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2007年5月31日 (木)

モーツァルト 1774年作品概観

私の所属する東京ムジークフローの定期演奏会(6月16日、杉並公会堂)について掲載しました。リンクご参照の上、是非おいで下さい。
私たちの大切な友、Hさんの死を通じて考えたことは、こちらに綴りました。
昨年のHさんの名演を、こちらでお聴きになって下さい。
また、追悼のために、バッハのカンタータ「神の時はいとよき時かな」をもお聴き頂ければ幸いです。
ここまで読んできたモーツァルト作品の個々へのリンクを作成し直しました。ご利用下さい。

(西川尚生「モーツァルト」の作品表をもとに)

1772年分あたりから、追いかけるべき作品の確認のために、区切りの年にかかる事前準備として作品リストを作り始めてみたのですが、やってみると、そこには出回っている伝記類では伺えないモーツァルトの日常が隠れている気がしてきました。ですので、今回からはそうした点も付言していこうと思います。

その前に。
1773年の重要作の確認を、1つ落としていました。これも協奏曲類同様に初物だった、弦楽五重奏曲です。が、これはモーツァルトの音響観との兼ね合いで見ていくべき作品かと思いますので、すぐ見直すかどうかは検討します。

翌74年は、作品ジャンルに偏りが見られます。この年は暮れにミュンヘン旅行できた(新作オペラ上演のため)のが唯一のザルツブルク脱出で、それと大きく関わっているのでしょう。
ともあれ、この偏りからは、モーツァルトが司教・教会・宮廷に釘付けされることに甘んじたか、あるいは自ら行動を差し控えたか、といった背景が想定できるかもしれません。
モーツァルトは18歳になります。まだまだ父の監督下にあるとはいえ、自立心も相応に高まったでしょうし、翌々年以降から激しくなっていく「ザルツブルクを出たい、ザルツブルクでは不満だ」との心情の芽吹きも、この74年あたりがキーになって蠕動を始めたのではないか・・・少々私自身の思春期を重ね合わせてのイメージではありますが、そんなことを考えさせられます。

以下、リストです。

<宗教曲>
小クレドミサ ヘ長調K.192(6月24日)、ミサ・ブレヴィスニ長調K.194(8月8日)、またこの年かどうか不明ですが、「雀ミサ(シュパッツェンメッセ)」ハ長調K.220
ディキシットとマニフィカト ハ長調K.193(7月)
教会ソナタニ長調K.144・ヘ長調K.145

<オペラ>
「偽の女庭師」K.196(9月から翌年1月。ミュンヘンで初演。8作目のオペラ)

<歌曲>
フリーメーソン歌曲「いかに私は不幸なことか」K.147(1774-76.アイゼン説では1775-76)
ヨハネ分団の儀式の為の賛歌「おお、聖なる絆よ」(1774-76.アイゼン説では1773)

<交響曲>第28番については既に触れたので省略します。
第29番イ長調K.201(4月6日)、第30番ニ長調K.202(5月5日)

<セレナード>
ニ長調K.203&カッサシオンK.237(8月)

<協奏曲>
2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネ ハ長調K.179(5月31日)
ファゴット協奏曲 変ロ長調(6月9日)

<クラヴィア作品>
J.C.フィッシャーのメヌエットによる12の変奏曲 ハ長調K.179(12月6日以前)

<編曲>
父、レオポルト・モーツァルトのリタニア変ホ長調(欠番。アイゼン説による)

ばらばらでは分かりにくいのですが(元がばらばらだし、無精なので並べ替えも面倒だし)、春までは器楽作品に専心できる余地があったらしいものの、4月からは殆ど、教会や貴族の催し物への奉仕に腐心していたように見えます。
そんななか、父が知恵をつけたのでしょうか、9月あたりから、再びオペラ作者としてザルツブルクの外で活動する戦略を練り始めたもののようですが・・・これは徐々に見ていきましょう。いずれにせよ、このあたりは目を通した限りの(数少ない)伝記では殆ど触れられていない時期です。フリーメーソンとの関係が見えてくるのも興味深いところで、これについてはいくつかのコメントは拝読しましたが、なんだかよくわかりません。

