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2007年10月19日 (金)

ドヴォルジャーク「交響曲第8番」第3楽章

「人生は短く、術は長し」
(セネカ『人生の短さについて』に引用された、ヒポクラテスの言葉)

ドヴォルジャーク:交響曲第8番につき、

全体像
・第1楽章:構成について練習上の留意点について
・第2楽章:構成について練習上の留意点について
記して参りました。
また、アーノンクールの述べている、作品理解のうえでの示唆も引用しました。
(リンク先をご覧下さい。)

今回は、第3楽章について、構成・留意点ともに述べます。
(使用スコアは、音楽之友社OGT238です。)

構造は他の楽章に比べ、異論の余地が全くない明解なものですね。

第1部(緩やかな3拍子のスラヴ舞曲)・第2部(そのトリオ)・第1部・コーダ

特記すべきなにものもありません。

練習にあたっては、美しくセンチメンタルなメロディを持つだけに、メロディ担当者だけが「気が入ってしまい」、伴奏はメロディとどうリンクすべきかを「考えない」ミス(同様の雰囲気の楽章ではよくあることで、プロでもこの過ちは・・・メロディアスなものは軽く考えられがちなのでしょうか・・・かなりの頻度でおかしているのではないかと思います)をしてしまいやすいので、注意しましょう。
ドヴォルジャークが用意した、音色とリズムの巧みな配置こそが、この楽章の「いのち」です。
まずは、この点をご銘記下さいますようお願い致します。

なお、小節番号は使用スコアでは「通し」で付けられていますので、それに従います(パート譜を参照していません。ごめんなさい。)

01*(アウフタクトを除き)ヴィオラは2小節伸ばしの後はスラーが付いていなくても、音の変わり目は常にレガートです。
29小節からのホルンに、全く同じことがいえますので、あらかじめ申し上げておきます。
ドヴォルジャークがここにスラーを書かなかったのは意地悪からではないことは、試しに書き込んでみればどれだけ楽譜が見づらくなるかを試してご覧になれば分かります。legatoという言葉を敢て使わなかった理由は、主旋律と他の伴奏音型の兼ね合いから、オーケストラ団員なら常識的に判断できることですから、わざわざ書く必要がなかったまでのことです。・・・ということは、「legatoと書いてないからごつくても構わん」と考えるヤツは大バカもんだ、と自分から表明しているに等しい、ということでもあります。大バカもんで結構なら、そうなさってみても構いませんけど。(ボクは、やろう!)

02*第1部の主題のフレージングをきちんと読んでおきましょう。基本構造が、最初は[{(2+2)+(2+2)}+{(2+2)+4}]、次が[({(2+2)+(2+2)}+{(2+2)+(1+4)}]で、しかも、2回目は各2+2の最後が次の2+2と切れ目が入らないようにしたい、という作曲者の意向でスラーで繋がっています。ただし、このスラー効果が必要なのは主旋律のみであって、伴奏各音型は、基本のフレージングを崩さないようにしなければなりません。主旋律のスラー効果に「合わせよう」としてしまうと、逆にスラーの意味する「この程度の接着力が欲しい」という狙いを妨げることになります。練習上は、()単位、{}単位、[]単位の順で、小さい単位から音楽作りが上手くいくかどうか思考し、上手くいったらより大きなまとまりへと進め、最後に大きなまとまりで「歌える」ようにすると、この主題の意図が理解できるでしょう。ただし、こうした「まとまり」の掴み方は個人練習(頭の中だけででも出来ます)でやっておき、全体で合奏する場合は「大きなまとまり」で練習すべきでしょう。

03*同部分、コントラバスは音符こそ16分音符ですが、ファゴットと同じラインを「歌っている」ことには充分留意して下さい。

04*「A」からの木管(トランペットを含む。すなわち、ここのトランペットは木管楽器の音色でなければならない)と1stVn.、ファゴット、コントラバスの交代は、たとえにしてしまうと先に出る木管群が女性の踊り手、エコーで答える残りの群が男性の踊り手なのだ、と意識して、踊りの流れが途絶えないようにはお互いにどう手を取り合えばよいのかをしっかり考えて下さい。また、フォルツァートの効果は長め、短めの両方、および鋭め、柔らかめの2X2通りを想定して置いて下さい。どれになるかは指揮者の解釈次第です。

