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2008年4月26日 (土)

楽譜の読み方1(五線譜の初歩)

「楽譜さんと話す」とか、歴史的経緯をたどっていると、かえって混乱してしまいますので、楽譜の中で、いま最も一般的な五線譜の読みかたについて、極めて手っ取り早く説明してしまうよう試みます。

(五線譜を読めるようにしておいて頂くと、これから実際必要になるかどうかまで見通してはいませんけれど、まずはバルトークがアタマに描いたことを読み取って頂くサンプルを、主観的な「音声」ではなく、楽譜から客観的につかんで頂けるかもしれませんので、念のため、でもあります。)

まずは、「ト音記号」と「ヘ音記号」がなぜあんなかたちをしているか、について。

図の1と2を見て下さい。

Gakuhusetsunei11

姿の変化が歴史的に正確かどうかは問わないで下さい。
ト音記号は、Gの字が修飾されたもの、ヘ音記号はFの字が修飾されたものです。
で、それぞれ、
・「G」の鍵になっているところ(曲線の底と曲がった直線)の間に書かれた音符が英語で「G」の名前をもつ音を示している・・・アルファベットの順番でGは7番目なので、日本語訳は「いろはにほへと」の「と」となる・・・ので、「G=と」の音を示すこの記号を「ト音記号」と呼ぶ。
・「F」の二つの横棒のあいだに書かれた音符が英語で「F(日本語訳では、イロハの6番目の<へ>)」を表すので「ヘ音記号」と呼ぶ。

で「G」は音名、その下に記した「ソ」は階名、最下段のひらがなは「日本音名(音名を日本語訳したもの)」です。(「階名」はグレゴリオ聖歌の「聖ヨハネ誕生の祝日の為の讃歌」に由来するもので、「音名」よりも後から出来上がったものですが、現在は、音の名前としては、これがいちばんなじまれています。)

それぞれの記号の名前の由来と、それが示す意味は以上の通りです。
ここでは、記号の意味の他に、
・西欧音楽では、日本では音に3つの名前、すなわち「音名」・「階名」・「日本語訳の音名」がある
ということを覚えて置いて下さい。



続いて、図の3と4を見て下さい。

Gakuhusetsunei12

ヘ音記号とト音記号を繋いで二行にした五線譜を「大譜表」と呼びますけれど、わざとそれで書いてみました。
ふつう、日本の高校までの、音楽を専門としない人が接する音楽には、2つの「調(旋法)」しかありません。
・長調(長旋法)
・短調(短旋法)
です。
(いま、わざと「調」という言葉と「旋法」という言葉を併記しましたが、とりあえずは気にしないで下さい。)
階名で読むと、
・長調=ドレミファソラシド
・短調=ラシドレミファソラ
です。
ト音記号やヘ音記号の右隣に何の記号(#やb)も付けられていない場合、それぞれ、
・長調は(調の)最初の音が「C(は)」になるので、「ハ長調」
・短調は(調の)最初の音が「A(い)」になるので、「イ短調」
と呼ばれることになります。

このとき、ド=Cなのが、感覚的には不自然なのですが、ラのほうがAとなっているのは古代ギリシア人が決めてしまったものであり、中世ヨーロッパの人たちは古代ギリシア人の音名をひきついだので、こういうことが起こったわけです。



今回の最後にいってみましょ!

図の5と6を見て下さい。

Gakuhusetsunei13

今度は、ト音記号の右脇に、なにやら記号がついています。
「#」がひとつついたものと「b」がひとつついたものの「長調(長旋法)」です。

これを、先ほどの、記号のない「階名」で読んで唱う方法を「固定ド」唱法と言いますが、これだと、同じ長調でも、記号がついていないときには「ドレミファソラシド」だったものが、

・#1個ついたら「ソラシドレミファソ」と読むことになり、かつ、「ファ」は記号のないときより音を高めて読まないと不自然、すなわち「長調」に聞こえなくなる。
・b1個ついたら「ファソラシドレミファ」と読むことになり、かつ、「シ」は記号のないときより音を低くして読まないと不自然、すなわち「長調」に聞こえなくなる。

ということが起こります。

で、記号がついたときの最初の音を長調では「ド」、短調では「ラ」という「階名」で読んで唱うようにする方法を「移動ド」唱法、と言います。
これだと、記号が幾つに増えても、調の始まりの音を長調なら「ド」、短調なら「ラ」で読めばいいので、「固定ド」唱法の階名唱より分かりやすくなります。
で、
・「#」が幾つついても、最後についた「#」の位置にある音が「シ」
・「b」が幾つついても、最後についた「b」の位置にある音が「ファ」
なのだと覚えてしまえば、読み替えが簡単です。
#、bのそれぞれが二つになったらどうなるかをいちばんしたに書いてみましたので、確かめて下さい!



