« 小6息子作:隆盛新聞 | トップページ | ドヴォルジャーク「交響曲第8番」第2楽章(2) »

2007年10月15日 (月)

すばらしかった:上岡/ヴッパータール

結局、行って来てしまいました。
上岡敏之指揮、ヴッパータール交響楽団演奏会inつくばノバホール。

運営に携わったキンキンさんの、本場物の記事はこちらにリンクしました。是非ご覧下さい。演奏会が裏側からも分かります。

まず、R.シュトラウス「ドン・ファン」。
この曲をお好きな方はご存知の通り、緩急の激しい構造をしています。
その激しい緩急を、更に極端なルバートやアチェランドで強調するのですから、ふつうでしたらハラハラドキドキものです。途中、休符上のフェルマータ(ほんとに休符上についていたかどうか、スコアの記憶が私には定かではないのですが)は、息がとまっちまうのではないかと思うほど長く取られていて、聴衆は危うく窒息死するところ・・・のはずでした。
ところが、これが、そんな演奏デザインにも関わらず、非常に安心して聴ける。同一主題を、弦楽器は下声部から上声部へと、管楽器も楽器間の交代を頻繁に行なうのも「ドン・ファン」の大きな特徴で、通常は声部や楽器が入れ替わると、「あ、入れ替わったな」とモロ、ばればれの演奏が多いのですけれど、ヴッパータール交響楽団の面々は、そこで声部や楽器が入れ替わったのか分からない、自然なつながりで音楽をすすめる巧者ぶりをも私たちに見せて(聴かせて)くれました。

2曲目、モーツァルトのピアノ協奏曲第21番ハ長調(第1楽章の途中に交響曲第40番の冒頭楽章と同じモチーフが現れるので有名)については・・・ひとこと。上岡さんは、正直言って、指揮する必要はなかった。団員が、上岡さんのやりたいことはすっかり読み切り、汲み取ってしまっていました。

最後の「ベートーヴェン第5(運命)」、冒頭の動機のフェルマータをこれだけ短くする解釈は、録音可能になって以後の時代では初めて、だったかもしれません。ただし、呈示部の反復のおりだけは長くしました。このへん、人によって感じ方は様々かもしれませんが、演出の妙、でした。第2楽章の美しさ、第3楽章のおどろおどろしさは、「上岡流」の強烈なデフォルメもありましたが、それでいて安定感を崩すものではありませんでした。第4楽章はピッコロの登場部分、ピッコロがヒステリックにならないための配慮でしょうか、他の楽器をメゾピアノ程度までに落とさせましたので、ピッコロが柔かに、伸びやかに聞こえ、「革命よりは平和にふさわしい」感じでした。

上岡さんと団員との、普段からのコミュニケーションが、いかによくとれているか。
このことを、実に雄弁に物語った演奏会でした。

アンコールは、なんと「こうもり」序曲。

そして、団員退場後も鳴り止まない拍手。聴衆総立ち。
スタンディングオペレーションに呼び戻された上岡さんは、再びステージに登場すると、団員全員をもステージに呼び戻しました。

指揮者、団員、全員揃って、「礼!」

演劇の舞台ならともかく、オーケストラコンサートでは初めて目にした、素晴らしい光景でした。

それにしても、スタープレイヤーなど持っていそうにない、一見地味なこのオーケストラ、言葉では表し難いほどの「アンサンブル巧者」である点には、CDでの印象以上に驚嘆しました。ちょっとしたミスは皆無ではなかったのですが、気づかなかった方が多いと思います。リカバリが迅速且つ冷静で、音楽の流れを絶対に崩さない。
これは、有名オーケストラでもなかなか出来ていないことです。

もっともっと、存在の知られていいオーケストラであると思います。

ちょっとの間、実は、本番前に上岡さんが協奏曲をさらっている音がちょっと聞こえたので、楽屋裏にしばし耳を付けていました。終楽章を、はじめは遅いテンポで、つぎに本番で弾いたのよりは速いテンポで(とは後で分かったことですが)、と工夫しながら、始まる寸前まで気を抜かない上岡さんには頭が下がります。

取り急ぎ、ご報告まで。

|

« 小6息子作:隆盛新聞 | トップページ | ドヴォルジャーク「交響曲第8番」第2楽章(2) »

コメント

私、最前席で観ました。上岡さんの唸り声がすごいの~(チェリビダッケなみ)。棒捌きはカルロス・クライバーを彷彿させる。オケもオケ大国の底力を感じた。このコンビで、ベト7、ブラ2、マラ5、チャイ4、トリスタンを聴いてみたい。

投稿: つくば太郎 | 2007年10月15日 (月) 20時14分

kenさん
いやー楽しかったですね。私も記事書きましたが、賛否両論あっておかしくない演奏とは思いましたが、私にはとにかく楽しかったというのが最大の感想です。

つくば太郎さん
どうもありがとうございました。「つくばコンサート」にはよく来てくださる方でしょうか。私も「こうもり」での指揮にはカルロス・クライバーを彷彿としましたよ。でもテンポの煽りはカルロス以上に効いてましたね。

投稿: キンキン@ダイコク堂 | 2007年10月15日 (月) 22時12分

昨日は失礼いたしました。
ほっんとに素晴らしいコンサートでした。1週間は余韻に浸れると思います。いや、ずっと浸りっぱなしかも・・・。それにしても上岡さんの指揮は凄かったです。髪の毛の先から、手の先から、音符が飛び出してくるような。上岡さん自身がもう、音楽!!そんな感じ。もう圧倒されてしまって・・・。意を決して、大阪から行って本当によかったです!!

投稿: あか | 2007年10月15日 (月) 23時23分

つくば太郎さん、ありがとうございます。
あかさん、遠路はるばるの甲斐が、充分以上にありましたね! 本当に良かった!
キンキンさん、大変お疲れさまでした。

クライバーの棒さばきとの共通点は、おそらく、「オケまかせがうまい」点、「それでいて自己の監修したい音楽像はオケマンすべてに理解させることができる」点、にあるのかもしれませんね。「こうもり」序曲でのテンポ取りはキンキンさんの仰る通りだったと思います。歌わせ方が「日本的」で、それに平気な顔で冷静につけちゃうオケにも舌を巻きました。

サイン会のあと、お疲れのところ「携帯電話で写真を撮らせて下さい」と申し上げたわがままに、にこやかに答えて下さったお人柄にも、私はころっと来てしまいました!

投稿: ken | 2007年10月15日 (月) 23時24分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/95716/8428583

この記事へのトラックバック一覧です: すばらしかった:上岡/ヴッパータール:

« 小6息子作:隆盛新聞 | トップページ | ドヴォルジャーク「交響曲第8番」第2楽章(2) »