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2008年1月13日 (日)

DVD「紳竜の研究」(1)漫才も音楽も同じなんです

9月以降、「笑い」の話題は実質的に中断し、先日から催されているチャップリン映画祭について触れたのみでした。
・・・頭の中では、どう考えていったらいいか、はずっと進行中だったのですけれど、求める材料が手中に出来ませんでした。

「間奏:笑いと暴力」なる駄文を綴って以降、念頭にあったのは、1980年前後の漫才ブームで活躍した人たちでした。上記駄文でとりあげたのは北野武監督の映画ですが、彼も漫才ブームの中で「ツービート」のボケとして、「暴力的なネタ」をポンポン展開する一方、その内容が知的なことで、多くのファンを獲得したのでした。・・・ですが、現状、「ツービート」についてはDVDで映像を入手することが出来ません。

併行して思い浮かべていたのが、「紳助竜介」でした。
暴走族ルック(つなぎ)で(紳助の顔立ちが、いかにもゾクでした)現れ、一見「暴力」ネタを始めるかと見せて、実は「暴力的」なのは見せかけだけ、いざ蓋を開けてみると「情けない」話が展開される、というところが非常に新鮮でした。
・・・今、この路線を継承しているのは、<にしおかすみこ>だけかなあ、と思います。しかも、彼女は漫才ではなく、一人芸としてそれをやっていますから、ご自身には「紳助竜介の系譜上にいる」という意識はないだろうと私は思っております。

竜介さんの方は、私の家内と同じ49歳で、私の家内と同じ2006年に、私の家内より8ヶ月早い4月に亡くなりました。
「50歳になったら1回だけ<紳助竜介>を再結成して漫才やろう」
と約束していたそうで、その時を期して「つなぎ(彼らのユニフォームでした)」も新調していたそうで、返す返す残念です。

この二人の往年の漫才を見ることの出来るDVDが、ようやく出たのを知りました。
昨年の5月には出ていたようですが、情報をつかんでいませんでした。先日、やっと入手しました。
・・・もっと早く見たかったなあ、でも、見られて良かったなあ、と、感慨深く思っています。



伊勢の「三曲万歳」は三味線を弾き、鼓を打ちながらのものでしたが、寄席に入って以降の漫才は、楽器を用いずに「ボケとツッコミ」の二人で演じるのが定型になっていきます。もちろん、楽器を用いたものも昭和中盤(私の子供時代)まで生き残っていましたが、「玉川カルテット」を除けば、早くにコミックバンドへと変化し、消えていったように記憶しています。

「語り」だけの二人漫才でも、しかし、音楽的なリズムが大切だったことは・・・漫才ブーム以前のものでは目だちませんが・・・このDVD「紳竜の研究」から、強く印象づけられます。(これは洋の東西を問わないようで、チャップリンが自作映画で音楽まで作曲せずにいられなかったのは、「笑い」にリズムの要素が欠かせないことを彼が強迫観念になるほどまでに思い知っていたからではないかと思います。「黄金狂時代」の中のパンの踊りは、彼自身が音楽まで考えていなかったら、面白みが、半減とはいわなくても、最小で2割は減じていたのではないでしょうか?)

DVD「紳竜の研究」は2枚組ですが、1枚目は紳竜の活動期のドキュメントと紳助が吉本興業で行なった(きわめて真面目な)「笑いを引き出すとはどんなことか」についての講演、2枚目は紳竜の漫才(島田洋七氏が副音声で解説)という構成になっています。

それぞれに、注目すべき点があります。今回は、まずは1枚目の注目点の中からひとつだけ採り上げておきます。

ドキュメントの出来については少し不満もありますが、インタヴューを受けているいろいろな漫才師の方が述べていること、そのあとに収録された講演の中で紳助氏が述べていることに、次のような共通点があります。

「漫才はリスムが命。音楽と同じなんです」

異口同音に、そう言っている。

オール巨人氏の言葉(そのとおりではないですが)。
「紳助は、歌わせたら音痴なんですわ。でも、喋りでは完全にリズム(註:テンポ、と言い換えてもいいのでしょうね)を掴んでいる。私は弟子を取る時には、そいつに<おまえ、歌はうまいか?>って、必ず聞きます。<いや、ダメです>と答えて来たら、<カラオケかよって練習せい!>って言いますわ。でも、紳助君は、歌は下手でも、もう身に付いているから、<歌、ヘタなんや>っていう彼には<お前はええんや>って言ったんです」

紳助氏自身が、謙遜気味に、自分の音痴を認めながら、講演の中で、「音楽も(漫才も)同じや。リズムが大切なんや」ということを、繰り返し、言葉を変えて語っています。

相方の故・竜介氏が、そんな紳助のリズムに必死で食らいつき、成長していく様は、2枚目を洋七さんの解説を聞きながら見ていると、大変良く感じ取れます。

「心で記憶せなあかん」

講演の中での紳助氏の決まり文句は、これです。
心で記憶していないと、リズム感、テンポ感は絶対に身に付かない。

では、掴んだリズムを如何に「笑い」に繋げていくのか・・・このことについては、また別途、紳助氏の言葉に耳を傾けてみましょう

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