05*ティンパニ、2ndVn、ヴィオラのトレモロは、フォルツァートのタイミングが「04」で述べたことを想定するとともに、それらのパートとタイミングがずれないよう、充分に気をつけて下さい。弦楽器は1拍に4音符入るだけですから、慌てないで、きちんと拍を数えて下さい。練習する際には粒が揃っていた方が望ましいと思います。「いや、そこはむしろ輪郭がボケるようにバラバラにして!」という要求があれば、それに従えばいいのですけれど、チャンと指示に従える、ということは、前提として「臨機応変にできる基本形が出来ている」ことが重要なのを忘れないで下さい。

06*39小節からの弦楽器は、たとえば「アルルの女」組曲第1番のメヌエット(第2曲)の1stVnを思い出して下さい。あれのスラーをハズしたものであって、要求している「軽やかさ」は同じです。あるいは、女性の踊り手が、次はどの男の踊り手を相手にするかを、ヒソヒソ話で決めあっている・・・

07*「B」は、ディナミークはpですが、「色っぽい音」でなければなりませんから、ディナミークよりも音の豊かさに気を配って下さい。ヒステリックに、ではなく、見物人にため息をつかせる美しい飛翔を見せる箇所です。チェロとセカンドのやり取りは、ブラームスの第2交響曲や第4交響曲にある、ひとつながりの音の流れを別の楽器に分割した書法ですので、「仲良くして」下さいね。

08*53小節は、あくまでメゾフォルテです。1stヴァイオリンは最高音のfなので、とくにこの点、気をつけて下さい。ポジションは決して高いわけではありません(ほかの弦でならともかく、1番線での第7ポジションは決してとりにくいものではありません)。d音を1でとればfは3でとれます。それだけでふくよかな音になります。

09*85、86小節のチェロとコントラバスによる第1部の最後は、最後の一音まで大事に弾いて下さい。初めは「ディミヌエンド」がないものとして、音程がしっかりとれていることを確認し、確実になって初めてディミヌエンドを導入するのが望ましいのですが・・・

10*第2部が始まります。敢て記しませんので、フレージングを02と同様に分析し、お互いに話し合って、「合意」に達して置いて下さい。ただし、一つだけご注意申し上げれば、大きな固まりとしては104小節までは切れ目がありません。(あったとしても1ヶ所ですが、第1部に比べたら開きはずっと小さくなければなりません・・・というのは私の「解釈」になってしまうかな?)
チェロの16分音符は、ppでもffでも変わらず弾けるよう練習しておくことが望ましいと思います。

11*105から118までのティンパニとトランペットは、ディナミークの変化にかかわらず、常に広々としていなければなりません。叩き方、吹き方が安定し、かつ窮屈にならないにはどうするかをよくよくお考え下さい。とくに最後のppをどう「美しく」残すか、がポイントですから、そこへどう向かっていくかを、しっかり設計なさって下さい。

12*151小節からの16分音符は、最終的な解釈に関わらず、「テヌート」・「スタカート」・「其の中間」いずれでもアンサンブルが揃うような、メカニックな練習をする時間があるのでしたら、是非それをある程度は徹底してなさってみて下さい。

13*「CODA」はディナミークがpであるなかでアクセントをどう揃えたらいいのか、オーボエとファゴットでよく擦り合わせをして下さい。セカンドヴァイオリンは、1拍4音符です。正しく。右肩に力が入らないように。

14*190小節からのオーボエのスラーは、他のパートのための「残響効果」ですから、ベタ吹きになって響きを台無しにしないよう留意して下さい。8分音符のパートはアインザッツと音の長さとを揃えなければなりません。

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