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2008年4月13日 (日)

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」(6)第4楽章

チィコフスキー<悲愴>第4楽章

大変間が空いてしまいましたが、終楽章について、です。

いつもの通り、汚い手書きのメモで恐縮です。
この楽章、有名なことではありますが、スコアを開くと、弦のパートが図の左のように書かれています。これが・・・これまた見づらくて恐縮ですが、耳に入る時には右のように聞こえる。チャイコフスキー初演時の弦楽器の配置が、ステージ側にヴァイオリンを置いたため、音響が右・左と捻れて聴衆の耳に入る効果を狙った、とされています。
カラヤンが晩年にウィーンフィルと収録した映像では、各パートに最初から左の図のように「旋律の塊」に訂正して弾かせているのですが、1954年来日時のカラヤンは、N響には記譜通り弾かせています。これは、セカンドがタイミングをハズしていてメロディが完成できなかったことで容易に分かります。
他の録音では、よく聴かないと、カラヤンの晩年のように修正しているのかどうか、なかなか分かりません。が、ムラヴィンスキー盤も岩城盤も譜面通り弾かせていることは、音色から確認出来ます。
譜面通りに弾いた方が、音響効果はともかく、チャイコフスキーの意図した、「悲嘆の捻れ」が明確になり、後半でこの第1主題が再現される時(そちらでは素直にメロディ通りに書かれています)に、もはや捻れではなく直裁なものに変化し、激情的になった嘆きが、いっそう効果的に感じられるようになります。
この冒頭部の、木管楽器の方に注目しますと、要素3(運命の動機)と要素1(嘆きの動機)がない交ぜになっていることが分かります。ポイントは、これがユニゾンで響くところにあります。弦楽器の方で<身悶え>を表現しているとすると、木管の方は、悶えの後で<天を仰ぐ>動作を反復している様を表現していることになります。・・・これは、悩みのうちにある人の身体的な動作に良く合致しています。
冒頭に続く部分は第1要素の前半(3度上昇、のうちの2度まで)を活用し(木管側は要素1後半の2度下降を用いています)、嘆きの底に沈みかけた自分に、再び強い感情が甦ってくるのを巧みに演出しています。
こうしたやりとりが、36小節まで続きます。

37小節目から第2主題に入りますが、こちらは第1要素後半の下降音型を延長し旋律化したもので、やはり「嘆き」の動機です。ただ、第2主題には、ここからあとも、常に要素3の「運命の動機」が伴います。これは初めは37小節目からホルンで示され、46小節目の3拍目からクラリネトとファゴットに受け継がれます。55小節目からは再びホルンに戻って行きますが、62小節目の3拍目からは、今度は木管全体に敷衍されます。第2主題の方はトランペットとトロンボーンの切迫感のある音色によって、感情の強度を上げて行きますが、ここで金管が初めから強く入りすぎると71小節目で頂点に達する感情の炸裂の効果が薄くなりますので、この部分の金管をどういう音色と強さで吹くかは、終楽章の演奏設計上、非常に重要な問題となります。

82小節から89小節にかけては、炸裂した感情を沈静化するための小結尾です。
90小節目から、再び第1主題が現れるのですが、これは最初から直裁に書かれていることは前述した通りです。ディナミークもffなので勘違いしやすいのですが、すでに「嘆き」の炸裂は80小節までで終わっています。ですから、このffは、すでに「嘆きの感情」ではなく、もっと客観的な「嘆くおのれの受容」という、現実的なものです。ですから、この部分は、再び感情の高揚に向かう104小節までのあいだは<理性的に>演奏されなければなりません。
107小節からの感情の高揚は、第1主題の再現の延長(音楽之友社スコア解説では其の括りで捉えられていますが)ではなく、第2主題の変形を元にしているので分かる通り、・・・妙な表現ですが・・・嘆くべき現実を受容した<決意表明>としての、「炸裂」ではなく<高揚>へと向かうのであって、71小節から80小節のときとは異なるものであることは、認識しておかなければなりません。

「私は、この<嘆き>を直視します」
という宣言が、126小節からなされ、実際に、神の前に頭を垂れることを表現するため、137小節でドラ(有名な<悲愴>の銅鑼ですね)を鳴らした後、全曲を通じて初めて、本来の伝統的なかたちでのラメント動機(半音階的下降音型)を用いた厳粛なコラールが、トロンボーンとチューバという、まさにコラールを奏でる上では正統と言える楽器を用いて響かせられるのです。
148小節以降はコーダで、弦楽器は第2主題を、木管楽器は第1主題の逆行形(細かい動きは省かれていますが)を、金管楽器はコラールの延長を響かせていますが、肝心なのはコントラバスが最後まで奏で続ける「運命の動機」でして、168小節からの最後の3小節はRitenutoの指示が仮に書き入れられていなくても、自然に敬虔に曲が閉じられるよう、音価を次第に長くする書法がとられています。

以上、この楽章を演奏上どう捉えるかを中心に述べてみました。



   ・前提
   ・全体像
   ・第1楽章
   ・第2楽章
   ・第3楽章
   ・第4楽章


ということで、杉山欣也さん著「『三島由紀夫』の誕生」を、よろしくお願いします!

チャイコフスキー:交響曲第4番、第5番、第6番「悲愴」Musicチャイコフスキー:交響曲第4番、第5番、第6番「悲愴」


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コメント

いきなりのコメント失礼致します。メッセージをどのように送ったらよいか分からず,こちらに書かせて頂きます。


初めまして。吉川吹奏楽団のトロンボーンを吹いている者です。
昨年,定期演奏会に聞きにきて頂き,尚且つブログにも書いて頂いて,団内でも話題になりました。感謝しております。
そんな,定期演奏会が今年も,4月20日(日)に昨年と同じ会場でやらせて頂きます。
もし,お時間がありましたらお越し下さい。

コメント覧に長々と失礼致しました。

投稿: フサコ@吉川吹奏楽団 | 2008年4月14日 (月) 09時13分

フサコ@吉川吹奏楽団さま、本日の記事でPRさせていただきました!

・・・今年は残念ながら、私たちは当日所用で伺えないのですが、ご盛況を心からお祈り申し上げております。

投稿: ken | 2008年4月14日 (月) 20時59分

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