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2007年11月12日 (月)

曲解音楽史:22)平曲と能楽:付)発声法について

前の回:1)音という手段  2)リズムの成立 3)音程から音階へ
    4)言葉と音楽   5)トランス   6)古代メソポタミア
    7)古代エジプト 8)古代インド   9)古代中国 10)古代ギリシア
    11)古代ローマ  12)初期キリスト教の聖歌について
    13)ササン朝ペルシャ    14)西暦5,6世紀ユーラシア音楽横断
    15)中世前半の西ユーラシア   16)唐朝と朝鮮・日本 17)「声明」の伝来
     18)モンゴルと中央アジア北方 19)「十字軍時代」の西ユーラシア
     20)日本固有(?)の古歌


キリスト教の聖歌をフォローしていくはずでしたが、ちょっと、それます。

母が老いの遊(すさ)びで「謡(うたい)」を習っているのですが、今度上京して「杜若(かきつばた)」という演目のシテをやるので、
「練習するからちょっと聴いてくれ」
「いや、オレは素人だから分からん」
「いいから」
・・・無理やり聴かされました。

聴いていて、ひとつは「謡」の特徴のこと、もうひとつはその唱法について、実は大変新鮮な勉強をさせてもらう結果となりました。

先に「唱法」の話をします。

「謡」には、西洋音楽とは感じが違いますけれど、「謡本(うたいぼん)」というものが譜面として量産されてきました。歴史的には世阿弥自筆のもの(15世紀)が残っているほど古くまで遡り、江戸期から明治にかけて量産され、いまも神田の古書店街には「謡本」が山積みされている店もあるくらい、流行したものです。
それはともかく、普通は、これを「見台(けんだい)」(時代劇で武家の子供が漢籍を読むときに本を載せている場面で良く出てくる、あの台です)に載せて、それを見ながら練習するのですが、母が練習した時には、本を床に置いていました。
謡い終えて、母曰く、
「歳をとって、声が出なくなったんだよね」
「いや、それはちがうよ」
観察していて、気が付いたことがあったのでした。
床に置いた本を見ながら発声すると、必然的に喉が閉まります。すると、声帯に力を入れないと、高い声がでません。ところが、これは確かに年齢に関係するのですが、年をとれば声帯は伸びてしまっています。声帯に力を入れると、逆効果で、ますます高い声を出すのが苦しくなる。姿勢も、肩がこころもち上がってしまいます。
「やっぱり、本を見台に置いて練習すべきだ」
ということを、まず言いました。
もうひとつは、喉を絞めないためにどうするか。
1)肩が、力が抜けて自然に下がった状態でなければならない。
2)高い音になるほど、顔を上に上げなければならない。ただし、首はまっすぐに保ち、喉まで上に上がることのないように気をつけなければならない。
3)一全音(たとえばドからレに)上がるのが苦しいときには、目線(視線)を下の音の時の位置から、心持ち上に(角度で2、3度でしょうか)上げると、発声に必要な分だけ喉が広がるので、今まで苦しげだった発声がウソのように楽になる。
この3つに気をつけてみたらどうだ、ということで、難所をもう一度やってみてもらったら,
「あ、ラクになった」

要するに、西洋のベルカントだろうが日本の謡だろうが、発声の原則は「喉がリラックスして開いていること」であって、これができれば、七十代でもわりと伸びる声が出るのですね。
これは、自分でも発見でした。

「高音になるほどリラックス」
は、楽器や洋の東西を問わず、音楽を伸びやかに聴かせるための要諦ではないか、と思っております。


で、「謡」の内容の方。表題では「能楽」としてしまいましたけれど、いわゆる「能楽囃子」については、また別に考えなければならないと思っております。また、仕舞については特段触れません。「能」の歌を聴いていて、「あれ? これって、平曲(平家物語を琵琶をかき鳴らしながら語る、あの「耳無し芳一」の演じた音楽です)に似た節回しだな」という風に感じました。

能楽の方は、囃子の方がなお一層激しいのですが、謡にしても、素人耳には旋律(音程)が聞き取りにくい、不可思議な響きをもっています。
ですが、囃子を抜いて謡の部分だけ聴くと、その旋律・旋法は、平曲に大変良く似ています。

まだ一般化するほど聴き込んでいないので、実際どうお感じ頂けるか分かりませんが、最後にサンプルをお聴かせします。・・・これが、日本の「歌謡」の原点である、と、私は信じて疑えなくなってしまいました。

1)
  活字にすると4行8節しかない、平家物語の最初の部分ですが、6分かけてうたわれます。

2)
  時代劇で「祝言(結婚式)」の場面で謡われますが、全曲演奏すると50分ほどかかります。
  もし歌舞伎の「勧進帳」をCDで聴いても平気、というかたでしたら、
  「高砂」も是非、通しでお聴きになってみて下さい。
  ・・・雰囲気、構成の類似性には胸を打たれるものがあるはずです。

とりあえず、今回は聴いてみて頂ければ、というところまで。

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