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2007年6月24日 (日)

チャップリンになりたい息子との会話

東京ムジークフロー第44回定期演奏会の、演奏の音はこちらで聴けます。併せて(私個人の偏った視点ではありますが)反省もお読み頂けますよう、お願い申し上げます。


チャイコフスキーコンクールヴァイオリン製作部門で優勝・第2位・第4位を獲得した菊田さん、高橋さん、天野さんについて紹介させて頂いた記事はこちら。菊田様・高橋様にコメントもお寄せ頂けました。「手仕事」の貴重な精神をお汲み取り頂ければ幸いです。情報を頂いたJIROさんに心から感謝申し上げます。

したいことがある。その本当の意味を人に伝えたい。でも、自分には伝えるだけの力がない。けれど、なお思いは強い。・・・誰にでも、そんな面があるのではないかと思います。で、こうした思いは、歳を取ってしまった人は忘れてしまっているけれど、結構早い時期に芽生え、芽生えが早いほど、どうすればいいかという手段を持ち合わせず、周りにどう伝えたらいいかで困ってしまう。そのまま「困った」状態で齢を重ねていくから、「伝えられないこと」は無意識化して目に見えない心の内側に隠れていってしまい、ダイエットでは減らせない「心脂肪」になったり、手術や放射線では切り取れない「精神腫瘍」になってしまったりします。
以下は、我が家の、十一歳の息子のケースです。
綴っておくに値する、と思いました。ただし私と会話したそのままでは一般化しにくい部分もあり、趣旨が変わらないように気をつけはしましたが、会話の内容そのものは変えています。
お役に・・・立たないかもしれませんが。

今朝、娘が修学旅行に出かけました。
息子の方は、昨日帰ってきました。入れ替わりです。
オーケストラの練習の日だし、娘がいると寿司屋に行けない(家内が寿司好きだったので、寿司を見ると母親を思い出すので入りたくないらしいのです)、「じゃあ、チャンスだから夜は二人でお寿司を食べようか」ということで、連れ立って出かけました。

昨夜は修学旅行での話は見た景色のこと以外何も話さなかった息子。
それも気になっていたので、電車に座っている間、質問をしました。それが会話のスタートです。Kは息子、Tが父親である私です。



