« モーツァルト:「技量」を読み取る確かな目(K.255,K.256,K.261) | トップページ | 時間は止まる »

2008年3月 4日 (火)

音楽と話す(番外):そうは言っても何から聴けば?(CD。注意:最後はクラシック限定!)

音楽さん(なんだか、思っていたより品の悪いやつでしたね)と、取り留めもないお話をしてきました。
とりあえずは、「聴く」ということについて、対話をしてみました。

まず「聴く」
「想う」心
「さりげなく」聴く

の3回(それ以前にも3回ほどお話しましたが、一旦忘れましょう)、このテーマでお話してみたところが、

「音楽の<種類>だのなんだの、という選別をしないで、<強く心に残ったもの>を、大切に・・・最後の響きが消えるまで、静かに耳を傾ければよい」

というのが、音楽さんの意にかなった「聴かれ方」なのかなあ、という結論に達したのでした。



そうは言っても・・・と、今日は「音楽さん」にはご登場頂かず、私だけが勝手にしゃべりまくります。

「今まで心に強く残ったもの、というのではなく、新鮮な出会いをしたいんだよ」
と仰る向きも多いかと存じます。あるいは
「まだよくわかんないけど、とにかく聴いてみたいんだ」
ってこともあるかもしれません。

かつ、ちまたにはまず、CD店舗には、どこから手をつけたらいいのか分からないくらい無数のCDが並んでいますし、
「これじゃあ分からないや、適当なガイドはないか」
と本屋を漁ってみると、これまた「CD紹介本」が、また無数に「この本に書いてあることこそ本物!」みたいな謳い文句で並んでいます。
中にはCDを紹介せずに曲だけ紹介しているようなものもありますし、そうした類いのものを初めて手にしたときは
「こっちのほうがよっぽどましかな」
とも感じたのですが、よくよく考えると不親切ですし、書き手に「音楽に対するその人の本当の思い」を隠しているのではないか、という・・・悪く言えば<逃げ>の姿勢も感じるようになり、あまりお勧めしたい気にならなくなりました。



「入門CD」と称するものもあまた出ていまして、そういう類いのものから入るのも、以後の興味を広げていく、という点では、良い方法の一つなのではないかな、というのが、実感です。
私自身、少年時代にクラシックを聴く幅を広げていったきっかけは、当時では750円という破格値で、小遣いをちょっと貯めれば自分で買えた、グラモフォンの宣伝用のサンプル盤でした。この頃はまた、CBSソニーなども、そうしたサンプル盤を出していました。

また、数年前になって「民族音楽」に興味を持ち出したときも、何から手を出したらいいのか分からなかったので、Victorの「ワールド・ミュージック・ベスト」というCDを手にしました。

ジャズは・・・難しいですね。わりと古めの系統なら、ジャズ好きの人に勧めてもらって、極端に言えば「ガーシュウィン」だの「デューク・エリントン」だの「ビリー・ホリデイ」だのと、最初から決め打ちして聴くのはラクですけれど、案外、そこから先に進むのが難しい。マイルス・デイビス(名前くらいならご存知でしょうけれど)って言われた途端、これだってもうジャズ・クラシックに入ってしまうのでしょうけれど、もうそこでストップ、というのが、私の経験です。
かつ、「ジャズ」と一口に呼ばれているものは、本来は一口では言い切れないほど、意外にもたくさんの種類の音楽を含んでいて(厳しい人は、ラグタイムを「ジャズ」とは言わないでしょうし、ビッグバンドとトリオなどのセッションもまた全然違う代物です。ボーカルが入ったものは「ジャズ」を冠していても、とくにモダンジャズの愛好家からは、「ジャズ」そのものだとは思われていないのではないでしょうか?)、これについては、すみませんが、私はお手上げです。これは、最後に申し上げる「伝統」ということと関係がある、と思っております。

ポップ系(といわれるもの)だけは、やっぱり十代の頃の思い出の強いものにしか手が出ませんで・・・これは身近でいろいろな好みの人が豊富にいますから、「新鮮な」を狙うのでしたら、好きそうな人に教えてもらったり借りたりするのが早道ではないかな、と思います。ただ、最近の動向としては、ドラマの主題歌やCMソングで流行するものはお店のわかりやすいところに並びますので、手が出しやすい。手を出してしまう、ということは、もうその時点で、歌をも歌手をも気に入っている場合が多いので、そこから先は同じ歌手のアルバムを徹底して聴いたり、その「アーチスト」が影響を受けた、と称する歌手やバンドへと手を広げていったりすることは、そんなに難しくなさそうです。(娘の様子を見ていての感触ですけれど。ただし、娘は飽きっぽいので、こないだまでエグザイル、エグザイルと騒いでいたのに、もう次を物色しているようです。かと思うと「ビートルズが聴きたい」とか言い出すので、もう、オジサン、ついていけません!)・・・この系統についてだけは、ですから、何を入り口にしたらいいのか、ということをあまり考える必要はない気がします。



