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2007年8月23日 (木)

モーツァルト:1774年、その他の器楽曲(ホンの軽く・・・)

ここまで読んできたモーツァルト作品の個々へのリンクを作成し直しました。ご利用下さい。



1774年のモーツァルトの作品で、取り上げ残しているのはいくつかの小さい器楽曲とフリーメーソン歌曲、そして大どころでは歌劇「偽の女庭師」ですが、フリーメーソン歌曲は75年で扱った方がいいかどうか迷っています。「偽の女庭師」は、少し時間を下さい。

小さな器楽曲は
・教会ソナタニ長調K.144・ヘ長調K.145
・J.C.フィッシャーのメヌエットによる12の変奏曲 ハ長調K.179(12月6日以前)
ですが、軽い記事でご容赦下さいませ。



教会ソナタは、調性から言って、K.144はK.194(8月8日)のミサに、K.145はK.192(6月24日)の「小クレドミサ」に対応するものですが、いずれも作品表上は春に作られた、という以上には正確な作曲時期が分かりません。
仮に、各々のミサ曲と教会ソナタの組み合わせが合っているとしましょう。
モーツァルトが教会ソナタを書いたのは1771〜2年に3つ、74年にこの2つです。
一方、この時期に完成されたミサ曲は、1773年の「聖三位一体の祝日のミサ」K.167を含め3曲です。
最初の3つの「教会ソナタ」は、従って、モーツァルト自身の作曲したミサ曲とは一緒に演奏されなかった可能性もあります。そこからの類推で行くと、今回の2曲も、「たまたま調性が合っているだけ」という考えも成り立たないわけではないことになります。
で、実は、全集(NMA)の楽譜では、K.144とK.145は共に1772年頃の作とされていますので、前の3曲と一緒に記事を綴ってしまっていました
「教会ソナタ」のどんな点が興味深いか、は、その記事に述べてしまっています。
申し訳ありませんが、したがって、この2曲については前の記事へのリンクをご参照下さい。
ただ、作風に前の3曲から特別な発展をしたとは思えない(モーツァルトのこの頃の作としてはリキが入っていない)ものの、1774年作説の方が正しい気がします。前の3曲とは違い、K.144とK.145は、やはりモーツァルトは自作ミサ曲が演奏される同じ式典の中で演奏したもの、と信じたいなあ、というところです。
(Bunchouさんやランスロットさんのご異見を頂けると嬉しいのですけれど・・・)


「J.C.フィッシャーのメヌエットによる12の変奏曲 ハ長調K.179」
の方に行きましょう。
12月6日以前、とされるこの変奏曲、「偽の女庭師」の気晴らしででも作られたものでしょうか、軽く扱ってしまうには勿体ないほど、実際には前年以前の変奏曲に比べてずっとSurpriseのある変奏曲です。(カタカナで書けばルー語になってしまうのだ!)

J.C.フィッシャーは、バーデン(ウィーン近郊の方ではなく、南ドイツのほう)で活躍し、1746年に亡くなっているドイツの作曲家で、今日ではほとんど知られていません(私もさっぱり知りませんでした)が、18世紀初頭に音楽の最先端を行っていたフランスで音楽修行し、大バッハの「平均率クラヴィア曲集」の先駆けに当たる作品「アリアドネ・ムジカ」(1702年)をつくりあげた人物として、本来はヨーロッパ音楽史上もっと注目されるべき人のようです。実際、この作曲家の作品を大バッハが研究したことを、エマヌエル・バッハが証言しています(フォルケル宛書簡)し、バッハが実際に彼の作品「アリアドネのフーガ第5番」を「平均率クラヴィア曲集第1巻」の第16番で借用していることも知られています(橋本英二「バロックから初期古典派までの音楽の奏法」223頁参照。音楽之友社2005)。
いったいなぜ、モーツァルトが、彼の生まれる10年も前に亡くなったこのカペルマイスターのメヌエットから主題を持ってくることになったのか、が、まず不思議です。
用いられているメヌエットはフィッシャーのオーボエ協奏曲からのものですが、NMAの解説によると、この協奏曲が出版されたのは1768年で、かつモーツァルトは(この協奏曲を、かどうかは分かりませんが)1766年にウィーンでフィッシャーの作品を聴いているとのことです。
だとしても、「エマヌエル・バッハの著書で勉強した」と明言していたハイドンとは違い、セバスチャン、エマヌエルのバッハ父子にもこのころまださほど感心もなかったモーツァルトが、どんなルートでフィッシャーに興味を持ったか、が、まず判然としません。66年にフィッシャーの作品を聴いて強烈な印象を受けた、という形跡も、全くありません。
可能性が高いのは、当時のミュンヘンではまだ、隣接する都市で活躍していたフィッシャーの音楽が人気を保っていたのではなかろうか、ということで、作曲時期が12月であることからも、ミュンヘンで上演する予定の「偽の女庭師」の前宣伝用にでも作った、というあたりかな、と思いますが、いかがでしょうか?

主題となっているメヌエットは、(たとえ大バッハのものでもそうであるように)古典派のメヌエットに比べると単調な印象があります。
これが、第1変奏以外では、モーツァルトの手によって、どの変奏でも、耳で聴いただけでは一体どこに原型のメヌエットがあるのか分からないほどに巧みに細工されています。・・・実際、楽譜のほうでも、よく見なければ分かりませんね・・・第2変奏が既に、バスラインを2小節目で上声部と交代して反転する、などというアクロバットを演じているほどです。第4変奏に至っては、和声だけが原曲通りです(これが最も過激かもしれません)。
最後まで聴衆に息をつかせぬこの変奏曲・・・実際にお聴きになって窒息しても、責任はお取り出来ませんので、あしからずご了承下さい。

変奏曲集は多種の楽譜が出版されています。なお、NMAではクラヴィア(ピアノ)作品(他楽器とのアンサンブルは含まない)はすべて第20分冊に収録されていますから、モーツァルトのピアノ作品をお聴きになること自体が好き、というのでしたら、ベーレンライターのサイトならこれだけで入手することが出来るかもしれません。
無償ダウンロードで落とすには、膨大なページ数ですよ!

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コメント

いやー見落としてました。すいません。教会ソナタ、4・5番は、プラートの説から、1774年だと自分のEXCELには保存していました。調性による組み合わせという話は面白いですね。教会ソナタは、ハ長調は多いのですが、イやへやト長調もあります。一方、ミサ曲もハ長調が多いですね。ただ、1776年あたりがちょっと怪しくなってきます。見つかってないか消失してしまったミサ曲がまだあるのかもしれないと思うと面白いですね。

投稿: ランスロット | 2007年9月 3日 (月) 22時23分

ランスロットさん、あ、嬉し!
対応をとって行くと、完成したミサ曲より教会ソナタの方が数が多いんですけれどね・・・1780年までに、あと12曲ありますものね。ザルツブルクのミサは、それに対して8曲。4曲たりません(あってるかな?)。。。
調は、残りのミサはC,C,C,C,B,C,Es,C。76年以降には、76年のK.263とK.262のC、79年のK.329とK.317のC、80年のK.336とK.337のC以外には同年中に対応する調の教会ソナタは無し。いや、そもそも教会ソナタと同じ調のミサ曲が、他にはない、ですよね?
調だけに注目すればそうですが、作品表では、未完のミサ楽章が79/80年に一つずつありますけれど。。。
まあ、ゆっくり見て行きましょうか。。。

投稿: ken | 2007年9月 3日 (月) 22時59分

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