

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