演奏家についての知識もなく、曲についても何にも知らず、というときに、他のジャンルのことは分かりませんが、クラシックなら、
1)お勧めしたくない方法
2)お勧めしてもいいかな、と思う方法
の二つがあります。


1)お勧めしたくない方法

「クラシックCD案内」の類いの本を読んで選ぶことは、やめたほうがいいでしょう。(ご著者や出版社の営業妨害をしたいわけではないんですけど。)

瞥見した限りでは、この手の本は、必ずといっていいほど著者の価値観を押し売りしているようなものです。中には、一つの曲についていくつも候補が並べてあって、一見公平な評価をしているのではないか、という印象を与えられもするのですが、世の中、本当に「公平」な目などというものは存在しません(と、ここに綴っている私自身が、こんなこと綴ってること自体、既に公平ではないでしょう? ややこしいけど。)

どうしても「何か(もしくは誰か)のガイドがないと手を出す勇気がない」というのでしたら、クラシック好きなお友達がいれば、その人に
「いちばんお勧めを<1枚だけ>貸して!」
と頼むのが、最も無難でしょう。
・・・で、借りて気に入らなくても、
「ありがとう、あれ、とてもよかった。でも、他も聴いてみたいな。だけど、いっぺんにたくさん、はまだ無理だから、また<1枚だけ>」
って、ちびりちびり借りるのが、お金もかからず、友情も固まり、たいへん結構なのではないかと。。。

・・・ポイントは、1回に1枚以上は借りない、というところですから、ご留意下さい。

お友達がいない場合は、本に手を出さざるを得ないということになりますねぇ・・・
仕方ないか。

「書物占い」って、ご存知ですか?
その方式でCDを選ぶ。
「私に合う曲、合う曲・・・」と、心に念じて、「えい、気持ちが決まった!」っていうところで本を開く。
そこに載っているCDを買って聴く。
・・・気に入りませんでしたか? でも、占いの神様のご選択、もとい、ご託宣ですからね。気に入るまで、我慢して繰返し聴くしかないですね。

初めてクラシックをお聴きになるのでしたら、くれぐれも、本の「深読み」はなさらないことを、重ねてお勧めいたします。


2)お勧めしてもいいかな、と思う方法

<1枚もの>の「クラシック名曲集」から聴いてみるのが、いちばん手軽です。

最近は、3枚組1,000円などという、超お徳用盤もありますけれど、はじめてクラシックを聴く人が3枚まとめて聴いたとして、はたして何曲印象に残るでしょう?
「せっかく、もっと枚数が多いのがあるのに!」
と思っても、1枚1,000円、から始めるのが良いと思います。

事前に「どんな演奏家がいいか?」とか「どこの会社のがいいか?」とかいう情報は、極力仕入れないで、まっさらで聴いてみる。

そのなかに、
「あ、この曲は!」
と、ピンと来るものが、ひとつだけでもあればいいのです。
それだけでも、投資額1,000円だったら、損した気分にはならないで済むと思います(保証の限りではありませんが)。

で、ピンと来た作品の何が気に入ったかによって、その曲は誰が作ったか、どんな名前の人・団体が演奏しているか、あたりに注目して、その作曲者もしくは演奏者のCDを個別に探すことからスタートすると、ちょっとワクワクするんじゃないでしょうか?

作曲者の伝記とか、演奏者の評判とかは、後から知ればいい。
・・・そういう意味では、この入り方では作曲者はどうしても有名な人に限られるでしょうからいいとして、演奏者については、本当なら「いままで、この人、知らなかったなあ」、または「ちょっとは聞いた事がある名前だなあ」くらいとの方が、望ましいような気がします。有名な人だと、今までその人の演奏の録音なんか聴いた事がなくっても、なんとなく世間での評判を頭の片隅で覚えているものでして、それが演奏を聴く場合の先入観になります。
まあ、でも、結果的に「いい音楽だなあ」と思えるものがあって、それがたまたま知っている有名演奏家のものだったとしたら、それはそれで構わないことでして、こだわるほどのことではないかも知れません。
・・・これで、ポップ系と、やっと同じ土俵に立ちましたかね。



