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2008年1月17日 (木)

音楽と話す:あなたは何を伝えてくれるのですか

音楽と話す:(これまで話してみたこと)
いりぐちのおはなし
なぜ、あなたは私の心を動かすのですか?
どうやったら、あなたに近寄れますか?



私 :「近寄れるにせよ近寄れないにせよ」
・・・と、前回の音楽さんがあまりに素っ気なかったので、私はちょっとムッとして、音楽さんに突っかかるように問いを続けました。
私 :「あなたは、<音楽>として、ここにいらっしゃる」
音楽:「まあ、そういうことにしときましょうかい」
私 :「で、あなたは、何を伝えてくれようとして、ここにいらっしゃるんですかね?」
音楽:「別に、なにも。」
私 :「・・・!」
さすがに、音楽さんは気がとがめたようです。ちょっとばかり作り笑いをしました。
音楽:「つっけんどんは、こんくらいにしときまさあ。まあ、機嫌直しておくんなさいな」
私 :「はあ。」
音楽:「たとえば、あんたがため息をつきなさる」
私 :「ろくでもない人生を送ってますからね」
音楽:「あんたの人生がろくでもないかどうか、は、別にどうでもよろしい」
私 :「む!」
音楽:「まあ、そういちいち、むくれなさんな」
私 :「ガマンしましょう!・・・ハア。」
音楽:「そうやってため息をつくとき、ふた通りのイントネーションがあるのに、お気付きかな?」
私 :「・・・いえ。」
音楽:「ハア、ってため息の、<ハ>の方から<ア>に、声(息)の高さが上がっていくのがひとつ」
私 :「すると、その反対が、もうひとつ、ってことですかね」
音楽:「そう。<ハ>から<ア>に、声(息)が下がっていく
私 :「それぞれで、ため息をつくときの気分がちがいますね」
音楽:「そういう、声のイントネーションを、そのまんま、誰でも同じに歌ったり、楽器で奏でられるように、かたちをまとめて決まり事にしたのが、そもそもあっし、っていうもんなんでさあ」
私 :「分かったような、分かんないような、ですけど・・・」
音楽:「分かってくれりゃあ、あっしに近寄れる。分かんなければ、はい、サヨナラ」
私 :「あ、待って下さいよぉ!」
音楽:「なにも、いまここでさよならするわけじゃねえ。たとえ話、ってもんだがな」
私 :「そうですよ、もっとお話しなくちゃならないんだから」
音楽:「そんじゃあ、お尋ねしますがな」
私 :「はあ」
音楽:「こんだけの話で、あっしの<伝えたこと>が、どこまで分かって貰えましたかのう?」
私 :「あなたは、私たち人間の感情を<決まり事>に結晶させて、誰もに・・・いや、それで言い過ぎなら、出来るだけ沢山の人に、その結晶の意味を簡単に分かってもらえる用意をしている」
音楽:「まあ、じつは、ことはそんなに単純ではないんですがナ」
私 :「はあ・・・」
音楽:「なにも、あっしは、あんたたち人間さんが日頃ふつうに出す感情のイントネーションを、そのまんま決まり事にしてるだけ、じゃねえンで・・・」
私 :「どういうことですかね」
音楽:「そこを今、あんまり突っ込むと、話が込み入っちまうんでさあ」
私 :「込み入っちゃっちゃ、私にはまだ、分からなくなっちゃうばっかりですね」
音楽:「だから、今んとこは、<ため息>の例だけ、覚えてくれとったらいいですわい」
私 :「具体的には?」
音楽:「二つ、おきかせしときますわ」

(またもクラシックの例で、恐縮ですが)

<ハ>より<ア>が上がる例
 *モーツァルト:交響曲第40番第1楽章から、
 (ワルター/ウィーンフィル)
 
<ハ>より<ア>が下がる例
 *
 (ムラヴィンスキー/レニングラードフィル)
 
音楽:「どうですかい?」
私 :「うーん、最初のは、切羽詰まってる感じ、あとのは、救いがないほどガックリ来てる」
音楽:「前の方のため息は、<切ないけれど、頑張っていかなくちゃ>、ってため息だわな」
私 :「あとのほうは、<切なくて、そのまんま気分が沈む>って具合ですかね」
音楽:「まあ、まずはそこまで分かってもらえりゃ、あんたとあっしは、ちょっとは近寄れましたわ」
私 :「それは、有り難い!」
音楽:「サービスで、最初の方の例だけ、ちょっと前のところから続けて聴いてみておくんなせえ」

 
 *モーツァルト:
 (ワルター/ウィーンフィル)
 ・・・呈示部だの第1主題だの、という言葉は、まだ気にしなくて結構です。


 
今回は会話に終始しましたが、お聴き頂いて、「音楽」の言わんとしていることを、少しは感じ取って頂けたでしょうか?

この次に控えているのは、本当は、音楽が表現のために用意している膨大な「決まり事」の数々なのですが、そこに立ち入るとキリがありません。ですので、極めて大まかに、音楽が「決まり事」を表現するためにどのような手段を用意しているか、をインタビューするのが早道かと考えています。
・・・ともあれ、ここで、ひと区切り。



今日の会話の要約。

私 :「音楽さんは、私たちの自然な感情から来る声(註:実際に出るにせよ、心の中に仕舞われたままであるにせよ)を<決まり事>に結晶させて、出来るだけ沢山の人が、あなたを理解できるように準備を整えているわけですね」
音楽:「本当はそこまで単純じゃあねえんだけんど、まあ、今んとこは、そうだとおもっておくんなせえ」

・・・少し、難しくなってしまいましたか?
・・・そうでなければ嬉しいです。

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