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2008年4月11日 (金)

音楽と話す:楽譜って、どんな姿?(2)

前回、楽譜さんが見せてくれた「姿」は、文字と記号ばっかりで、そこから引き出される<音楽>はいったいどういうものなのか、見ただけでは皆目見当のつかないものでした。

で、辟易した私が、おそるおそる楽譜さんに質問するところから始めます。

「あのー・・・」
「なにか?」
「やっぱり、字とか記号ばっかりだと、よく分かりません」
「なにが?」
「ここにかかれた曲って、どんなメロディなのか」
「約束事を覚えれば簡単でしょ?」
「いや、その約束事を覚えるのが、タイヘンでしょう!」
「どのへんがタイヘンなんですの?」
「音の高さに、いっぱい名前がついてるじゃないですか」
「長さにも名前がついている場合がありますわね」
「それを全部覚えなくっちゃ、結局読めないんでしょ」
「あら、別に、自分で読もうなんて思わなくてもよろしくなくって? 読めるかたに読んでもらって、歌ってもらって、それを覚えればよろしいんじゃないの?」
「・・・いや、まず、そういう知り合いがいないし・・・」
「まあ、お友達作りがヘタですのね」
「(余計なお世話だ)・・・いや、仮にいたとしてもですね、歌ってもらったのを覚えるなんて、そんな記憶力の自信もないですし」
「でしたら、こんなのはいかが?」

楽譜さんが出して見せてくれたもの。

・神楽譜(増本喜久子「雅楽----伝統音楽への新しいアプローチ」所載。音楽之友社1968)
Hukagurauta


・初期ネウマ譜(水嶋良雄「グレゴリオ聖歌」所載。音楽之友社1966)
Huneuma


「な、なんですか、これ?」
「線で、メロディを表したのよ。これなら、なんとなくカンで、テキトーに歌えちゃうんじゃないです?」
「・・・」

かえって、分かんねー!!


・・・なるほど、歌詞に対応する「相対的な」音の高さ、或いは抑揚を表している点で、これらは文字譜よりも「音楽のイメージ」を目に捉えやすくしている・・・ような気がします。 ですが、現実に歌ってみようとすると、文字譜に比べ、具体的にどんな音の高さから歌い始めたらいいのか、どんな節回しを使ったらいいのかが分からないので、実用性という面では、「一歩後退した」ものであるのかもしれません。 ただし、「後退」とは「独習」を前提とした場合に、のことであって、これらの線的な「楽譜」は、実際には独習向けではありません。

最初に例示した雅楽の神楽歌の譜は現在でも用いられているものですが、習得するに際しては、この譜を前にして、師匠から口伝で唱法を含めてフシ(メロディ)を教わります。なお、線の切れ目や上下に、補助のために音の高さやブレスの位置が記されています。

初期ネウマは、ここに例示したものは現在はもう実用に供されていないはずですが、使われていた当時は、やはり修道士たちが唱和する際の「補助」として用いられたのでしょうね。一人で歌う場で使われたのではないのでしょうから、具体的に「こういう音の高さだよ」という目印は付さずにすんだのではないかと推測しております。ただし、それではさすがに、歌ってもらう領域を拡大しようと試みる際には不便だったと見え、例示したものとそう隔たらない時期になると、真ん中や上下に線を引き、その線の位置がヨーロッパ音名でいう「C」である場合には「C」、「F」である場合には「F」という文字を左端に付けて、音程の明確化をはかるようになります。
ネウマ譜を何とか手軽に読みたい、と思う場合には、たとえば白水社「図解音楽事典」の186頁にネウマの記号の対比表が載っていますし、E.カルディーヌ「現代聖歌学に基づくグレゴリオ聖歌の歌唱法」(水嶋・高橋訳、音楽之友社2002)に、音高記譜法採用後のネウマ譜と対比した説明(12〜20頁)や譜例(48頁)があって参考になりますが、上記例のネウマを用いての例示ではありません。元々何通りもあったネウマのすべてを尽くしての説明書は素人の手に出来るところには見当たらないようです。

なにはともあれ、前回の文字譜といい、今回の線的な譜といい、楽譜は本来、どう記すべきか、についての考え方が一種類しかない、と考えてしまうのは誤りであることを、存分に思い知られてくれます。



という次第で、本論、今日はおしまい。


杉山氏の「『三島由紀夫』の誕生」、是非宜しくお願い申し上げます。(AMAZONにリンクを貼ってあります!)〜あくまで私の勝手な宣伝で、杉山氏から私が見返りを頂戴できるわけではありません!・・・それだけ、この本に「惚れ込んだ」というだけでございます、ハイ。



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