T:で、夜は、お部屋でお友達とお話ししてたのかい?
K:うん。
T:楽しかった?
K:あんまり。
T:どうして?
K:「ボク、チャップリンになりたいんだ」って、いつも言うでしょ?
T:そうだよね。映画もいっぱい、DVDで勉強したし、自伝も読んでるよね。
K:でもね、そのことを話しても、みんな、ボクのことを笑うんだ。
T:チャップリンのことが面白いから、じゃないのかい?
K:そうじゃなくって、からかうんだ。「変なの!」って。
T:なにが変だ、って思うんだろう?
K:分からない。でも、たぶん、みんな、チャップリンのホントのことを知らないからだと思う。
T:Kは、どうしてチャップリンになりたいんだっけ?
K:チャップリンはさ、10歳でお父さんをなくして、お母さんは気が狂っちゃったでしょ?
T:(ヤバイ、ウチと逆だ!)・・・ああ、そうだったね。
K:それで、とっても苦しい思いもしたけど、映画でわざと、苦しかった自分のことをそのまんまお笑いにしたんだよね。
T:へえ、そうなのか。そこまでは、お父さんは知らなかったなあ。
K:自分は本当は苦しかったのに、それを人に見せて、笑ってもらえるようにするって、すごい、と思った。
T:お父さんも、それなら、そう思う。(・・・このへん、頼りない。)
K:もっとすごいのはさ、パロディってのをやったこと。でも、パロディ、ってなんだろう?
T:もともと出来あがったものとか人のしていることを、そうだなあ、大げさにまねしてみせることかなあ。
(いちおう、本当はパロディの意味はもっと広いんだ、ということまでは話さない。)
K:そうだよ、例えば「独裁者」でさ、ヒトラーのことを、誰よりも早くヒトラーの心の中までちゃんと分かって、それを大げさにして、世界中の人を笑わせた。(息子は一応、「独裁者」が上映に当たってアメリカからさえ過激分子として評価された時期があるなどの知識は持っています。それを前提として、彼はこの話をしています。)
T:人の変なところを、周りの誰も変だと思っていないうちに、発見しちゃったんだね。
K:そう、そんなに早く、変なところを見つけられるのもすごい。・・・ボクはなかなか出来ないなあ。
T:そうしようと思って勉強すれば出来るようになるんじゃないの?
K:でも、もう、ボク、社会勉強ばっかりしているようだよ。
T:そうか。お母さんが死んじゃって、お父さんとこうやってお出かけばっかりして・・・学校の勉強はさぼっちゃって!
K:学校の勉強もちゃんとやってるよ!
T:あれ、そうかい? それにしては、いつも、お父さんが帰ってもまだ宿題が終わってないじゃん。
K:そうだなあ。
T:かけ算や割り算がちゃんと出来なくっちゃ、お買い物も自分一人で出来るようにならない。漢字も宿題の書き取り練習を「やればいいんでしょ」ってだけでやってたら、そのうち言葉の意味がチャンと分からない人になってしまう。学校で習うことをいい加減にしていたら、だから、世の中のことを、人のどこが変なのかを、チャップリンみたいに「誰よりも早く見つける」なんて、出来るようにはなれないヨ。
K:まじめにやります。
T:まあ、まじめすぎなくってもいいんだけどね。普通にきちんと、は、やっておかなくっちゃ。
K:そうだね。
T:で、そうやって分かるようになったいろんな「変なところ」を、面白いお話に出来るようになるのが大事なのかな。
K:出来るかなあ。だって、自分だけ面白ければ良いんじゃなくって、みんなにそれが伝わらないと・・・
T:チャップリンのことじゃなくなるけどさあ、お父さんもお母さんも、子供の時は、本当は「音楽のお仕事が出来るようになればいいな」って思ってた。でも、いろいろあって、そうはできなかった。お母さんは、それでも「学校の先生になれば、歌うってこんなに楽しくってすばらしいんだよ、って、たくさんの人に伝えられる」と思った。幸せなのは、お母さんはそれが上手に出来たってこと。だから、お母さんのお葬式で、あんなにみんなが集まってくれて歌ってくれて(家内の授業を受けていた生徒さん全員が葬儀で合唱をしてくれました)、お母さん、ビックリしたけど嬉しかったんじゃないかな。で、お父さんはお父さんで、毎週、いまでもたくさんの人と一緒に音楽の勉強ができていて、伝えてもらえることもあるし、伝えたいことをお話しすることもできて、恵まれているとは思っているんだよ。
K:ふーん。
T:本当に「チャップリンになる」と思ってお仕事をすると、お父さんやお母さんよりは、大変なことがいっぱい出来てくると思う。いま、まだお父さんは上手にいえないけど。それでもね、お父さんもお母さんも幸せだったとは思うけど、大変でも本当にKが「チャップリンになる」って思っているんだったら、その夢をしっかりかなえる方が、ずっといいことだし、大切なことだ、とは思っている。
K:いま、友達に話しても、通じないのに。
T:だって、Kはまだ、「夢」のお話をしているだけで、夢を叶えるためにがんばっているところは誰にも見られていないんだもん。みんな、分からなくって当たり前だと思うけど、どうかな?
K:そうだね、がんばって、夢の通りになってみせれば、みんな分かるんだよね。
T:その通り。
K:じゃあ、面白い話を作れるようにならなくっちゃいけないけど。。。
T:大人用の本しかないけど、お話の作り方を書いた本ならお父さん知ってるよ。(「シナリオの書き方」の類い。小説の書き方みたいなものでは、この場合、だめなのであります。)
K:じゃあ、それ、読むよ!
T:大人の本だぜ! 難しいよ! 読めるのかなあ?
K:読めるさ!
T:分かった。じゃあ、買ってやる。
K:お願いね。
T:そのかわり、それ読んで、自分が失敗して毎日お父さんに怒られてることを、面白い話に作ってみなヨ! お父さんからの宿題!
K:なんだか嫌な宿題だなあ・・・
T:じゃあ、やめにするか。
K:いや、やってみよう! やります! やるから!

・・・という次第で、夕食前に本を探しにいって、息子の選んだ本を買ってやりましたが。。。
果たして、父の宿題をちゃんとやるかどうかは、彼自身のこれからの「まじめさ」にかかっておるわけでして。
半分は期待しないで、待っててみようかと思っております。

・・・お役に、立ちませんでしたか。お粗末様でした。

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