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2008年2月11日 (月)

音楽と話す:まず「聴く」

「音楽さん、あなたが、好き!」
「!」
「あなたのことが、もっと知りたい!」
「・・・」

私がコミックのヒロインで瞳をキラキラさせて呼びかけるのならまだしも、ヒゲ面のおっさんでは、ひいちゃいますわね。
せめて、さわやかな好青年なら、ドラマ<1ポンドの福音>のシスターみたいに振り向いてくれるかも知れませんが、いまや私は、いかがわしい中年です。

なので、邪念を断って、音楽さんにお尋ねしましょう。

「あなたを、もっと好きになるには、どうしたらいいのでしょう」
「そうさなあ、とりあえず、二つの門があるんじゃが」
「二つ、ですか?」
「<自分で歌ってみること>と、<とにかく聴くこと>の、どっちかですじゃ」
「ははあん・・・」
「どっちが入りやすそうじゃイ?」
「そりゃ、歌うほうでしょう? 風呂場で歌ってると、響いて気持ちがいい、って、みんな言ってますから」
「じゃが、いつも風呂場で歌えるとは限らん、違うかの?」
「・・・そりゃ、そうだ」
「自分で歌ってみる、というのは、そこが難しい」
「難しいんですか・・・」
「風呂場じゃないとこで歌ったら、気にくわなかった。じゃあ、別の場所で、って、そうそう簡単には選べん」
「事務所で歌ったら怒られちゃうしな。それより前に、風呂場じゃないとこで歌ったら・・・私、自分の歌が下手に聞こえてしょうがない。カラオケなら高得点なんですけどねえ」
「・・・うーん、謙虚でよろしい、と申してよいのやらよくないのやら」
「まあ、自分が下手に聞こえる耳を持っている分、謙虚ということで」
「じゃったら、その耳を信用する、ということで」

「はい・・・となると」
「そう、まず、聴いてみるほうから入るのが宜しい、ということじゃな」
「どんなものから聴けば宜しいので?」
「何でもいいんじゃ」
「何でも、ですか? 上手いとか下手とか、これはよせ、とか、ないんですか?」
「ない。」
「ありゃまあ。」
「ただ、条件がふたつだけありましてな」
「というのは?」

「何でもいい、とは言っても、最初からあれもこれも、と思わないのが第1

「最初からいっぱい聴いたほうがいいんじゃないですか?」
「今の世の中では、そういうことも可能ですからのう。でもですじゃ、本当の<好き>を目指すなら、ヤミクモはよしたほうがいい。あの女の子もいいが、こっちの熟女もいい、では、あんた、恋愛だって成り立たんじゃろうが」
「成り立つ人もいますけど」
「・・・あんた、ご自分を分かってらっしゃるかの?」
「・・・あ。」
「一つの曲、ということでなくてもいい。一人の歌手や演奏家、ということでなくてもいい。じゃが、<ああ、これが私の心を捉えるんだ、というものに限って、とことん聴いて、それを愛してみることじゃ」
「でも、そんなんじゃ、逆効果で、あとで<もっといい音楽>に出会っても気がつけない、なんてことになりかねなかったりするんじゃないですか?」
「お、お前さんでもなかなか鋭いことがいえるんじゃな」
「馬鹿にしないで下さい!」
「いや、馬鹿じゃと思っとったんで、すまんのう。それじゃあお尋ねしますがの、<もっといい>には、どうやって気がつくんじゃろう?」
「・・・」
「気がつけるためには、まず、自分の中に、ちゃんとしたモノサシが持ててなくちゃならん。そのためにどうするか、が、もう一つの条件というわけじゃ」
「ほう・・・」
最初に<じっくり>聴く、味わう音楽は、<好き>になれるためのものを、しっかり選ばなくちゃならん、ということ」
「・・・さっきは、<何でもいい>って仰ったじゃないですか?」
「それは、種類の話じゃ。たとえばあんたはたしか、ほとんどクラシックとかいうやつしか知らんらしいが、それがジャズでもロックでも演歌でも、民謡じゃろうがポップじゃろうが、そんな表ヅラにこだわる必要はない、ってこと。もっと狭く言えばじゃ、ジャズはセロニアス・モンクに限る、オーケストラはウィーフィルじゃなきゃダメだ、演歌は美空ひばり以外受け付けられん・・・そんなたぐいの思い込みが、今もし、もうあんたの心の中にあるのなら、全部いったん忘れなされ」
「・・・いや、とりあえず、<何もないマッサラから音楽を好きになりたい>のですから、そんなこだわりはないです。」
「音楽とは、まだ出会いもしていない、という前提で、よろしいんじゃな?」
「はい」
「よろしい。」