「クラシック」で、気をつけなければいけないのは、呼び名から伺われるとおり、本来こう呼ばれている音楽は「伝統音楽の一種」だということです。

日本では、特に最近は、映画音楽としてとか、ドラマ・CMに用いられるのが元で急に有名になる「クラシック」が多いのですけれど、そうしたことから「クラシック」に入っていくと、ともすれば「クラシックってムード音楽なんじゃないの?」という勘違いを起こしがちです。
また・・・うちは家族で大好きでしたので「のだめカンタービレ」を一生懸命見ましたけれど・・・そして、このドラマには個人的には亡妻の思い出も強く重なるのですけれど・・・、いかに舞台を「音楽大学」にしたものであっても、ドラマで演じられる際に用いられる「クラシック」は、やはりドラマの「ムード作り」のために選曲されているのでして、「クラシックそのもの」の聴かせ方ではありません。「金八先生」や「ごくせん」の教師像が、現実の教師像ではないのと(例えは悪いですが)、同じことです。
で、ドラマの中のキャラクター(音楽も、です)は、ドラマの中のキャラクターとして楽しみ、場合によっては自分の生き方の理想にすることは、別段構わないとは思います。

とはいいながら、くどいですが、ドラマ等の中のキャラクターとしての「クラシック」は、「クラシック」そのものではありません。
で、もっとくどくなりますが、「クラシック」と普通呼ばれている音楽は、実のところはその直訳の「古典」では決してありませんで、大体18世紀後半から今世紀の「クラシック系を自認する」作曲家の作品に限っての呼び名と考えれば、ほぼ間違いないでしょう。(とくに、18世紀から20世紀前半にかけては、ヨーロッパというローカルな世界での伝統音楽の一種だと見なしてもいいかも知れません。・・・あ、これは、ややこしかったら忘れて下さい。)
長話ついでに、「クラシック」と銘打ったお店の棚では、さらに「古代からルネサンス」とか、「バロック」とか、「古典派・ロマン派」とか「現代」なんていう区分けがなされていますけれど、これはお店の都合上の話で、<「バロック」以前もクラシック>だというふうには思わないで頂いた方が、後々よろしいのではないかとも思います。(これにはあんまり神経質になる必要はないでしょうけれど。ただし、本来、「中世〜バロック〜クラシック」は日本の伝統音楽の流れになぞらえれば、「雅楽歌謡〜能楽〜歌舞伎」くらいの様式的な差がありますので、一緒くたにするのは誤解の元ではあります。)

で、「クラシック系」を自認しているはずの作曲家が「クラシックって、古くからの同じ曲を違う人がまた演奏する、っていう、ヘンテコな世界でしょう?」などと見当違いなことを発言なさっていて苦笑してしまったことがあります。

「クラシック」は、伝統音楽の一種ですから、いろんな人に繰り返し演奏されることが前提で、「同じ曲」の録音が別の演奏家によっていくつもなされているのはそのためだ、というわけです・・・これ以上へ理屈をこねると長くなりますから、いまはこれくらいで抑えておきます。
「はあ、そんなもんですかいな・・・」
と、とりあえずはご了解頂きたいと存じます。
敢て付け足すなら、ジャズやポップ、欧米以外の伝統音楽は演奏者と切り離しては考えられないものが圧倒的に多いのですが、クラシックは作曲者と切り離せないのが通常、という特徴があります。



ああん、なんで私が綴ると、こんなにわけ分かんない、小難しい文になるんだろう!

「能力ないからだろ!」
・・・はい、仰る通りで。

以下、いくつか、<1枚もの>のクラシックCDを挙げておきます。
ただし、実のところ、私自身は聴いていませんので、ご自身の選択眼でお選び頂くしかありません。その点はお許し下さい。

ウィリアム・テル序曲~管弦楽名曲集-1Musicウィリアム・テル序曲~管弦楽名曲集-1


アーティスト:オムニバス(クラシック)

販売元:コロムビアミュージックエンタテインメント

発売日:2003/07/23
Amazon.co.jpで詳細を確認する

フィンランディア~管弦楽名曲集-2Musicフィンランディア~管弦楽名曲集-2


アーティスト:オムニバス(クラシック)

販売元:コロムビアミュージックエンタテインメント

発売日:2003/07/23
Amazon.co.jpで詳細を確認する

モルダウ~管弦楽名曲集Musicモルダウ~管弦楽名曲集


アーティスト:オムニバス(クラシック)

