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2007年5月 8日 (火)

モーツァルト:16 のメヌエット K.176(1773)

私の所属する東京ムジークフローの定期演奏会について掲載しました。
ご招待の企画も(個人的に)しております。リンクご参照の上、是非おいで下さい。



1773年、協奏曲以外の器楽曲ではモーツァルトはあと2種、作曲しています。
内1つは4手のピアノのためのソナタですが、これは別途触れます。

今回は、この年の12月に書かれた、管弦楽のための「16のメヌエット」K..176について記します。

目にした中では、海老沢敏「モーツァルトの生涯」中に
「年末の舞踏会用の作品か?」
と推定が載せられていただけで、成立事情については他に触れた記事はありませんでした。
ただ、この作品の楽譜を収録したNMAのSerie IV BAND1(第13分冊)の解説には、1777年にモーツァルトがミュンヘンでの舞踏会に参加した様子を父宛に綴った書簡を抜粋して冒頭に掲げ、当時の貴族社会での舞踏会ばやり振りを愉快に垣間見せてくれています。この日、モーツァルトはたった4曲メヌエットを踊っただけでしたが、それでも部屋に帰った時刻は夜11時でした。
同じく1783年の書簡からの抜粋(これは有名なものですが)では、
「舞踏会は6時に始まり、7時に終わりました。たった1時間だったのか、ですって? いえいえ、終わったのは朝の7時なのです。」

なお、このメヌエット、第7曲から第11曲を除いた11曲分のクラヴィア用編曲も同時に残されており(K.103と似た事情からでしょう)、メヌエットが大きな会場でオーケストラの伴奏で踊られたばかりではなく、小部屋にクラヴィアさえあれば
「さあ、踊ろう!」
などということもしばしばあったのだろうと推測させてくれます。
でなければ、編曲なんか需要はなかったでしょうから。

ただ、これらのメヌエット、モーツァルトがセレナーデやシンフォニーの類に取り込んだメヌエットとは様相を異にしているように感じられます。
凝ったところが全くないわけではないのですが、たとえば転調もほんの部分的ですし、次に一覧でご覧に入れるように、小節数も随分と教科書的で・・・要するに、変則的なところ、個性を存分に盛り込んだ形跡、等はほとんど見受けません。
16曲の調性の配列も5度、3度、4度の上昇又は下降という、協和的で規則的、常識的なものであることは、下記の表から伺われるとおりです(すべて長調です。ドイツ語の大文字で表します)。
若干の作例については「こういう特徴がある」云々がNMAに記載されていますが、聴いてみれば、あるいは楽譜を眺めればすぐに気づくようなことばかりですので、省略します。

オーケストラの編成はオーボエ2(またはフルート2)、ファゴット1、トランペット2(またはホルン2)、弦楽器(ヴィオラが含まれていません!)です。ファゴットはバスと一緒に演奏するのが普通ですが、第9曲と第14曲目のトリオではソロを吹きますから、含まれていたことは間違いないと考えていいかと思います。
なお、オーボエの登場する曲ではフルートは使われず、トランペットの登場する曲ではホルンが使われません。フルート、トランペットが現れれる曲については、それぞれFl.、Trmp.と略号を付しますので、それ以外では木管はオーボエ、金管はホルンだ、というふうにご了解下さい。
数字は、小節数です。
なお、第3曲、第4曲、第7曲、第10曲にはTrioがありません。

1) D 16 & Trio 16 Trmp.
2) G 20 & Trio 16
3) Es 16
4) B 20
5) F 16 & Trio 16 Fl.
6) D 16 & Trio 16 Fl. Trmp.
7) A 18
8) C 16 & Trio 16 Trmp.
9) G 16 & Trio 16 Fl. (Fg.)
10) B 20
11) F 16 & Trio 16
12) D 16 & Trio 16
13) G 16 & Trio 16
14) C 16 & Trio 18
15) F 22 & Trio 16
16) D 16 & Trio 16 Trmp.

・・・こういうのは、モーツァルトにとって、単純に「やっつけ仕事」だったのでしょうか?
構造の単純さにとらわれると、そう思いたくなるところです。
が、まず顧客はセレナーデの類のような特定のパトロンだった可能性はどれくらいあったのでしょうか?
また、自分あるいは同僚の腕前を披露するための協奏曲やソナタ(シンフォニーを含む)は、おのずと演奏される場面も享受する側の態度も違いますから(協奏曲をバックに踊る、だなんてことを考えた人は・・・モダンバレエのバレリーナだったら別ですが・・・当時はいなかったはずでしょう?)、同列に考えたりすること自体、そもそもおかしなことですよね?
ですが、資料不足もあるとはいえ、舞曲類についてはモーツァルト作品も結構軽んじられている気がしないでもありません。もう少し、その生み出された社会的背景について、まとまった論考を目にしてみたいものだなあ、と思います。
が、風俗史専門でも、踊りの場をテーマにしている記述は、いまのところ西欧史関係ではフランス革命期のカーニヴァルに関するものしか見たことがありません・・・こちらは幸いドーミエの残した沢山の絵が残っていたりするから、研究しやすいのでしょうね。

ただ、自分の舞曲の扱いが軽かろうがどうだろうが、モーツァルト自身、まあ、文句はないのかもしれません。

なんともいえないところです。

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