面白そうな年だな。
この年の観察にのめりこんで、少し、自分も元気を出そうかな。
・・・などと思っております。

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コメント

74年といえばk201。やっと来ますね。もうとにかくこのシンフォニーがやたら好きでして。通勤中に何度となく聴いております。

投稿: ランスロット | 2007年6月 2日 (土) 18時31分

来るだろうと思っていました、このプレッシャーが。。。
課題としてはきつい29番。
ま、素人が楽しみでやっているのです、多少のことには目をつぶって下さいませ。m(__)m

投稿: ken | 2007年6月 2日 (土) 20時32分

プレッシャーついでにお勧めのCDなんかも教えていただければ幸いです。あっそれから、第1楽章の第1主題が繰り返された後の91小節目4拍目からの第一ヴァイオリンのメロディーが特に好きなのですが、あれは音楽的にはどういう意味をもつのか解れば教えて下さい。すいません。解説の趣旨に反するかな。コメント欄でもかまいません。

投稿: ランスロット | 2007年6月 3日 (日) 08時47分

うーん、バラを愛する人にも棘あり! (^^;
きつーい課題をばちょうだいしまして誠にもってありがつとうございます。
・・・こういう課題、でも、大好きです。
「おすすめ」は、ランスロットさんにお答えするなら「お好みに応じて」、しかないでしょうね。だって、「これ!」と限定するには、この曲をあまりに深く聴き込んできていらっしゃる。それで理想が満たされている演奏に巡り会っているのなら、それが最高ですし、会えていないのであれば・・・深入りした作品ほど、「理想」に限りなく近い演奏を見つけるのは困難になります。「理想だ」と思った相手と結婚して、えくぼがあばたになっていくようなもので、それにどう耐えられるか、ばかりが試練になっていきますから。。。本文を綴るときには、それでもいくつかあげてみましょう。聴き直しておいてみます。

それにしても、「91小節から云々」が、ランスロットさんの29番に対する「恋」を象徴的に物語っていますね! 「恋」に他人が立ち入るのはお邪魔ではないですか?
同時に「音楽的意味」というものが意味するものが何か、っていうのは、非常に難しい問いですね。
構造で言うならば、(29番では凄く小さいので目立ちませんが)展開部から再現部に至るために置いた<経過句(ただし、厳密には個々の楽句は第1主題の展開)>で、ただ機械的なものを置いてもつまらないから、既存の主題とは全く違う雰囲気になるものをわざと置いた、ということになります。常套手段です。・・・これは、「余計なお世話」を承知で綴っています。
じゃあ、なぜこの雰囲気を選んだか・・・というなら、「ここはパラダイスだけれど、自分は本当にここにいるんだろうか、錯覚だろうか」という迷いを曲の上に表すのが適切だ、と彼が考えたのではないかなあ、という気がします。
旋律線は人の発声を反映しているというマイナーな研究もあって(遠い昔に論文を読んだけどどっかへいってしまいました)、そのとおりだと思います。それに従いますと、最初のアウフタクトと延ばしは「アアー」という、これはなにか考えあぐねた時のため息(あきらめのため息とは違う)、そのあとの下降音型はちょっと考え事をしながら独り言を言っている時のイントネーションですかね。・・・どうでしょう?
この部分のすばらしさは、たしかに「展開部」から「再現部」へのブリッジにすぎない「構造」なんだけれど、修学旅行で「使っていいおこずかいは第二主題(1主題に付き千円としましょうか)二千円までねー」と言われた中学生が、あと千円を、「先生にばれない」ようにポケットに忍ばせていて、タイミングを盗み見ていてうまく使っちゃう(結局モーツァルト君は三千円つかっているわけで・・・ワルですね!)点ですね。エロイカの第一楽章が「展開部で第三主題を使った」などというよりよっぽど自然でいたずらっぽくて・・・甘酸っぱい。

お気に召すお答えになっているかしら。。。こんなの綴っちゃって、ボクはランスロットさんに「なあんだ」ってあきれられそうで、震えてます!

長くなりました!


投稿: ken | 2007年6月 3日 (日) 10時38分

「恋」ですか。うまく表現されますね。ひょっとしたらそうかも。ブリッジの説明わかりやすくて面白かったです。そのお茶目のさりげなさがモーツァルトの天才性なんでしょうね。解説も楽しみにしています。あとファゴット協奏曲もありますね。こちらのブログの第25弾 実は、これにしようか迷ったんです。さっそくのコメントありがとうございました。

投稿: ランスロット | 2007年6月 3日 (日) 17時57分

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