販売元:ユニバーサル ミュージック クラシック

発売日:2003/06/25
Amazon.co.jpで詳細を確認する

Musicおもちゃの交響曲〜母と子のクラシック名曲集


アーティスト:プロ・アルテ管弦楽団

販売元:BMGビクター

発売日:1995/03/24
Amazon.co.jpで詳細を確認する

・・・うーむ、オーケストラ曲に絞ってみたら、昔と違って「ロシア」だとか「フランス」だとかに分かれていて、思ったほど見つかりません・・・
(ピアノほか、独奏・独唱曲や室内楽は、できれば演奏の技術的な「質」にある程度興味を持ってから入った方が良いかと思いますので敢て挙げませんでした。)



こうしたオムニバス盤で気に入ったものがあったら、お勧めはsergejOさんの運営するこちらのサイトです。

http://look4wieck.com/

偏らない情報を豊富に収集しているのには、脱帽でございます。

すみません、ダラダラした長文になってしまいました。

|

« モーツァルト:「技量」を読み取る確かな目(K.255,K.256,K.261) | トップページ | 時間は止まる »

コメント

今晩は!

自分が聴き始めた経緯を思わず書きたくなったのですが、、、

1.「題名の無い音楽会」や「N響アワー」は幼少時からなんとなくついていました。でも、親はレコードを買って聴くほど好きではないし、私も曲名や作曲家名を調べることはありませんでした。

2.8歳くらいから数年間ピアノを習いましたが、これもバイエルが主だったので、作曲家というとバッハのメヌエットで、「なんていい曲だ」という記憶のみです。

3.いつのまにか読書少年で小学校の高学年の頃、べートーヴェンの英雄の逸話を聴いて、どんな曲か聴きたいと思いました。お金がないので困っていたら、図書館にグラモフォンの100選その他があったので借りたら、大層面白かった・・・そこで次々聴いたら、モーツァルトのピアノ協奏曲もいいし、チャイコフスキーもいいし、ブルックナーもバルトークもいけてる!結構、知っているメロディが多く、また、知っているメロディだけでなく全曲通して聴かないといけないなぁ、そして、ニックネームのない曲もかなり面白い・・・と気づきました。

4.そこで吉田秀和氏の書籍登場で、『名盤300選』に沿って、べートーヴェンを基点に、時代をさかのぼるか、下るか、順々に聴いていった。

・・・という感じです。一応、管弦楽、室内楽、ソロの器楽、歌曲とまんべんなく曲名が出ているので、ほんとに一人一人潰していった数年間。

吉田秀和さんの本は曲名・演奏家名を知るに当たって、多大にお世話になったのですが、やはり、名前は限定的だし、内容も今にすれば「そうかな・・・」と思うこともあって、中々難しいですね。。。

お金があると、なんでも聴けるのですが、お金がないと「やっぱり一番いいものが欲しい」と思ってしまって、世評がどうしても気になる・・・

・・・という不安を多少和らげられるように、Look4Wieck.comもhttp://sergejo.seesaa.net/も綴っているのですが、書きながらなかなか難しいと頭を悩ませてます。

せめて、「一番いいと思うものも、いくつもあるし」「今現在名高い演奏家以外にいい人もいるし」ということだけ伝わればいいのかな・・・と思うのですが、そもそも書き始めると、「そういう自分が善し悪しなんて判るのか・・・」という疑念もでたりしてほんとうに難しいものです!

投稿: sergejo | 2008年3月 9日 (日) 23時06分

sergejoさん、ありがとうございます。
ここに頂いたコメントは、これから何か聴いてみようかな、というかたにも、今までこう聴いて来たけれど、ちょっと変えてみようかな、というかたにも、ひとつのいい参考になると思います。
で、sergejoさんのサイトを拝読していると、そんなsergejoさんの思いがそのまま伝わってくるようで、読んでいると嬉しいんですよ!

てなわけで無断リンクしてしまっておりました。

・・・ゴメンナサイね! 許して下さいます?

投稿: ken | 2008年3月 9日 (日) 23時35分

いえいえ許すも何も、リンクは無断でも何度でも(←ずうずうしい)嬉しい限りです!!

そもそも、このようなブログを書いていらっしゃる方にリンクいただいているというのが驚きでありまして・・・真面目な話、、、

多少とも意味のあるサイト&ブログにできるよう、多少背伸びしつつ勧めて参る所存であります。

投稿: sergejo | 2008年3月10日 (月) 05時46分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/95716/10946744

この記事へのトラックバック一覧です: 音楽と話す(番外):そうは言っても何から聴けば?(CD。注意:最後はクラシック限定!):

« モーツァルト:「技量」を読み取る確かな目(K.255,K.256,K.261) | トップページ | 時間は止まる »