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2008年3月11日 (火)

キンピラの味

私は朝が苦手です。
ですから、早寝をしたいのですが、子供達が高校前、中学前になって・・・夜更かしもひどくなってきました。きゃつらが寝る目処が立たないと、こっちもあっさり「寝る」とは宣言できないので、
「おい、もう十一時だぞ、もうテレビ見るのやめなさい!」
そういうと、
「だって、これからのドラマが面白いんだもん」
と、姉の方。
普段は喧嘩ばかりしているくせに、弟の方も、このときだけは姉と口裏を合わせて、
「面白いんだもん」
「何分間やるの?」
「うん?1時間!」
「・・・仕方ねえなあ。終わったらすぐ寝られるように、歯磨きしておきな!」
「へいへい」
で、1時間経過。
まーだ、ダラダラ起きています。歯磨きは勿論、済んでいません。
「いいかげんにしろよなあ」
で通じる日も週に2日はありますが、後はダメ。あきらめて、
「とにかく、明日も普通に学校なんだから、もう、すぐ風呂に入って、寝なさい!」
「・・・」
「寝なさい」
「・・・」
「寝ろよ!」
「分かったォ」
・・・で、ようやく、なんとかこっちは布団に入れます。

こんな調子であるくせに、姉貴の方は、母を亡くしてから、すすんで早起きしてくれます。
もとがひどい夜更かしなので、起きそこなう日もあるにはありますが、大抵、6時半には起きて、朝食の配膳を始めてくれるのだから、本音では感心するとともに、感謝もしています。
私と息子は、娘が7時ちょうどに
「朝だよー!」
と大声出してくれることで、ようやく飛び起きるのですから。



この娘が、夕べから準備して、ニンジンだけのキンピラを作りました。
たいしたもんではない、といえばたいしたもんではないのですが、家内の得意料理で、他で食ったどんなキンピラよりも美味くて、新婚のときに
「これはいい!好きになったなあ!」
と言ったら、一週間、ニンジンキンピラばっかり、なんてことがありました。
それでもたしか、子供達が生まれてからは、そんなに何度も作ってはいなかったはずです。

娘は、初挑戦でした。

家内は白ゴマを振りかけていたのですが、娘にそこまでの気は回っていませんでした。

でも、食べてみて、驚きました。

家内の作った味と同じでした。

「お母さんの味だよ!」
私が思わず叫んだら、娘がうつむきました。照れ隠し、というのとは、どうも正反対の様子なので、敢て顔は覗き込みませんでした。
で、娘が登校する時に、背中から声をかけてやりました。
「今朝のキンピラ、ありがとう。」
娘の背中は、どんなふうに、私の言葉を聞いたでしょうかね。



0000000000193801音楽家で食べ物といえば、ロッシーニでしょう。
美食家で有名だった彼は、まだ30代半ばの人気絶頂のときに、突然オペラ創作をやめてしまったので、
「あいつはもうたんまりもうかったから、これからは美食に生きるんだろう」
と陰口を叩かれ、こんにちでも<美食に専念するための引退だった>説は生き残っています。

真実はおそらく違って、新進の優れたオペラ作家の出現、劇場経営との折り合い、財産の保全、など複雑な要因が絡んでいたものと思われます。が、文献を集めて読んでみましたけれど、霧の中です。

ちなみに、オペラ劇場の経営や観客の動態について垣間見ることの出来る書籍があり(『オペラハウスは狂気の館』春秋社・・・ちょっと高い本です!)、劇場の数年間の採算状況などのデータも記載されていて、経営をなさる方にとっても面白い読み物になっています。ただし、データが断片的なので、経営の全貌までは掴めません。それでも、本文中の思いがけない箇所にロッシーニの名前が(作曲者としてではなく、マネージャー的な役割を演じている人物として)登場しますので、ご興味があったらお読みになってみて下さい。

ロッシーニその人に話を戻しますと、オペラ界引退の真相はともかく、それですっかり作曲をやめたわけではありません。数こそ少ないものの、美しい宗教曲、歌曲、そしてピアノ曲などをモノにしています。
残念ながら、これらの作品群の録音は、『スタバート・マーテル』が比較的多く、次いで『小荘厳ミサ曲』(これは決して小さな作品ではないのですが)を除くと、あまりCD化されていません。歌曲は、せっかく美しい旋律を持ちながら、オリジナルよりもむしろ、ブリテンの編曲したもの(「マチネ・ミュジカル」および「ソワレ・ミュジカル」)で有名になっています。他の作曲家による管弦楽化も、幾つかなされています。ロッシーニの歌曲集そのものの順番に忠実なのはリストの手になるピアノ独奏用の編曲ですが、こちらも聴くチャンスはあまりありません。

面白いのは、しかし、そうした美しい純歌曲の類いよりも、ピアノ作品です。

サリエーリの真実の姿を伝えるのに尽力した水谷彰良さんは『ロッシーニと料理』という本も書いていて、これがロッシーニ当時のパリの食文化を知る上でも非常に面白いのですけれど、そこで紹介されている、ロッシーニ作の次のようなピアノ曲群(12曲)があります(水谷著書70頁以下参照)。いずれも晩年のパリ時代に作曲され、まとめられた『老いの過ち』という曲集におさめられているそうです。

・四つのデザート
     1)干し無花果
     2)アーモンド
     3)干し葡萄
     4)はしばみの実
・四つの前菜
     1)ラディッシュ
     2)アンチョビ
     3)小きゅうり
     4)バター
・やれやれ、小さなえんどう豆よ
・ソテ(ソテー)
・ロマンティックな挽き肉
・小さなドイツ・ビスケット

・・・「いったい、どんなひき肉がロマンティックだって言うんだ!」
なんて、怒らないで下さいね。

ロッシーニは、自分が世間でどんなふうに皮肉られているのかをよく承知していて、こんな作品群も残してみたのでしょうね。
自分をちゃかすことの出来た彼は、たとえ金持ちで生涯を終えることができなかったとしても、恐らくはそれに耐えることが出来た・・・いや、金があろうがなかろうが本来関係のなかった、案外タフな御仁だったのではないでしょうか?

それぞれの音楽のお味は、ピアノをお弾きになれる方は楽をご自身でお弾きになってみて、弾けない方は・・・幸いにして、これらについてはCDも出ていますので・・・オーディオの前でお耳で味わってみて下さい。
あえて、わざと、音楽そのものはここに掲載せずにおきます。

ですが、選ばれたメニューからして、私にとっては、今朝娘が作ってくれたニンジンキンピラにかなうものは、これらの中にはない、と信じております!

(実際には、なかなか素敵な曲集で、タイトルと音楽のギャップから味合わされるものはサティを超えているとさえ感じているのですけれど。)

CD(例):'L'Album pour les enfants adolescents" Paolo Giacometti
CHANNEL CLASSICS CCS 12398

オペラハウスは狂気の館―19世紀オペラの社会史Bookオペラハウスは狂気の館―19世紀オペラの社会史


著者:ミヒャエル ヴァルター

販売元:春秋社
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