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2007年6月18日 (月)

バイオリン製作で1、2位:チャイコフスキー国際コンクール

2007年6月16日に、JIROさんのブログに掲載され、またJIROさんからも直接おしえて頂きました。
こんな「大ニュース」が、新聞各紙に「小さく」報じられていたそうです。

いま、検索して見つけた山梨日々新聞の記事を引用します。

【モスクワ、ローマ13日共同】モスクワの第13回チャイコフスキー国際コンクールのバイオリン製作者部門で12日、名古屋市出身の菊田浩さん(45)が優勝した。2位には、大阪府枚方市出身の高橋明さん(36)が選ばれた。
 2人はストラディバリらバイオリン製作の巨匠を生んだイタリア・クレモナで学び、現在は同地の別々の工房で製作に取り組んでいる。
 菊田さんは、バイオリン製作の世界3大コンクールのうち、ポーランド西部ポズナニで昨年開かれた第11回ヘンリク・ビエニアフスキ国際バイオリン製作コンクールでも優勝しており、今回で「2冠」を手にした。
 名古屋市の実家で優勝を知った菊田さんは「(コンクールの)難易度が高いので信じられない。出品した楽器は、特別に作ったものではなく、いつもと同じ気持ちで作った」と話した。高橋さんはクレモナで「菊田さんは友人で、良い意味でのライバル。技術、音響面で相談し合う仲だ」と喜んだ。

なお、菊田さんのブログで知ったのですが、4位入賞も日本人の天野年員さんなのだそうです!
スゲエな!

入賞者のお一人、高橋さんが、上記JIROさんの記事にコメントもお寄せになっているので、お読み頂ければ幸いです。
僭越ながら私も高橋さん(楽しい、役に立つHPを作っていらっしゃいます)にメールを差し上げましたが、丁寧なご返事を頂戴しました。HPは「おすすめサイト・ブログ」にもリンクを常設しましたので、是非ご覧下さい。
「なお充実したHPにしていきます!」と仰っていらっしゃるけれど、楽器をお作りになる方がいっそうお忙しくなられて、ここまでの内容で止まっちゃうんじゃないかなあ・・・と、それだけが心配です。
大変価値のあるページだと思います。どうぞ、ご覧になって下さい。

菊田さんのヴァイオリンの写真掲載サイトも見つけました!
菊田さんのサイトは、こちら
これも、さっそく「常設」にしました!


「手仕事のニッポン」という本が、あったような、なかったような、遠い記憶があります(柳さんの本でしたね)。
私の家は、絶えましたけれど、塗師の家でしたので、「手仕事」という言葉には親しみとともに信仰にも似た気分を醸し出されます。
実際の日本の手仕事は、明治以降、工業化の推進とともにゆるゆると姿を消し始め、第二次世界大戦の敗戦で、ほぼ完全に消滅しました。残っているのは「文化を守ろう」という意識を守り続けた一部の地域だけでしょう。残った手仕事が、そんな高い意識のもと、正当な価値を今でも保っているのは、少しは喜ばしいことではあると思っております。ですが、一方で、「日常の中の手仕事」は、実はほとんど絶滅したのだ、という事実には、どれだけの視線がまっすぐに向けられているでしょう?
私自身、祖父が漆を塗っていた光景をかろうじて記憶しているだけで、漆を塗る工程については全く覚えておりません。なにせ、私の子供時分に塗師になる、などといったら「お金にならない」ので、とてもウンと言ってもらえる状況ではありませんでしたし、それ以前に、「塗師」という職を継がせること自体、祖父には念頭にありませんでしたから、孫が「手仕事の貴重さ」など、認識する余地は全くなかったといえます。
会社に入って、塗料のことも若干扱う必要が出たことがあって、そのとき、雑談で
「わたしんちは塗師の家だったんです」
と言ったら、意地悪な上司が、見るからに漆塗りではない椀を手に取って、
「じゃあ、これはどんな漆を使っているんだろうねえ。」
ときいてきました。漆以外に塗料の名前なんか知りませんでしたから、
「まあ、そこいらに生えているやつでもしぼってとったんじゃないですか?」
と、いい加減に答えました。・・・このころ盛んに使われていたのは、じつはウレタンです。
今でも、思い出すたび、あの上司は人間以下だ、と思っております。

