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2007年11月 9日 (金)

モーツァルト:1775年の3つのアリア

ここまで読んできたモーツァルト作品の個々へのリンクを作成し直しました。ご利用下さい。



やっと、1775年の作品「観察」に一区切り、です。
世俗的声楽曲が最後になりました。


このジャンル、とくに独立したアリアは、当時の流行に沿って作られているためでしょうか、後世がよっぽど「傑作!」と認めていない限りは、耳にされる機会は非常に少ないのではないかと思います(作例も少ないでしょう)。
まして、オリジナルが管弦楽伴奏のアリアではコンサートでは取り上げにくくもあるでしょうから、歌手は、もし好きなアリアがあれば、個人のリサイタルでピアノ伴奏版で歌うのが常態であるように見受けます。当然、そうしたリサイタルの会場は収容人数が少ない(大ホールの、最大でも半分以下)のがふつうで、独立作品としてのアリアを聞く機会を持てる聴衆の人数は、必然的に、オーケストラやブラスバンド、ロックやポップなど大会場でコンサートができる種類の音楽よりもかなり限られます。

先日はつくばノバホールで森麻季さんがピアノ伴奏でのリサイタルをなさいましたが、人数をたくさん動員できるホールでこのようなリサイタルができるには、

・大ホールでありながら、声がソロでも行き渡るだけの音響の良さ
・かつ、観客動員が確実に見込める有名歌手
   (仮にヘタクソでも・・・森さんのことではないですヨ)

という条件がそろっていなければなりませんね。。。それにしたって、森さんもピアノ伴奏だったんですものね。しかも、演目の中にあったアリア(もし当日変更がなかったのでしたら)は、有名なオペラ(「薔薇の騎士」・「椿姫」)から抜き出したものでした。・・・いずれも、そちらへ話が脱線したいくらい、いい歌なんですけれどね・・・脱線はしません!

アリアも歌劇類(オペラ、ジングシュピール、あるいはオラトリオなど)に組み込まれていない限りは、歌手が貴人の前で力量を披露するときのみに歌われるのが通常のあり方だったと思われます。
日本なら、江戸〜明治期に歌舞伎を見物に行けない貴族・大名やその奥方のリクエストで、人気の芸人さんが出張して特別に単独作品の舞踊を披露する(そういうことがあったのかどうかは知りませんが)のに似ている。
で、こんにち、単独作品としての日本舞踊は、やはり「歌舞伎座」や「国立劇場」なんてところでは滅多に一般人が見ることはできないのでありまして、いちばん手軽に見るためには、NHK教育テレビで放映されるチャンスを逃さないしかない。次に手軽なのは、自分が日本舞踊を習って、あるいは習っている人と縁を繋いで、その発表会を見に行く。

あ、日本舞踊へも、脱線しません。
私なんぞの印象にも残ったいい演目があるのですけれど、題名を忘れるほど、私はこちらの世界のことには無知ですから。
(「じゃあ、他に何か詳しいものがあるの?」
 「いいえ、ホントは、モーツァルトのことだって、ちゃんとは知りません」)



モーツァルトが1775年に作曲した「単独アリア」は3つあります。
ただし、作曲された理由については、素人である私には全ては把握が出来ません。
言えるのは、上記のような事情を鑑み、これらは、おそらくは有名歌手がザルツブルクを訪れた際に(あるいはザルツブルク在住の有名歌手が特別に指名されて)宮廷で技芸を披露することを求められたことに伴って、宮廷からの下命、もしくは歌手からの注文により、手を染めることになったのではないか、という推測のみです。

作曲時期は、それぞれ明らかになっています。但し、誰が歌ったのか、までは明確には分かっていません。

まず
アリア(ソプラノ)「あなたは情熱的な恋人のように律儀な心の持ち主」K.217(10.26ザルツブルク)〜ガルッピ作のオペラ「ドリーナの結婚」への挿入歌
は、演奏時間7分程度の、基本はダ・カーポアリアながら実際には形式をやや複雑にして見せ場(聞かせどころ)を設けた作品です。
構成は
A-A'-B-A-A'-C-A(縮小)-Coda
といった感じでしょうか。ロンド形式に近くなっています。
面白いのは、A、A'部は「牧人の王」の、その他の部分は「偽の女庭師」の持っていた雰囲気を引き継いでいる点でしょう。
なお、「ドリーナの結婚」は1755年以降ヒットを続けたロングランオペラだった旨、アインシュタインの記述から分かります。上演は、この頃ザルツブルクを訪れていた、イタリアからの旅の一座によって行なわれており、冒頭に述べたような「宮廷に招聘された名歌手」が歌ったものではありません。

そして、
アリア(テノール)「運命は恋する者に」K.209(5.19ザルツブルク)
アリア(テノール)「従いかしこみて」K.210(5月ザルツブルク)
  〜ピッチーニ作のオペラ「うかつな男」(喜劇作品)への挿入歌と推測されているが、不明
は、いずれも3分程度の短い作品。
K.209はA-B-Aの典型的(雛形的)なダ・カーポアリアです。
K.210は、短いながら若干変化に富んでいます。序奏-A・B-間奏-C-B'-A-Codaというつくりで、とくにCoda部はかなり後年の「ドン・ジョヴァンニ」の登場人物であるレポレロのキャラクターを先取りしている点が興味深く思われます。
テノールのアリアのほうの歌い手は分かっていません。春に作られた「牧人の王」のアレッサンドロを歌う予定だった(もしくは歌い終えた)歌手が、大司教のお眼鏡にかなって、急遽御前演奏でも企画されたのでしょうか?
2作とも5月のもので、K.210のほうの作曲日付の詳細までは判明してはいないものの、そんな企画の中で同時に歌われた、と考えても差し支えないのではないかと考えます。
どんなもんでしょう?
ただし、近作の「牧人の王」や「偽の女庭師」のムードは、この2作には感じられない気がします。(ソプラノのアリアより先に作られているのですけれど。もっとも、「牧人の王」の上演者が歌ったのであれば、同じ雰囲気ではつまらないですから、そこまで配慮した、というのでしたら納得できます。かつ、モーツァルトの徹底したプロ意識を、そこに見るのも良いでしょう。)
機会がおありでしたら、耳でお確かめ下さい。
・・・これらも、もしかしたらK.217と同じ一座が歌ったのではないか、と、アインシュタインは推測していますけれど。

ひとことしておくならば、この年の他のジャンルに比べると、新味が少ないと思います。

私はずっと前に安物買いしたCDしか持っておらず、ここではとても推薦できません。
質の良いものをご存知の方、是非ご紹介下さい。
K.217については、グルベローヴァ盤、カークビー盤があります。

楽譜は3曲とも、NMAでは第10分冊に含まれています。

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