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2007年10月25日 (木)

ドヴォルジャーク「交響曲第8番」第4楽章

ドヴォルジャーク「交響曲第8番」につき、
全体像
・第1楽章:構成について練習上の留意点について
・第2楽章:構成について練習上の留意点について
第3楽章についてはまとめて
記して参りました。
また、アーノンクールの述べている、作品理解のうえでの示唆も引用しました。
(リンク先をご覧下さい。)



TMFへの練習に伺えない償いとしての、とりあえず最後の記述です。
・・・練習に行けないことは、寂しくもありますねえ。
・・・それに、こんなもの記して、お役に立っているかどうかも心もとありません。
   お会いできた時にひと言でも頂けたら、嬉しいです。
   もちろん「役に立たなかった」であっても、「言葉」を頂くことが嬉しいのです。
   ご理解頂けるでしょうか?


本題に入る前に。
「え? 昨日は<不幸論>で今日は<幸福論>かい?」

はい。見掛け上は。
(本当は「<幸福・不幸は1円玉>論」をやりたかったのですが。今日は欲求を抑えておきます。)

なんでもいい、「ああ、愛すべきもんだなあ」と、初めてあることを好きになった時のことを思い浮かべて見て下さい。
「好きになる」はじめは、文字通り、初々しいものです。好きになった、その瞬間は、最高に「幸せ」なひとときです。
この「幸せ」というやつは、でも、神様が仕組んだ罠ではないか、と、このごろ、とみに思います。
いったん「幸せ」の味をしめると、人は今度はそれが「瞬間であるから素晴らしい」のだということを、とたんに忘れます。「せっかくだから、いつまでも続けばいい」と思い始めます。
「ああ、あのとき<好き>だと思えたその幸せを、どうやったらずっと手にしていることができるだろうか」
こんな考えが幻影であることに、精神が健康なら、すぐに気が付くこともできるのでしょう。
ところが、人の心というものは、もともとそういうふうには出来ていない。(って、私だけ?)

音楽の演奏を、いつになく素晴らしくやり遂げたとき、私たちアマチュアオーケストラのメンバーは、とっても幸せです(プロではないのでプロの方のことは分かりません。滅多に打ち上げをやらないでしょうしね)。
で、この「幸せ」が永続するはずだ、と信じて、打ち上げでどんちゃん騒ぎをしまくります。
・・・明日にはお互いそっぽを向き合っているかも知れないのに。

本番では第8も最終楽章に至り、クライマックスを乗り切った瞬間には、この「罠」が待っています。
今から手ぐすね引いて待っています。
ですから、いまのうちに、
「幸せとはどういう試みをした結果から得られるのか」
を、各々のかたが客観的に考え続けて下さることを、まず最初に強く祈念致します。
客観的に考えられるようになってさえいれば、「幸せ」は段々に「過去の幻影にあなたを陥れる罠」ではなく、いつかは知れなくても、もしかしたら将来も再現可能な現実の感動への、またとない虹の架け橋に姿を変えてくれるでしょう。

・・・「幻影」ばかり追い続けることから逃れられずにいる私が申し上げても、説得力は全くありません。
・・・ですから、私も、自分がここに記した「精神の姿勢」を自分も守っていけるように努力したい、と願っております。



演奏上の留意事項を第2楽章、第3楽章では第1楽章の半分も数を綴っていなかったことには、お気づきかもしれません。第1楽章での留意事項を忘れなければ、・・・「全体像」で述べました通り、lこの作品には一貫性があるため、後続楽章に応用がきくことが非常に多いのです。
第4楽章も、2、3楽章と同じです。
ですので、昨日に引き続き長文になるのを恐れずに、第3楽章同様、「構成のこと」・「演奏向けに練習すべきこと」を併せて綴っておきます。


<第4楽章の構成について>
これも、スコアや伝記の解説は、私にはどうしてもしっくりきませんでした。
素直に読めば、スコアの解説ほど複雑ではありませんし、変奏曲の応用、といった「自由度の低い」形式でもありません。以下で述べる読み方が、お聴きになっての印象にいちばんしっくり来るものなのではないか、と、私は感じておりますが、いかがでしょうか?

単純に言ってしまえば、この楽章は「ソナタ形式」です。複雑に言っても、「原則的ではないロンド・ソナタ形式」、もしくは「ロンドと変奏を道具に用いたソナタ形式」です。
それ以上のものではありません。学者さんほど一般的な楽式の概念に縛られるのでしょうか、なんだか知らないけれど複雑なことを仰っていますが、演奏するにあたっては、このくらいに割り切ってしまっても何の支障もない。
かつ、「序奏」は後から付け加えられた、という話ばかりが、いろいろなものにことさら書かれていますけれど、その後どのような経緯でこの楽章が完成に至ったかの過程を明らかにする努力を学者さんたちがしていない(公表していない)以上、演奏者は序奏は「付加物だ」などという意識を持つ結果になるばかりで、いいことは何もありません。考える必要はありません。

