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2007年11月29日 (木)

合わせる

ちょっとは、音楽ネタになります。
・・・が、モーツァルトはまだ考えたいことがあるので、次回とさせて下さいね。
・・・って、誰も待っちゃいまい!



今日は息子の小学校が創立○十周年の記念行事、しかも舞台に息子もカンカン、じゃないや、金管バンドで出演するので、限られた保護者席に座ることが出来ますから、休みを取って行ってきました。
・・・が、正直なところ、ママさんが大勢いる中に男一人で、というのは、さすがに参ります。
似たような催しであっても、ですが、もし独身で恋人同士だったら彼女に夢中で周りが目にも耳にも入らない、なんてこともあるでしょう。既婚でカアチャンに襟首を掴まれて出掛けるのだったら、まあ、カアチャン怖さで緊張しているから、周りがどうの、なんて感じるゆとりもないでしょう。
でも、でも、わたしはヤモメです!
ママさん軍団の
「あら誰々さん、元気だったア?」
「ごめんごめん、ご無沙汰あ」
「最近、あんたんとこの子、成績いいみたいじゃない」
「そんなことないわよぉ。。。ゲームばっかしやってんの。」
なんて会話が飛び交う中には、どうしても入り込めない(主婦の方、ごめんなさい)。
出番の終わった息子のところへ行って、
「とうちゃん、途中だけど、帰ってもいいかな?」
「ああ、いいよ」
あとは友達とワイワイやるのを楽しんでいるその背中を見ながら、侘しく中途退場、だった次第。

夕方には、子供たちをインフルエンザの予防接種に連れて行った帰り、娘が文具屋さんに寄りたい、というので立ち寄ったら、来ていた知らないおばさんに、
「あら、みんなでおとうさんとお出かけなんて、いいわね」
「はー。はい。。。」

いやあ、「合わせる」難しさを、とことん知らされた一日でした。



世の中、人様と「合わせる」のが必ずしも良いわけではありませんで、会社員ですと、使い込みなんかして飲み食いしている先輩に、いつもコバンザメみたいにくっついてゴチになってたら、その先輩の使い込みが会社にバレた時点で、最悪解雇、良くて減給だったりしますね。

とは言っても、少なくとも家族同士が合わない、っていうのはまた最悪でして、
「とうさんがお風呂入ったあとは汚いから先に入る!」
「私の下着に並べてとうさんのパンツ干さないで!」
なんて日常になってしまったら・・・幸い、いまのところ我が家は無事ですが・・・これは悲しい。
家族と「合わせる」には、それぞれの性格を理解しあって、我慢することも必要だったりします。でも、妻が、我が子が、他所様にご迷惑をかけるようだったり、約束を守らなかったりしたら、しっかり叱ることも、また必要ですね。(自分がそうなら、こっちが叱られることも。)疲れていたらいたわってあげることも。・・・自然にそれが出来ることが、家族というものの長所だと思います。

夫婦は元々他人同士、とは、新婚時代いろんな人に口を酸っぱくして説教されたことだけれど、それが「恋人同士」だったところから一歩踏み込んで、(変な意味ではなくて、心を、だと、ここでは是非読んで下さいね)お互いの本当の裸で付き合えるから、家族の中では、いちばん信頼しあえるようにもなる。・・・夫婦である以上、そうなる努力をしなければならない。思い返せば、夢中でしたけれど、かつ、経験して来た社会も全然違っていたけれど、僕たちも頑張って来たのだ、と思っています。いつ、どこに出張していても、帰りがいくら遅くても、信頼していてくれた女房は、本当に、有り難い。そのかわり、女房が仕事で遅ければ、僕も信じて待ちました。悔いが残るとすれば、苦手意識から、料理だけはしたことがなかった。家内の遅い時の晩飯は、店屋物でした。
・・・あ。でも、僕の方も、家内にはしょっちゅうマッサージしてやったけれど、
「わるいねー。今度、あんたにもしたげるからねー」
って・・・結局してもらったことは一度もないや。
悔しいから、化けて出てやるからな!(って、どっちが?)

芸事の「合わせる」には、夫婦と似た努力がいるのだ、とも、また、つくづく思います。
最近はお笑いも「ピン芸人」と呼ばれる単独で芸をする人の方がウケる傾向にありますけれど、全盛期の漫才ブーム時は「合わせる」面白さを、誰にでも味合わせてくれた、貴重な時期だった気がします。裏側では、厳しいコンビは舞台を離れ、稽古を離れれば、一緒には過ごさない、ということで、自分たちの芸が甘くなるのを戒めていたりしたそうですよね。・・・どっかの次官さんご夫婦みたいなのは、芸の世界から見ても、世の中の普通の夫婦から見ても、<論外>なわけですか。



