« J.S.Bach:BWV1〜3 | トップページ | 6月1日練習記録(悲愴のみ) »

2008年5月31日 (土)

活用したい「自作自演」

ラ・プティット・バンド at つくば(6月1日)、是非お出掛けになってみて下さい!(リンクしてあります。)



クラシック音楽の聴き手には、
「この作品、もともとはどのように演奏されたんだろうか?」
という関心が、他のジャンルの音楽に比べて強くあるように思います。
それは、現在演奏される演目でも
・数百年前のものを当時の楽譜(もしくは翻訳譜)で演奏する
・アジアなどの伝統音楽と違い、それらは演奏法が口承で伝わっていない
という特殊事情があるためではないか、と、私などは漠然と思っています。

19世紀〜20世紀までの「(広義の)クラシック」は、たとえば6月1日(記事記載現在、明日)つくばノバホールで公演するラ・プティット・バンドなどのように、作品が出来た当時の史料(文献や事物)を元に当時を再現することに力を注いできました。20世紀初頭にはこうした試みは始まっているのですが、それが「おそらくオリジナルに近い」と思われる演奏をするプレイヤーたちのみに淘汰されたのは、やっと最近になってからのことです。
その中で、「ラ・プティット・バンド」は、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスやアカデミー・オブ・エンシェント・ミュージックなどとともに、長い時間をかけて音楽を見つめ直して来た、貴重な団体です。(今回のプログラムには含まれませんが、イタリアバロックの名作曲家ジェミニアーニの合奏協奏曲などは、その復権にラ・プティット・バンドが大きな役割を果たしたのではないか、と、私などは評価しています。)

バロック期の音楽は、当時の録音がないために残念ながら、とは言いつつ、上記のような良心的な団体が、しっかりした成果を上げることで、私たちは、だいぶ「実像」に近いと思われる音で聴くことが出来るようになりました。
今回は述べませんが、古典派からロマン派にかけては、事情が錯綜しており、素人目には学者の研究にも主観的な偏向があるため、たとえばオーケストラの規模・構成員の流動性などについて議論が整理され尽くされておらず、実演の記録という面ではホグウッドやアーノンクールといった、すでに古顔となった人が、むしろその経験を活かして注目に値するものを残している他には、これといって説得力のある(あるいは極端な反発を感じさせる・・・これもなければならないのですが)ものが出て来ない、ちょっと寂しい状況にある気がします。

もっと奇妙なのは、後期ロマン派から20世紀前半の音楽についての、あまりに「それぞれ勝手」な演奏の横行です。これは、20世紀後半の演奏が「あまりに肥大化したのではないか」との、当時としては「反省」からの反動に根差すのですが、もはやそうした経緯も忘れられて、「意味なく演奏している」ようにさえ聞こえます。(ついでながら、20世紀後半の「肥大化した」演奏は、実は後期ロマン派の伝統の延長線上にあったので、単純にそれを否定すること自体、いまとなっては「如何なものか」と思われなくもありません。いい演奏もたくさん残ったのですから。このこともあらためて考えてみたいと思います。)

後期ロマン派については、残念ながら音楽の録音までが残っていませんが、20世紀前半の「作曲者による自作自演」は、けっこう手にし易くなっています。
でも、そんな録音に興味を持つのは、どちらかというと「アマチュア」の方でして、最近の演奏家の録音を聴くと
「あれ?・・・これ、自作自演があるのになあ」
・・・それとあまりに違いすぎるんじゃないかなあ、と思うものも少なくありません。

たまたまリヒャルト・シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」については、その演奏流儀の変遷を私なりに追いかけてみたことはありますが、以後、そうした試み自体はせずに今日に至りました。
ですが、やはり同じような試みは、他の作曲家の作品についてもやってみなければならないのかなあ、と感じます。
演奏家として飯を食う人はどう考えているのか分かりませんが、「自分なりの新奇な解釈でも音楽が成り立つ」というグレン・グールドの先例に、しかしグールドとは違い、一定の哲学なしにしたがっているだけ、という「精神の浅さ」のみを印象づけられることも少なくありません。