序奏部:Allegro, ma non troppo (1〜25)
主題A(1):Un poco meno mosso (26〜42)
主題A(2):同上。(1)変奏と言えば変奏ですが、飾りを変えただけ、と言えばそれだけです。
主題A(3):Un poco piu mosso (59〜74)=変奏ではありません。これが「A」の実体です。
主題B:(75〜92)
主題A(3)&codetta1、2:(93〜107、108〜111、112〜122)
主題C:ハ短調(下属調の同主調、123〜145)
主題A(3)の変形(変奏ではありません。146〜157)
主題C’:(158〜188)
以上の部分のcoda:(189〜252)
変ロ短調で始まり、219からは序奏のテーマを主として主調のト長調に回帰します。
※ここまでがロンドであり、かつ「主題Aにとっての呈示部」にあたります。

主題A(1)の変奏1:Temp I , Meno mosso (253〜270)
主題A(1)の変奏2:(271〜294)
主題A(1)の変奏3:(294〜310)
以上のcoda:(311〜338)
※ここまでが「展開部」に当たります。展開の方法が「変奏」だ、というだけです。

主題A(3)の(短いですが)「再現部」:(339〜355)

全体のコーダ:(356〜389)

すなわち、「呈示部」は拡大手段として、あとは二度と使われないB、C主題を用いたロンドをひな形に用い、「展開部」は音楽の明解さを保つために「変奏曲」方式をとり、「再現部」は第1、第2楽章同様、短く分かりやすいものにして、全4楽章の作曲方針の一貫性をあらためて強調しているもの、と受け止めれば、充分なのではないでしょうか?



<練習上の留意点>

01*序奏部のトランペットは、最後のppまで張りを失わず、音質が変わらないよう、充分計算して。ということは、基本的にアンブシュアは音高によって変えてはならないことになります。アパチュアの変更も望ましくないとなると、口腔内の体積をどう変化させるかを考慮して演奏しなければならない、ということになります。

02*序奏でとトランペットを引き継ぐクラリネット、ホルン、ティンパニはボケずにクッキリ。とくに、ティンパニは音域的にボケやすいホルンを上手に補強して下さい(他の楽章にもありましたね、そう言う箇所)。

03*26小節からのファゴットのスタカートは、コントラバスのピチカートと響きの長さを揃えて。

04*34小節以降のヴィオラ、2ndVnは第2楽章の冒頭部と同じ注意が必要です。

以下、先行3楽章から応用すべき箇所を、各自で発見して下さい。

05*146小節からの弦楽器のトレモロは「和音」のチカラが必要なのであって、腕や肩の力は必要ありません。肩の力を抜き、弦がよく振動するように。弦が間違いなく幅広く振動しているかどうかは、目で確かめることが出来ます。(ひいている最中に、弦がチャンと振動しているか、ご覧になったことはありますか?)

06*156〜157小節のヴィオラ、2ndVnのディミヌエンドは、長いサイクルのフォルテピアノだ、と捉えて極端な効果が出るように。フォルテシモの時間を1拍取り、2拍目で音量を落として、157小節に入ったら初めはp、小節の終わりまでにはpppになるくらいの意識で練習しておいてみて下さい。実際にどの程度の効果にするかは、最終的には指揮者に従うにしても、練習では上記のようにしておかなければ指揮者の要求には応えられません。

07*練習記号H(170〜)のヴィオラ、チェロは1本の弦の上でポジション移動して弾くべきです。移弦が入るとリズムが狂います。ヴィオラは3番線で、C音を基準に、低い方は第1ポジションで、高い方は第3ポジションでとれます。チェロは同じくC音を基準にして、指使いはヴィオラとは変わりますが、同じ理屈で取れます。指を幅広くできるのでしたら、なるべく4の指は使わない方が輪郭がしっかりしますが、音程が危うくなるようでしたら4指を使った方が無難です・・・ポジションの移動を、その分きちんと練習しておく必要があります。

08*練習記号Lでのファゴット、ヴィオラ、チェロとバスは、八分休符をしっかり守り、入りを正確にしなければなりません。

09*最後になってしまいましたが、主題A(3)の登場する部分および最終コーダでの金管、打楽器は、原則として木管楽器よりは一段ディナミークを落とすべきです。これらの部分はすべて「クライマックス」を形作りはしますが、木管の音色が消えないことが必須です。トロンボーンのリップスラー(363)は、リズム通り正確に出来ないのでしたら(自信から、ではなくて、メトロノーム等を用いて「自身の客観的な耳」でご確認下さい)、リズムの正確さはトランペットに委ね、拍が性格に出せる音(第1音、第5音)で正しいリズムに合わせるようにしておくべきです。

生意気を重々承知で綴って参りました。
他の楽章とも併せ、意をお汲み頂ければ幸いに存じます。

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