まあ、私怨は、どうでもいいですね。

モノがたとえ外国由来であれ、日本人の丁寧な手仕事が認められた、ということは、今の世の中にとっては最もすばらしいニュースであるはずです。
悲しいのは、それを認めてくれるのは、「まず国内の人たち」であるべきはずなのに、順番が逆だ、ということです。
高橋さんのお話にありますが、報道陣は、チャイコフスキーコンクールに製作の審査部門があることを知らず、従って、審査過程の取材は全くなかった、ということです。
報道になくても、まあ、高橋さんのブログを拝読すれば、どういう過程でヴァイオリンを制作し、チェックを受け、コンクールに品物が向かい、審査を受けたか、はつぶさにわかります。新聞なんか読むより、よっぽど話がよく分かって、「ネットも、なかなかいいじゃねえか!」と思ってしまいました。

私自身、「楽器のことを知らずして良い音が出せるか!」と、何度も口を酸っぱくして叱られ続けてきましたけれど、正直言って、そう言われても楽器の作りについて知るためのチャンスはあまりありませんでした。ヴァイオリンで言えば、普通に出回っている本にはせいぜい「魂柱とバスバーで音が決まる」程度しか書いておらず、胴だけではない、指板やテールピースの寸法や高さ、駒の傾斜、糸巻きの滑らかさの度合い、顎宛の締まり具合までがどれだけ音の響きに関わるかは、学生時代にK先生が手作業するのを脇で見て、漠然とイメージで知った、と言う程度で何年も過ごしてきてしまいました。

菊田さん、高橋さん、天野さんの受賞をきっかけに、「本当の響き」とは何か、を日本人も本気で考える習慣が浸透していくようだったら、すばらしいのだけれどなあ。
この入賞(優勝と第2位・第4位)は、演奏のコンクールでの入賞よりも遥かに高い価値を持っていると思います。
ストラディヴァリだからいいんじゃない、グァルネリだからすばらしいんじゃない、その響きがいかに維持されてきたか、が大切なはずなのです。良い音の演奏と言うのが、製作やメンテのうえでの「音作り」に、いかに多くを負うているか、が、本来は最も重要なはずなのです。
こうした点を見直すことを通じて、ヴァイオリンに限らず、出来れば日本の伝統工芸に至るまで、その持っている本当に核心となる意義を再発見出来るだけの視野が、私たちにあたりまえに広がっていける日が来ることを、心から祈りたいと思います。

ちなみに、Yahooで検索したところ、ヴァイオリン製作のコンクールには以下のようなものもあるそうです。

チェコ共和国 ルビー国際ヴァイオリン製作コンクール
ヴィエニアフスキー国際ヴァイオリン製作コンクール
全イタリアヴァイオリン製作コンクールヴァイオリン部門
クレモナ国際ヴァイオリン製作コンクール(通称トリエンナーレ)
ドイツ・ミッテンバルト国際バイオリン製作コンクール
・・・まだまだ、あるんでしょうけれど、こんなところで。

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コメント

Kenさん、ご紹介いただき、ありがとうございます。
過分なお言葉、恐縮しております。

イタリア人にとって、バイオリン製作というのはまさしく漆塗り技法のようなもので、代々、師弟関係でのみ受け継がれていくものです。

自分がそういう流れの中で、手工バイオリンを作っているというのは少し不思議な気がしますが、あまり国籍にはとらわれずに(正直なところ、痛感させられる事も多いですが)、良い楽器を生み出すとともに、脈々と受け継がれてきた伝統を後世に伝えられたら嬉しいと思っています。

今回の受賞で、バイオリン製作という分野が少しでも世の中に広まれば嬉しいですし、こうしてブログでご紹介していただけることはとても光栄に思います。

今後とも、よろしくお願いいたします。
尚、リンクしていただいた直後で恐縮なのですが、アドレスを変更いたしましたので、よろしくお願いいたします。

では、失礼いたします。

投稿: 菊田 | 2007年6月21日 (木) 13時53分

菊田様、無理矢理呼んで頂いたような恰好で、恥じ入っております。大変にお心のこもったコメントに感激しております。
「国籍」や「民族」は複雑な歴史と現状があり、ご苦労も多いかお存じます。ほんとうは、そういったことを超えて、人間が「手でモノを作る・考える」意識を素直に共有出来るようになると、世界はもっと楽しいのかもしれませんね。
それにしても、菊田さんはじめ、高橋さん、手島さんのようにきちんと勉強し鍛錬なさったかたが仕上げた楽器で演奏出来るようになりたいです・・・いまのところ事情が赦さないのですが、将来必ずそんな夢を実現させたいと思います。。。その頃には、菊田さんの楽器は高嶺の花になってしまうかなあ・・・
饒舌になっている場合ではありませんでした。
心から御礼申し上げます。
なお、リンクは早速貼り変えました。一人でも多くの友人が見てくれると良いなあ、と思っております。

