自然な「手」〜ベレゾフスキー
あそこでは、あるものはすべて秩序と美、
豪奢、落ち着き、そしてよろこび。
----ボードレール「旅へのさそい」から。安藤元雄訳----
さて、先般もご紹介しましたが、
ボリス・ベレゾフスキー:ピアノリサイタル(つくばノバホール)
3月9日(日)午後3時開演 (午後2時30分開場)
料金格安ですので、是非お越しになってみて下さいね!
「私、手が小さいんで、ピアノ上手になるの諦めたんです」
というコと話をしたことがあります。
「手が小さくても弾ける曲はいっぱいあるんじゃないの?」
ピアノはからきし、な私は無責任にそう言いましたが
「でも、小指が短いから、やっぱり、ダメ」
・・・そういうもんなのかな、と思いました。
私も男としては手が小さい方です。で、・・・本当は(本質的には)手の大きさと関係はないのですが、小指でヴァイオリンの弦をしっかりとらえることは、苦手でした。今でも得意とは言えませんけれど。
(江藤俊哉さんはしっかりした手の持ち主でしたが、旋律を豊かに歌う箇所では、わざと小指は避けて使わないようにしていました。証言もありますし、彼の校訂した楽譜に付いたフィンガリングも、意図的に小指を避けている部分がたくさんあります。ただし、江藤さんの場合は基本は出来ていたので、仮に本番で「あ、小指使っちゃった!」てなことがあっても、充分歌うことは出来ました。)
話は戻りますが、その、手の小さいコ曰く、
「オクターヴを取るのがやっとで、手がこう(と、やってみせてくれて)突っ張っちゃうんです」
・・・あ、それがいけないんだな、と、私は、自分のヴァイオリンを弾く手を併せて思い出しました。
「手が小さくたってね、自然なかたちになっていれば、チャンとした音が出るはずだよ・・・たぶん。。。」
指や手の甲を不自然に突っ張ると、必然的に筋肉が硬直しますから、滑らかな音楽が奏でられなくなります(これは管・弦・鍵盤を問わないはずです)。
歩いているとき、私たちの手は、掌が真っ平らになるくらいピンと伸びている、などということは絶対にありません。指先と手首を両端の点と考えると、そこからの延長線の交点を中心として30度程度の円弧になっているはずです。・・・奏者が楽器に向かう時にも、この円弧が保たれていれば、間違いなくその奏者は、「いい音・自然な歌」を奏でられる。
先日のウェスペルウェイ氏がチェロを奏でている映像でもいいですし、sergejoさんが掲載した、こちらのハイフェッツの映像でも良い、二人とも、手がこの自然な円弧を保っている様子が良く映されていますから、再度ご覧になって頂ければ幸いです。
さて、ベレゾフスキー氏がピアニストとして如何にすぐれているかは、全く同じ
「手の描く自然な円弧」
が常に保たれている、ということからも伺われます。
これは、キンキンさんの頁でリンクしている、驚くべき演奏(ショパンのプレリュードを、最初はオリジナルで、後半はベレゾフスキー氏自身【付記:というのは誤りでして、キンキンさんから、そうではなく、ゴドフスキーの編曲だとのコメントを頂きました。ありがとうございました。】が編曲した「左手だけのヴァージョン」で演奏している)でも充分観察出来ます。これも、リンク先をご覧になって下さい。
また、彼が、ソリストでありながら、素晴らしい伴奏者であることも、初めて「つくばでのコンサート」のことをご紹介した際に申し上げ、記事の最後にサンプルの音も付けておいたものでした。
彼の超人的な技巧はYouTubeでいくらでもご覧になれますが、
「すばらしい歌い手でもある」
ベレゾフスキー氏を知って頂くにはこちらが適切か、と思い、私の方はそちらにリンクを貼りました。
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
・第1楽章
・第2楽章
・第3楽章
・・・過剰な「叙情」に走らないところは、ラフマニノフ自身の演奏を彷彿とさせます。
(ラフマニノフ自作自演盤と聴き比べてみて下さい。)
・・・歌を堪能するには、「ソロ」のほうが断然いいので・・・それは是非、ステージで。
なお、彼の他の日程に付いては、やはりsergejoさんのこちらの記事をご参照下さい。
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コメント
記事取り上げて頂き、ありがとうございます。最近は「熱狂の日」で来日したりと知名度も上がってきたベレゾフスキーですが、ここ田舎・つくばではどうしても宣伝も浸透せず、当日ふらっといらっしゃっても充分に席はあります。驚愕の技巧と控えめな「歌」、ぜひ味わって頂きたい演奏家です。なお私のブログにあるショパンのエチュードの左手版はゴドフスキー編曲のものだと思います。ベレゾフスキーが両者を弾き比べたCD出してます。
投稿: キンキン@ダイコク堂 | 2008年2月19日 (火) 09時17分
キンキンさん、ありがとうございました。
記事にその旨付記しました。
たくさんの方に、あのノバホールの音響をも、演奏と併せて味わって欲しいですね!
投稿: ken | 2008年2月19日 (火) 20時38分