音楽さんは、もったいぶって、咳払いをしました。

「簡単じゃ!」
「はあ?」
「まっさらなあんたが、さりげなく耳に入ってきて・・・それまで別のことを考えたり思ったりしていたのに、<あれ?>と、急に心がひっぱられる音楽。」
「はあ・・・」
「それが、まずあんたの選ぶべき、最初の音楽じゃ」
「・・・簡単じゃ、ないですよ!」
「うーむ、そうかのう・・・?」



音楽さんが仰りたいのは、たぶん、「最初の出会いを大切に!」ということなのかもしれません。
ですが、最初の出会いなんか、このご時勢、まず「恋人が欲しい」人にだって難しい。ちまたには、そんな欲求不満があふれているんじゃないでしょうか? 音楽さんの仰ることは、無茶なんじゃないかなあ・・・

・・・いえいえ。

いわゆる、童心に返る、ということに、音楽さんの言い分を「読み換え」ればいいのかもしれません。

音楽になぜ心を惹かれはじめたか、ということは、沢山のかたが、テレビやラジオでも語っていれば本にも書いていらっしゃる。もし音楽好きのお友達がいれば、その人が薀蓄を語りだすのに多少うんざりしながらでも、いいタイミングで、「じゃあ、そもそも何でそんなに音楽が好きになったんですか?」って質問すれば、おそらくは、とっても素朴な答えが返ってくるんじゃないかと思います。そして、その内容は、「自分が歌った、弾いたが出発点だった」というのは、案外、稀なケースなはずです。

「夕暮れに、学校の帰りの放送で、こんな粋な歌を流してくれた先公がいてさあ・・・」
だとか、
「歯医者さんの有線で流れてて、この音楽が鳴っているのにふうわりさせられていたら、気に入っちゃったのよ」
あるいは
「いまどき、飲み屋に流しなんかで来やがってさ、歌ってんの聴いたら、涙が出ちゃったんだよ」
かつ、今の日本では出会いにくいことですが、それでも「ジュピター」の例であったように
「崩れた街をみんなで片付けたり立て直しているとき、いつもこの音楽が、みんなを包んでいてくれたんだよ」
・・・などなど。



以下、お粗末なサンプルで(音楽は、お粗末じゃないですよ!)、かつ著作権を少しは慮って(微妙だけど)、新しいものは選んでいませんが、つづり手としての私が、「音楽さん」の仰った趣旨に近い「出会い」をした歌や器楽を、例として掲載しておきます。どんな出会いだったか「一言ポイント」をワンセンテンス程度くっつけておきますね。・・・参考にはならないのですけれど。

(飲んだくれている頃に、飲み屋さんで)

(7月12日付記:ブログ不具合で「オネスティ」は音声を一旦削除しました)
(コマーシャルで使われてて気に入った。ずいぶん前ね!)

(息子とDVDで見て、なぜだかほろりとして)

(中一の時、きれいな女の子に憧れてる頃に学校で聴かされた)

こんなもんでございます。
ビゼーのメヌエット(「アルルの女」第2組曲って言うのに入っています)だけは、家族旅行のビデオをDVDにする時に、ちょっとだけシンセサイザーの勉強をして、私がアレンジしたものですので、出来の悪さが音楽を損ねていたらごめんなさい。・・・どうしても「思い」が籠っているものなので、載っけちゃいました。

・・・このブログで、クラシックじゃないのをの載っけるのは、珍事でしたかね。


音楽さんのお話の主旨。

音楽を本当に「聴いて好きになる」には

1)あらかじめ選り好みしない。(曲のジャンル、種類、演奏者など)
2)最初に「心を強く捉えた音楽」を、まずは、じっくり大切にする

・・・とはいえ、大変恐縮ですが、綴り手の視野が狭くてクラシックしかよく分かっていない(本当は、クラシックもよく分かってないんですけど)ので、次回からはどうしてもクラシック中心で対話をすることになると思います。ですから、クラシック以外がお好きな方で、もしこの対話にご一緒に耳を傾けて頂けるのでしたら、「クラシック以外だったらどうかな?」という点は類推して頂くことになります。
あらかじめお詫び申し上げます。

毎度、すみません。

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コメント

■かっこいい音楽CDプレゼント♪

はじめまして!
私の友人が、かっこいい音楽CDのプレゼントキャンペーンをやっています。

ページに行けば、音楽の視聴もできるので、
ぜひ1度聴いてみてくださいね♪

投稿: ticco | 2008年2月11日 (月) 19時35分

これでお友達の音楽に「出会って、好きになってくれる」人がいたら、いいですね!
ボクんとこはクラシック系のマイナーブログですけど。
他でも頑張ってらっしゃるんでしょうから。

お友達の応援、すてきなことです。良い結果に恵まれますように!

あ・・・お名前のところをクリックすれば頁が見れるんですよね。
このコメント読んで下さった方、宜しくお願いします!

投稿: ken | 2008年2月11日 (月) 22時55分

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