« 曲解音楽史:32)マルコの帰路に沿って-3(インドシナ島嶼部〜インドネシア) | トップページ | 怒らないことによって怒りにうち勝て »

2008年4月 6日 (日)

4月6日練習記録(仮面舞踏会)

TMFの皆様、前半の、<悲愴>第1楽章練習に参加できず、申し訳ございませんでした。

後半は、ハチャトゥリアン『仮面舞踏会』組曲の第1、3、5曲を練習しましたので、其の練習で記憶している限りのことを綴ります。

が、その前に、ハチャトリアン(ハチャトゥリャン)という人の「風土的背景」について、簡単にご紹介しておきます。(簡単な伝記はWikipediaに記事がありますので、リンクしておきますから、そちらをご覧下さい。また、『仮面舞踏会』組曲は全音版スコアが2,000円+税で入手できますので、曲については是非、スコアをご参照下さい。)

ハチャトゥリアンは「ソ連」の作曲家でした。そのことが、そのまま「ロシアの作曲家」ということにはなりませんので、そのことだけでもご存知置き頂きたい、という主旨です。

私自身、彼はアルメニア人だと誤解していたのですが、スコアの解説を見て、そうではなく、グルジアの生まれだ、ということを知りました。
なぜアルメニアの作曲家と誤解していたか、と言いますと、彼の音楽にはロシア的な要素は無く、民族音楽上、アルメニアのものに非常に近い系統だと感じてきたからです。(残念ながら、いま、お聴かせできるサンプルが手元にありません。)

グルジアは、リンク先のWikipediaの地図をご覧頂ければ分かります通り、東南はアゼルバイジャン、南はアルメニア、西は黒海トルコ、北は(戦争で有名になってしまった)チェチェン他数国、などの「カフカス地方諸国」に接しています。
このあたりは歴史的には、西アジア圏に含まれます。アルメニアは容易に手に出来る書籍ではイブン・ハルドゥーンの『歴史序説』(岩波文庫)にも登場します。
西アジアの北端にあたるため、このカフカス諸国は、宗教上はイスラム勢力とギリシャ正教系キリスト教(ギリシャ正教はコンスタンチノープルの陥落後、ローマの権威の後継者を自称したロシアの諸王が保護した東ローマ系のキリスト教を本体としますが、同時期までにローマで異端とされたアリウス派やネストリウス派といった少数派の信教も包括しています。カフカス諸国のキリスト教は、ギリシャ正教の正統ではなく、そうした「異端少数派」の流れを汲んでいます)の接点であり続け、交易の中継点でもあったようです。
これも誤解していたことになりますが、私はイスラム教国家だと思い込んでいたのですけれど、アルメニアもグルジアも、共に「キリスト教」国家です。但し、文化的には、上のような経緯もあって、中世では先進的だったイスラム圏の影響が色濃く残っています。
そのため、ハチャトゥリアンの音楽素材は、カフカスに由来するのだ、という点は、是非ご承知置き下さい。・・・いずれ、この地方の土着音楽をご紹介できるようにします。

ハチャトゥリアンは、そうした地域に育ちながら、教育はモスクワで受けており、ショスタコーヴィチやカバレフスキーとほぼ同世代でもありますから、作風に同時代性と同地域性が見られることは否めません。ただ、それはショスタコーヴィチに比べれば「(西欧音楽風に)穏健」で、カバレフスキーに比べれば「民族色が濃い」、ということに注意しておかなければなりません。

こういう次第で、『仮面舞踏会』組曲は(1)ワルツ、(2)ノクターン、(3)マズルカ、(4)ロマンス、(5)ガロップ、と、標題はすべて西欧音楽に倣ったものになっていますが、練習してお感じになっていらっしゃる通り(と信じております)、どこかにシルクロード的な雰囲気を漂わせています。・・・このことは、是非感じ続けて頂きたいと存じます。

さて、前置きが長くなりましたが、練習記録。

第1曲(ワルツ)
・4小節が1単位、という旋律構造で貫かれていることに留意
・4小節目に来る区切りは、(とくに次に休符が控えている場合は注意が必要だが)「弾ききる・吹ききる」のではなく、「抜いて」終わって次へと移行するように。(上手い合唱が次のフレーズを歌い始める前に、息苦しげではなく、ゆったりと音を伸ばして徐々に声を消して行き、聴き手に気取られないようにブレスをする・・・それと同様のブレスをする必要がある、ということです。)
・4番からは、管楽器と弦楽器が1小節交代で主要動機を演奏する(ただし、オーボエは弦楽器と一緒です)ので、受け渡しのコミュニケーションをきちんと意識すること。
・14番からは、雰囲気が一転して優雅になるので、変化に注意。(「メリー・ウィドウ」のワルツなど、ウィーン系のオペレッタのワルツを連想しても良い)
・14番の木管、7、8小節目ではあとのほうが音が高くなるので大変だが・・・8小節に向かって、むしろ音は小さくして行かなければならないので、留意すること。15番も同様。(14番ではオーボエ1番、15番ではクラリネット1番は、この点、ちょっとオ得ですね・・・)
・16番以降は冒頭部と同じに戻る。

第3曲(マズルカ)〜個人的感想では、チャイコフスキー的である気がします。
・マズルカであることを意識して。誰の作品でもいい、マズルカを連想し、そのリズムになるように。
(・・・すなわち、補足すれば、ワルツやポロネーズではない、ということです。マズルカはポロネーズ同様、ポーランド起源とされているので、ちょっとその違いを見いだすのは難しいのですが、ポロネーズに比べると激し目の踊りで、1ステップめを強く踏みます。ハチャトゥリアンの場合は、文字通りの「マズルカ」というよりは、アルメニア系の土俗的な踊りを連想した方が宜しいかと思います。)
・5番からは木管主役。1stViolinは合いの手なので、前半の木管を軽く受け止め、次の始まりへと、やはり軽やかに受け渡す。

第5曲(ガロップ)
・ディナミーク注意。ともすれば全体がフォルテだと思いがちだが、たとえば1番の最初の2小節は木管はメゾフォルテ、ホルンと弦低音部ははメゾピアノ、打楽器とヴィオラ以上の弦楽器はピアノである。

・・・この程度の記憶で済みません。お役に立つことを祈っております。

道化師~ロシア管弦楽名演集Music道化師~ロシア管弦楽名演集


アーティスト:コンドラシン(キリル)

販売元:BMG JAPAN

発売日:2007/11/07
Amazon.co.jpで詳細を確認する

スコア ハチャトゥリアン 組曲「仮面舞踏会」 (Zen‐on score)Bookスコア ハチャトゥリアン 組曲「仮面舞踏会」 (Zen‐on score)


著者:ハチャトゥリャン

販売元:全音楽譜出版社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


|

« 曲解音楽史:32)マルコの帰路に沿って-3(インドシナ島嶼部〜インドネシア) | トップページ | 怒らないことによって怒りにうち勝て »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/95716/12370422

この記事へのトラックバック一覧です: 4月6日練習記録(仮面舞踏会):

« 曲解音楽史:32)マルコの帰路に沿って-3(インドシナ島嶼部〜インドネシア) | トップページ | 怒らないことによって怒りにうち勝て »