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2007年5月 3日 (木)

エルガー「海の情景」読み(概略)

私の所属する東京ムジークフローの定期演奏会について掲載しました。
ご招待の企画も(個人的に)しております。リンクご参照の上、是非おいで下さい。
(なお、すでにメール頂いている方については把握しております。メインPC復帰次第・・・GW明けになりますが・・・御礼をお出しします。当面の非礼、ご容赦下さいませ。)



この作品、Aさんの名訳と練習記号の関連を示せば、案外明快に構成をつかむことができます。
が、現在、作業環境がよろしくない(メインPC修理および新規導入準備中)ため、概略を示すにとどめ、詩と作品の対応関係の詳細は機会を別に設けます。

環境以外に詳細の別記を帰することにしたのには、これから述べる、エルガーの書法の特徴にも大きく関係しています。

管弦楽伴奏による歌曲は、エルガーがライバル視していたR.シュトラウスの「四つの最後の歌」などもあるのですが、エルガーの特徴を浮き彫りにするには、むしろマーラーの諸作品と対比したほうがわかりやすいかと思います。
マーラーは交響曲は別として、管弦楽伴奏歌曲も「さすらう若人の歌」・「子供の不思議な角笛」・「亡き子をしのぶ歌」などがありますが、共通して言えることは、これらの作品においては管弦楽が詩の意味を歌にまかせず自前で象徴して見せている、という点です。いわば、オーケストラが、歌の旋律では示しきれない詩の意味を補強しているわけです。(もっとも、フィッシャー=ディースカウの名唱の前では、マーラーのそのような意図は「余計なお世話」ではなかったのか、と思われることもありました。)

エルガーの書法は、そうではありません。
心情表現では、旋律と詩が密着しています。
では、管弦楽は何をしているか?

2つあります。

第1には、歌の旋律に、声以外の色合いを与える・・・すなわち、音のスペクトルを強調する用い方をしています。この役割は様々な楽器によって交替し合いつつ担われますが、中でも基調とされているのはクラリネットとホルンです。・・・この、歌の旋律をなぞる方法はウェーベルンの音色旋律とは似て非なるものであることには留意しなければなりません。エルガーの意図は、戦利tの色彩が万華鏡のように変転することは決して望んではいません。その証拠に、補強する管弦楽側では、旋律は非連続となっています。

第2には、ライトモチーフの活用により、5つの歌の連続性を確保しています。
第1曲は2つの主要モチーフのみによりまとめていますが、第2曲以下は、そのうちの第1モチーフを発展させた、各曲独自の新たなライトモチーフを芯にして仕上げています。ただし、第1モチーフを巧みに展開させていることが耳に明らかにわかるようになっているため、聞き手は全五曲の流れを、ごく自然なストーリー展開として把握することが容易です。
第1曲の主要ライトモチーフは(移動ドで示します)
・(上昇)ファラシレ(下降)ファミドラ:海面を見つめる私の心情
・ドーシ・シーラ・ラーシ・シレド;心の内に語りかけてくる無形の母性(気遣い無用の愛)
です。
第1曲の冒頭部は、第2モチーフ登場前までは「私」の独白ですので、注意を要します。第2モチーフ登場後、冒頭部と類似した再現がなされるのですが、こちらはもう独白ではない。内なる無形の母の、動じない愛の語り賭けを受けて、もう冒頭の孤独さからは脱し、自身の内面との語りかけが始まるのです。

以下、どの曲も冒頭部は第1モチーフの変容で始められることに着目して下さい。

第2曲は民謡風の、疑いの念を持たない愛を表した歌ですが、これは前曲の第2モチーフによる裏打ちがあるからこそ実現した歌唱です。
第3曲は、それが信仰にまで達し、途中で第2モチーフがより鮮明に登場することで、愛への私の確信を高めます(「パルジファル」を彷彿とさせます)。ただし、曲は決然と閉じられるものの、私は私と内なる母以外に、この海辺にはどんな他者も存在しないことを敏感に感じ取っており、果たしてまた孤独に閉じこもるかどうか、思案を始めることとなります。
第4曲で、私は試しに、内なる母からの冗談めかした脱出を試みます(これは詩を参照していただかなくてはなりません)。
その結果、第5曲の冒頭で、私は外海の激しい風雨の抵抗に直面し、衝突します。この衝突に私はどのような決着をつけるのでしょうか?・・・封切前の映画の「あらすじ」紹介みたいで恐縮ですが、この決着のつけ方が、作品最大のクライマックスでもあり、キーポイントでもあります。
そこはぜひ、演奏・鑑賞で「なるほど」とお感じになってみていただければと存じます。

取り急ぎ、概略のみにてご容赦下さい。

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