ここで私が言っていることが是か否かは、現在手に入り易い「20世紀作曲家の自作自演」をお聴きになり、最近流行の演奏家の演奏内容との違いをお聴き取りになって、ぜひ確かめてみて頂きたいと思っております。
(自作自演ではないながら、後期ロマン派の演奏様式についても、1915年くらいまでの演奏にはそのまま引き継がれていると考えてよいのです。この当時まで、たとえばワーグナーの曲を演奏する場合でも、弦楽器は基本はノンヴィブラートだ、という事実が確認し得ますし、それは遡ってベートーヴェンの交響曲の演奏にまで敷衍出来るのですが、この事実は「恣意的」ではないかと疑いたくなるほど、演奏家には無視され続けており、現代オーケストラが「古楽研究の成果・奏法も取り入れて」と、ちゃんちゃらおかしな謳い文句で売り出していることがあり、これがまた嘘八百で、非常にガッカリしております。・・・他のパートがノンヴィブラートなのにファゴットだけずっとヴィブラーとかけっぱなし、という奇妙な演奏もありました。また、曲の全部でヴィブラートを用いない、というのも「古楽」の考え方としては正しくないことは、クヴァンツやレオポルト・モーツァルトの書き残した言葉からも明白ですのに、そのことを考慮している現代オーケストラは皆無です。「古楽アンサンブル」と呼ばれて来た人たちは、さすがにそんな愚は冒していません。「古楽」が死語であることを充分承知しているからでしょう。要するに、許されるかぎりでは、彼ら先達は「スタイル」に拘泥していないのです。)

以下、ラフマニノフ、ガーシュウィン、R.シュトラウス、ストラヴィンスキーの自作自演は比較的手に入り易いし、少し時期が下ると、ショスタコーヴィチやメシアンその他、およびブーレーズ、タン・ドゥンなどの現役活躍者あたりは入手し易くなるので省きますが、その他の作曲家について、私の手元のものから幾つかご紹介しておきます。
現時点では中古でもすぐには見つからないものをも含みますが、そういうものもまた店頭に並ぶ可能性はあります。自作自演盤は愛好家は少なくはないと見え、大きな店の店頭に並ぶと、比較的早くなくなります。店頭で見つけた場合は、なじみの無い作曲家のものでも、即、ご購入を決心なさるとよろしいでしょう。

・コンドンコレクション(自動ピアノに記録されたロールから演奏を再現したもの)
 残念ながら、全部集める機会を逃しました。お持ちの方はうらやましい!
 Vol.5=Prokoviev,Scriabin,Mahler,R.Strauss,Miraud,Reger
 ビクター エンタテイメント VICC-60183
 
・Claude Debussy The composer as Pianist(同上、1904、1913年のロール)
 Pierian 0001
 
・The Piano G&Ts Volime 3 : Chaminade, Saint-Saens
 Appian Publications & Recordings APR 5533(1901、1904、1919年録音)
 
・RAVEL conducts RAVEL
 URANIA SP 4209(※演奏の真正性は、一部については少々疑っています・・・)

・Alfredo Casella, Ottorino Respigi The composer as Pianist(録音、1925〜27)
 Pierian 0024
 
・HOLST, VAUGHAN WILLIAMS The composers Conduct
 NAXOS 8.111048

・BARTOK plays BARTOK
 PAVILION RECORDS GEM 0179

・・・これらの作曲家もこれしか録音が無い、というわけではないですし、他によく見かけるものにレハールやウォルトン、グラズノフ、ヒンデミットなどもあります。

私の手元のすべてではないのですが、代表的と思われるものをご紹介しました。
なお、タワーレコードやHMVでも「自作自演」で検索をかければ一定数は出て来ますが、必ずしも僧分類づけられていないものも多くありますので、情報には常にアンテナを張ってみて下さい。

タワーレコードでの「自作自演」検索結果

HMVでの「自作自演」検索結果



Maurice Ravel: The Composer as Pianist and ConductorMusicMaurice Ravel: The Composer as Pianist and Conductor


販売元:Pierian

発売日:2003/02/25
Amazon.co.jpで詳細を確認する

Claude Debussy: The Composer as PianistClaude Debussy: The Composer as Pianist


販売元:Pierian

発売日:2000/09/26
Amazon.co.jpで詳細を確認する

MusicRespighi & Casella: The Composer as Pianist


販売元:Pierian

発売日:2005/10/25
Amazon.co.jpで詳細を確認する

Holst / Bridge / Bliss / Harty / Smyth / Vaughan Williams : English Composers Conduct Their Own WorkMusicHolst / Bridge / Bliss / Harty / Smyth / Vaughan Williams : English Composers Conduct Their Own Work


アーティスト:Frank Bridge,Arthur Drummond Bliss,Ralph Vaughan Williams,Hamilton Harty,Ethel Smyth

販売元:Symposium

発売日:2000/12/19
Amazon.co.jpで詳細を確認する


|

« J.S.Bach:BWV1〜3 | トップページ | 6月1日練習記録(悲愴のみ) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/95716/21319421

この記事へのトラックバック一覧です: 活用したい「自作自演」:

« J.S.Bach:BWV1〜3 | トップページ | 6月1日練習記録(悲愴のみ) »