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2007年8月 1日 (水)

ちょっと酷評:「指揮者列伝」ふくろうの本

図説指揮者列伝―世界の指揮者100人 Book 図説指揮者列伝―世界の指揮者100人

著者:玉木 正之,平林 直哉
販売元:河出書房新社
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上記書籍を昨日瞥見しました。なんだか失望感を味わいましたので、顰蹙ですが悪口に走ります。

いわゆる「ムック」本の一種だと捉えていいのかと思いますが、「ムック」とか「ノウハウ本」は、知りたいことが手っ取り早く分かる・誰にでも分かりやすい、というメリットがありますね。
そのメリットを殺さないで著述してはもらえなかったのか、というのが、この書に対する不満です。

図説指揮者列伝―世界の指揮者100人 」は、指揮者の写真を載せた脇または下段に、その指揮者に対する筆者の「印象」が書いてあるだけです。本当の意味での指揮者の略伝にもなっていません。極端な比較相手ですが、司馬遷『史記』の列伝あたりと読み比べてみれば、文章に臨む筆者の態度がいかに「甘い」かは歴然とするでしょう。・・・読者は、そんな程度の文章から、いったい何を得たらいいのでしょう?
そんな文章のために1,800円ものお金を払うのは勿論、立ち読みする時間さえ、「しまった!もったいなかった!」と感じてしまいます。

たとえ娯楽のためでも、読者が本を手に取るのは「情報がほしい」からです。それも、筆者本人が文章の対象ではない以上、欲しい情報は「筆者個人の楽しみ」ではなく、読者としての「私」にとって新知見を得られる類のものです。
「誰々のタクトは、やはり伝説となっているとおり、ある種の魔術だったのかもしれない」・・・<指揮者>なんてものに興味を持つ連中は、そんなイメージは先刻承知だし、「はじめて興味をもったんだけど」という読者にとっては、イメージばっかり読まされても、
「え? じゃあ、この人のことを、この先どう理解していけばいいの?」
さっぱり分かりません。

その指揮者が「何をしてきたか」「オーケストラをどう良くし、悪くしてきたか」の客観的な記載が欲しかった。
この本の内容では、新聞の号外記事ほどさえも、「有用」な情報が得られません。筆者が各々の指揮者について(不充分でも構わなかったのですが)真摯に究明してみようとした姿勢が、まったく、とまではいいませんけれど、僅かにしか感じられない。残念です。
このタイプの記述は、紋切り型の「Q&A」を列挙したムックやノウハウ本に多く見かけるのと同類です。そんな内容の本を、こともあろうに「ふくろうの本」という、私なぞはわりと信頼しているブランドのシリーズで出てしまったなんて・・・「やめてほしかったなあ!」というのがホンネです。
(音楽に限らず、そういう意味では「ガッカリ」な本はいっぱい存在するのですけれどね。。。他のジャンルで味わう失望を、「あ、手にとって見たいな」と思わせぶりに迫って来た本から、まさか味合わされるとは思ってもいなかったので、ショックも大きいのです。)

遺憾な事に、いくら関連CDを紹介しているからといっても、この本の読者は、筆者の挙げたCDへの一歩すら踏み出すことが出来ません。私はCD紹介本はきらいな方が多いのですけれど、それでも、紹介本のほうがはるかに「有用」だと感じました。

尊大に過ぎる文を綴ってしまったかもしれません。
公平を期すためには、いちど現物をお手にとって、私の「的外れぶり」をご検証頂ければよろしいかと存じます。アマゾンでレビューを寄せた方はこの本にはむしろ好感を持っていらっしゃいます。

大変失礼致しました。

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