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2007年7月16日 (月)

家内のクラリネット

自分はヴァイオリンしか出来ませんし、それもたいした腕ではありません。
それでも、女房の弾くヴィオラよりは遥かにマシ、ではありました。
女房がヴィオラを弾く姿を見るのは、好きではありませんでした。
女房の演奏姿は、まるでロボットで、弓を上下させるたび、ヴィオラの音よりも体のあちこちの「ネジ」がギシ、ギシと鳴る音が聞こえる、という具合でした。
そうなんです、不死身のロボットのはずだった。。。

そのギシギシは、歩く時も同じで、いつも体がビッと枠にはまった感じで、足の動きも直線的で、しかも、<超速>ってな具合で・・・むしろそれが、なんだかいつも、かえってはかなく見えて、心配で、私がウツで休む羽目になってからは特に、でしたが、新婚当時、未だ土曜出勤だった彼女を見送る時も、その姿が無事に元気なまま視界に捉えきれなくなるまで、ずっと見ていなければ気が済みませんでした。

歌は、絶品でした。それは、前にも綴ったかも知れません。
プロポーズした前々日の晩がクリスマスコンサートで、彼女の背中から透き通って聞こえてきた「聖しこの夜」の声に、まるで磁石に引っ張られる釘のように、私はくっついて行ってしまったのでした。

ですが、彼女のヴィオラ演奏姿を見るのを嫌ったせいかどうか、もう一つやっていたはずの楽器、クラリネットは、とうとうその吹くところを見せてくれませんでした。
私も楽器があるのはずっと知っていましたが、遺品を整理するまで開けてもみませんでした。

「自分の全然分かっていない木管楽器を知らなければ!」
前回の演奏会の練習で思い知り、何をやろうとなった時、考えて、自然に選んだのがクラリネットでした。
そのときは、家内のクラリネットの存在は全く忘れたままでした。

仲間が教えてくれると言うので、下準備していて、
「もしかして、家内の楽器が使えるかも」
と思い、キーの塗装もはがれてしまっているようなその楽器を取り出して、鳴らしてみました。
無事に鳴ってくれました。
その結果、クラリネットの基本は、家内の楽器で教わって行くことになりました。

ま〜だ、指を一本も当てないで「ボー」と音を伸ばすだけ(開放音)です。
ヴァイオリンも、開放弦がきちんと鳴るところから練習を始めなければなりませんから、
「ああ、全く同じ方法で練習が進むんだな」
ということを初めて知りました。

ブラスバンドの顧問をしていても、自分の学校のバンドが賞をとることなんかより、響きが美しくなることを最優先に指導してきたのが、私の家内です。
新婚当初と、死去の数ヶ月前を含め、数度聴きに行きましたが、いい指導をしているなあ、と感心したものです。
だったら、クラリネットは、ヴィオラと違って巧く吹けていたのかもしれない。

真相は、僕を迎えにきてくれてからあとでないと分かりません。
寂しがりの僕が耐えきれなくって、他の人を見つけようなんてしたりしても、迎えにきてくれるかしらね。
(あてもないくせにこんなことを思っているのでは、しょうもないですけど。我が子たちより子供じみて寂しがりの僕には、「連れ」のいないこと以上につらいことはありません。かといって家内が生き返ってきたら・・・ちょっとコワい。)

ヤツにヴィオラの仇を取られないように、いい音が出せるようになりたいけれど、まずしばらくの間・・・下手すると一年くらいは、開放音を「ボー」と鳴らし続けるしか、僕には能がないかも知れません。

さあ、今日もこれから、「ボー」に取り組むこととするか。

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