以上を頭に叩き込んでしまえば、移動ドで唱うことはとても簡単になります。
ですから、ピアノなどの鍵盤楽器以外を演奏する場合には「移動ド」唱法の方が音楽のイメージを把握しやすく、便利です。(ピアノでも、曲の構造を理解してミスタッチを防ぐには、移動ドを頭の中で併用できるようにしておいた方がラクになります・・・って、ほとんど弾けない私が言うのも変な話ですが・・・)
とはいえ、「移動ド」唱法は曲の途中で調が変わった時に、少し入り組んだ曲ではよくあることですが、
・よっぽど慣れていないと絶対的な音の高さを見失う
・あるいは、調の最初の音が途中で変わったことに気づかないと、「固定ド」と同じ結果しかもたらさない
という側面もあります。また、<無調音楽>の楽譜を読む場合には階名唱法を採用できません。
ですので、五線譜の読み方を覚えたてのうちに訓練しないと、移動ド読みにはなかなかなじめないことになります。
覚えてしまい、<無調音楽>では使わない、ということさえルール化してしまえば、歴史的にも「移動ド」唱法の方が自然ですし、まちがいなく便利です。


以下は、少しだけ面倒な話なので、読み飛ばして頂いても結構です。

現在の日本では専門家も、専門家の卵を指導するにあたってさえも「固定ド」唱法を使用していますが、じつは、「旋法」という用語を併記したのには以下のような意味があります。

・「固定ド」唱法では「調の途中での変化」を気にしなくて済む

というメリットはあるものの、それが欠点にもなって、

・曲の途中で、たとえばト長調からニ長調に変わる箇所がどこか、を把握できない音楽家を育ててしまいもする

というデメリットも抱えています。

普通に「ハ長調」とか「ト長調」と呼ばれている「長調」は、本来は「長旋法」とでも呼ばれるべきもので、「長旋法」は「ドレミファソラシド」に決まっています。
実際、「長調(=長旋法)」の前に音名を付す習慣は、だいたい16世紀後半以降に合奏が発達すると共に始まったもので、これは楽器の種類が違う時に、それぞれの楽器を「絶対的な音」で揃えて演奏する必要に迫られた為に起こったことです。
それまでは、中世に楽譜が発明された当初は、集まった人がいちばん揃えやすい高さを、任意に自由に「最初の音」にすれば良かったので、絶対的な音の高さとしての「ABC・・・」だなんてことを気にせずに済みましたので、「C major(ハ長調)」だの「F major(ヘ長調)」だのと、絶対的な音高を指定する必要がありませんでした。
ただ、まだ「階名=ドレミファソラシド」は定着していた訳ではありませんでしたから、
・長調(長旋法)はCDEFGABC
(実際には中世には長調、短調ではなくて、ドリア調とかフリギア調とか、別の「調(旋法)」概念があったのですけれど)
を決めごとにしていましたので、その「相対的な」音の位置を「階名」ではなく「音名」で捉えていましたから、歌を揃える必要上、Cの位置、Fの位置を明示しておくことで、唱う人が楽譜を見た時に「旋法」を理解する助けとしたのが、今回触れなかったハ音記号とヘ音記号の起源となったのです。

こうした入り組んだ事情が、合奏で絶対的な音高がどうしても必要となってしまった際に、「固定ド」と「移動ド」というふた通りの読みの可能性、悪く言えば混乱のもと、を生み出す結果を(他の国ではどうなのか知りませんが)、五線譜が近代日本に輸入された際、同時にもたらしてしまったわけです。(これにはヨーロッパ人の旋法・調意識と日本の旋法・調意識の差異も影響していて、日本の場合は基本的に雅楽が音楽理論の原型をかたち作ったのですが、これが最初から純器楽合奏をふくむ音楽であったために、絶対音高を基本としていたのです。もしかしたら、「固定ド」だの「移動ド」だのということが問題になるのは日本固有のことなのではないかしら? そうなのかそうでないのか、ご存知のかたがいらしたら、どうぞ、教えて下さいね!)

ハ音記号、ト音記号、ヘ音記号が元来は絶対的な音高を示すためのものではなかった、という点は、理解をしておいて頂けましたら幸いです。

・・・つづきは、こちら

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コメント

勉強になりました。
ありがとうございました。

R&Rをやっていますが、転調、特に
半音上がるってのをよく聞くし、やります。

雅楽にも、うすら興味がありましたが、
日本人の文化を再認識させられた気が
して、うれしいです。

投稿: しいたけ | 2009年7月 2日 (木) 18時04分

しいたけさん

ご丁寧にありがとうございます。
お粗末様でございまして・・・(^^;

雅楽については、いまは分かり易い入門書などもありますので、
お読みになって見て下さったら嬉しく存じます。

取り急ぎ、御礼まで。

投稿: ken | 2009年7月 2日 (木) 20時18分

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