音楽の世界でも、ジャンルを問わず、「合わせる」のが上手なバンド、セッションは、爽やかです。ポピュラー系でデビューしている人は、昔のアイドル時代と違って、だいたいが「合わせる」のが上手いから売れて行くので、愛好者も「合っててあたりまえ」と思っていらっしゃる方が多いでしょう。ですが、あの「美空ひばり」でも、バックと合わない時は悲惨なもんでした。今活躍中の人も、ひとたび自分のセッションと「合わなく」なれば、ギョーカイから消えて行く。熱烈なファンでない限り、消えてしまったことさえ誰も気づかないのだから、結構厳しい世界なのではあります。だから・・・ポピュラー系が嫌いな人は、「おれはもっと高尚な世界に住んでいる」なんて勘違いをなさってはいけません。

伝統芸の世界の見事さに舌を巻いたのは、妹に無理やり連れられて、いやいや出掛けた歌舞伎を見てのことでした。
「あ、これ、オレがやってる(クラシックの)オーケストラと同じ心構えが必要なんだ! しかも、日本のクラシック業界の誰よりも、凄い!」
映像でお見せできないのが残念ですが、映像だけ見ても、じつは分からないことかな。
正面には、舞台があります。
客席から見て舞台の左側には、黒い小屋があって、歌舞伎の伴奏をする連中はそこに入っています。実際に入ってみたことはありませんが、視界はそんなによろしくはないようです。ですから、役者さんの演技が逐一見えるわけではない。
ですが、近代演劇とは違って、歌舞伎の音楽は、演技の仕草に「合わせて」演奏するように出来ています。外を見るのが不自由な黒い小屋(黒御簾といいます)から、伴奏をする人たちは役者さんの仕草にピッタリ合うように音楽を奏で、効果音としての太鼓を叩いたり釣り鐘をついたりなさっているのです。
舞台の右手には、三味線と唄。義太夫みたいなものでしたら2人。華やかな常磐津やしっぽりした清元なら、5、6人から、というところでしょうか。常磐津や清元は、舞台の上でやりますから、まだ役者さんに「合わせ」やすいかも知れません。ただし、大人数で三味線を鳴らし、唄うわけですから、各自が勝手に役者さんの動きを解釈してはならない。唄は微妙なズレを測って効果を上げることもあるのですけれど、三味線は、ぴったり揃っていないと、みっともない。
で、実は、役者さんの方も、名人と言われる人は、また「合わせる」ことをよく知っています。
役者さんは、決して一方的に、鳴り物(黒御簾の中の楽器や三味線)とか唄に「合わせさせている」のではないのです。
これが最もはっきり分かるのは、義太夫系の舞台です。
歌舞伎初体験で見せられたのは、「熊谷陣屋」という出し物でした(DVDが出ています)。
この舞台の中に、女の人が泣き崩れる場面があります。
演じる役者さんから、義太夫の唄も三味線も、たぶん、見えません。仮に見えたとして、「義太夫の方を見ている」なんて視線を、観客には絶対感じさせてはいけない。
だから、これは本当に、演じている最中は、役者さんは義太夫の方を見ません。
義太夫の方も、役者さんの方は見ません。
お互い、目線は一切合わせない。
それなのに、太棹の三味線が「ベーン」と鳴る(これが、女の人が悲しみで体をくずおれさせて行くのを表すのですけれど)・・・それとぴったり一緒に、役者さんの体が、音の強さの分だけ崩れる。
この「ぴったり」には、度肝を抜かれました。

役者さんと奏者は、何を通じて、こんなにぴったり「合わせられる」のか。
目を使って、ではないのだ、というのは先に申し上げた通りです。



行けない生活になってしまったので今どうかは分かりませんが、歌うと得点の出るカラオケがありますね。
あれは、聞いた話では、歌い出しがぴったり伴奏に合ったら得点をプラスしていく、というのも、仕組みの一つに組み込まれているとのことだそうですね(違っていたら教えて下さいね)。なので、高得点の常連さんは、伴奏の流れ・・・リズムの速さ、音の消えていき具合なんかを、しっかり体に叩き込んでいる。
基本的には、歌舞伎の役者さんがなさっていることも、カラオケの得点名人さんと同じです。一方の伴奏者も、役者さんの持っているリズムを知り尽くしている。だから、巧みに次を予測している、という次第です。

もっといろいろな要素はあるものの、まずはこのことを知って、別に歌舞伎に限らず、カラオケの得点を上げることに限らず、お笑いの掛け合いなんかも含めて、いろんなものを見てみれば、
「合う楽しさ・面白さ」
はどんなものにでも共通するのだ、ということにお気づき頂けるでしょう。



で、クラシック音楽からの、これまた私が度肝を抜かれた例を、ひとつここでご紹介しますので、お聴きになってみて下さい。
(右クリックで別ウィンドウで聴くことが出来ます。)


・・・これ、何人で弾いているか、分かりますか?

当てたら、偉い!
(でも、曲を知っている人には分かっちゃいますね。そう言う方は、演奏者の人数を知らない前提で、いったん耳をまっさらにしてみて下さいね。)

相変わらず文章ばっかり長くて、短いサンプルで、ゴメン遊ばせ。
ここまでお読み下さったのでしたら、心からの感謝を申し上げます。

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