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2007年12月28日 (金)

音楽と話す:なぜ、あなたは私の心を動かすのですか?

年明け1月5日にTMFの演奏会を致します(無料)。上野や浅草から近いので、お気軽にお越し下さい。
くわしくはこちらをご覧下さい。



モーツァルト音楽史藤原定家、の続きは、昨日記しました理由により、年明けと致します。ご容赦下さい(カテゴリで開いて下さった方のために、念のため)。

・・・「私の<心>を」と言ってしまうと、音楽さんに対して、はじめて突っ込むには難しすぎ、失礼過ぎですかね。
あなたによって私が「生理的に、反射的に、体が振わされる」、と言った方が「問い」としては答えてもらいやすいでしょうか。
いや・・・あんまり問いをこねくり回さないで、そういう反射的なものをも「心の動き」、さらに「動き」であることを省略して、「心」と呼んでしまいましょう。


「なぜ、あなたは私の【心】を動かすのですか?」

音楽さん、あなたの答えは?

「そりゃあんた、私たちゃお互い、<動くもの>だからじゃありませんか?」

いやあ、あっさりしたものですねえ。
でも、本当にそれだけのこと、なのかもしれません。



聴覚障害の方が音楽に無縁、ということがないのは、もうだいぶ前になりますが、経験させて頂きました。
ひとつは聴覚障害の方のためのコンサートを訪ねてみて、もうひとつは音楽とは全く関係のない場面で、
「音は<聴覚>で聞き取られる」
なんて決めつけては行けないことを思い知りました。

ダメなセールスマンだった私のお客様に、耳の全く聞こえない方がいらっしゃいました。で、
「自宅まで商談に来てくれ」
と(メモで)仰るので、お邪魔しました。
ご家族には耳の聞こえる方もいるのだろうな、と決めつけて、深く考えないでお訪ねしたら、なんだか部屋の中から、大きな音が聞こえてくるのです。よく聞くと、音の中身なプロレス中継なのです。
「なんで、こんなに大ボリュームで!?」
・・・中に招き入れられて、初めて分かりました。このお宅には、「耳の聞こえる」人は、一人もいないのでした。奥さんも、二人のお子さんも、耳が聞こえない。
でも、大音量にすることで、音は聞こえるのです。考えてみれば当たり前で、「音」と呼んでしまうと特別なもののようで、それは鼓膜にしか伝わらないように思い込みがちですが、「音=振動」です。体というものは、耳だけが「振動」を感じるわけではありません。体全体に「振動を察する」能力が欠けてさえいなければ、「音を聴く」ことは出来るのです。・・・これは、目から鱗でした。
しかも、プロレス中継にこのご家族が一体となって興奮している様子は、私にとってはビックリでした。客席の歓声が盛り上がると、ぴったり同時に、家族みんなが目付きを変える。明らかに、その目は色まで変わる・・・私なども怒ると瞳の色が薄くなるのですけれど(家内に指摘されました。祖父もそうだったので、遺伝でしょう)、感情が変化すると目の中の色素が動くんでしょうね・・・、テレビに釘付けされた顔の表情が、真剣そのものになる。
音の振動の起伏、振幅の大きさに、心の振幅の大きさもぴったりと合っているさまが、これ以上はっきり分かる例に出会ったことは、それまでありませんでした。商談そっちのけで、私も一緒に興奮していました。・・・いったい、何しに行ったんだろう???

聴覚障害の方のためのコンサート、というのも、多分今でも地道に活動が続けられているのでしょうけれど、私も一度、客席で体験させて頂いたことがあります。
振動を大きく伝えるために、会場には大きいスピ−カーがロックのコンサートの倍くらい(?)用意されて、それがフルに近い音量でなるようにしてありました。
もう一つの工夫がありまして、なるほど、と思わされました。
客席の一人一人が、お腹に一抱えほどある大きな風船を持たされるのです。振動は、これで、より身近に、一人一人に伝わるわけです。ステージの明るい歌に併せて、楽しそうに体を揺すっていた隣の席のお嬢ちゃんは、あの日、ピンクの服で目一杯おしゃれをして来ていました。お顔は覚えていませんが、ほっぺまで幸せなピンク色になったのが、ずっと忘れられません。
(そんな中に耳栓を付けて潜入した自分が、とても罪深く思われました・・・ですので、耳栓はハズしました。)



以上の話では、「音楽」と「音の盛り上がりや尻すぼみ」を混同したままなのは、もうお気づきの通りかと思います。ですが、
「音楽さん、そもそもあなたは、何なのですか?」
ということは、まだ当分先まで、問うのを我慢しましょう。

「触れ合う」ということが、人間にとってはいちばん、お互いの心を「動かす」感覚であることは、恋する人、愛する人を持ち、かつ、その人と「触れ合う」ことを大事になさっているなら、よくお分かりになると思います。

音楽(荒っぽいですけれど、プロレスの観客のざわめきのような激しい音の振幅も、いまは広義に「音楽」に含めてしまいましょう)、は、そう言う点では<次善の感覚>として捉えられるものかもしれません。
ですが、上の、聴覚障害の方達との経験の話を通して、
「音楽は、私たちの肌に直接触れてくる」
・・・そのことによって、私たちに直接、語りかけようと試みてくる「ある<動く>もの」だということは、言えるのではないでしょうか。
それが、最初に、音楽さんがシンプルに答えてくれた

「そりゃあんた、私たちゃお互い、<動くもの>だからじゃありませんか?」

の意味なのではなかろうか、と、今回は推測するところまでにしておきましょう。

では、私が音楽さんと「お互いに動ける」のか・・・は、ケースバイケースですので、音楽さんも答えるにはたいへん苦労するだろうと思います。そのあたりは少しずつ話し合って行きましょう。

余計な話の方が多くなってしまいました。



繰り返し、まとめておきましょう。今日の会話は、これだけです。

私 :「音楽さん、なぜ、あなたは私の【心】を動かすこともあるのですか?」
音楽:「そりゃあんた、私たちゃお互い、<動くもの>だからじゃありませんか?」
私 :「でも、あなたが動いても、私が動かないこともある」
音楽:「私の動きとあなたの動きが合わなくっちゃ、そんなのあたりまえですよ」
私 :「じゃあ、どんなとき、私たちは一緒に動けるのでしょうね?」
音楽:「そんなの、その時々で違うから、おいらにも分かりませんや」
私 :「はあ・・・」

どなたの心も動く音楽かどうか、分かりませんが、つまらん会話を開陳したお詫びに、


 Elly Amering(S.)/J.Demus(Pf.) EMI CC30-9018

をお聴きになって下さい。



明日から数日間、ネット環境が制限されますので、年内のくどい長文記事は今回までです。
思いがけず日々数十人から百人くらいの方までにお読み頂けたことに、深く感謝申し上げます。
短文そのものは毎日綴るはずですので、まだちょっと気が早いのですが・・・
無事に年末を乗り越えられ、ゆったりしたお正月をお迎え下さいますよう。
明くる年が、私の大切な皆さんに、幸せいっぱいの年でありますよう、心から祈っております。

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