投稿: ken | 2007年6月21日 (木) 22時15分

菊田さんに先を越されてしまいましたが、私もおじゃましに来ました。JIROさんもそうですが、Kenさんも暖かいお言葉をかけていただいてうれしいです。
KenさんやJIROさんのこのような地道な活動が、やがて大きな花を咲かせることがくることだろうと確信しております。
我々も引き続きがんばっていきますので、Kenさんもがんばってくださいね。

投稿: 高橋 明 | 2007年6月23日 (土) 14時49分

高橋様、ありがとうございました! メールだけでも失礼した上に恐縮でしたのに。
天野さんのページだけはとうとう発見出来なかったのですが、菊田さん、高橋さんお二人の登場なさるページは探しまくって、いくつか拝読しました。菊田さんの(実際にどうかは当然存じ上げませんが)どちらかといえば普段は寡黙にコツコツ作業なさるのでは、という雰囲気と、高橋さんの「楽しめるものも楽しめないものも、どうせだから楽しんじゃえ」的雰囲気が、それぞれに個性的で、そのくせお二人とも「誠実」なお仕事ぶりに筋が通っていて・・・ああ、いいなあ! と、つくづく感じておりました。
などと、また僭越を語ってしまって恐縮です。
今の私の楽器は無名(ラベルはありますが、私には読めません)のナポリ製とのことで、もう一台はこちらはラベル無しですがイギリス製らしく、いずれも破格値でお世話頂いたものです。その前にはチェコ製のものなどで「これでお前の癖が直るから」と厚めの板の重い楽器を2年以上試奏させられたりしました。貧乏人がようやく精一杯の出費をして買えたくらいですから、それぞれ高級品、という類いのものではありませんが、音色にも音の張り・ハンドリングの良さにも満足しております。
どんな楽器を手にしても、
「ホント、ヴァイオリンにはもともと国境はないよなあ」
と実感していましたが、ずっと昔に頂いた日本人製のものだけは(当時名前が売れていたご老人の作で、名誉なことに直接頂いたものだったけれど)、構造をほんとに理解して作られたものではなく、
「日本人だとなんでダメなんだろう?」
と悲しく思っておりました。
だから・・・余計に、
「いや、日本人だからダメ、だったんじゃないんだ! 努力の違いだけだ!」
ということを、恥ずかしながらJIROさんのおかげで知ることが出来、実際にお二人やお二人に好感を持っていらした方の昔作ったHPも拝読しましたので、これから確信を持って人にも話していけることが、とても幸せです。
父子家庭ですので、子供が自立するまでは勝っても出来ません。なんとか早くガキどもに独り立ちしてもらって、私にゆとりができるころには、お二人の楽器は高嶺の花になってしまうのだろうから・・・とは菊田さんに頂いたコメントへのお返事にも綴りましたが、退職金をつぎ込めるだけ一生懸命働けばなんとかなるかな?
ですので、心置きなく、良い値段のつく(もちろん、真価としての、です)作品を作り続けて下さることを、切に祈念しております!
HPでのレクチャーの続きも、楽しみにしています!

ほんとうにありがとうございました。
・・・長くなってしまったことをお詫び申し上げます。

投稿: ken | 2007年6月23日 (土) 22時16分

Kenさん、こんにちは。
私のブログに書きましたけど、チャイコフスキーコンクールヴァイオリン「演奏」部門も日本人(神尾真由子さん)優勝の快挙です。

取り急ぎお知らせまで。

投稿: JIRO | 2007年6月30日 (土) 13時40分

JIROさんに先を越された!
で・・・この件は、お任せしました!
神尾さんなどについて詳しいことが見えてきたら、僕も何か綴るかもしれませんが。。。

http://ken-hongou.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/post_16b1.html

投稿: ken | 2007年7月 1日 (日) 22時38分

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