« 『象さんの子守歌』:井上直幸 | トップページ | いのち »

2007年4月 8日 (日)

幻想

4543638000036「人は、人を信じなければならない」
いえ、人ごとのように言うのは正しい事ではなくて、
「自分は人を信じなければならない」
今は、私こそ、そう言わなければなりません。

悲しみ、怒り、憎しみ、恨み、報われない恋慕・・・まっすぐに人様を直視出来ない感情にとらわれているとき、自分の心は既に、自分そのものをも直視出来ない。

周りの人は、そんな人間に対しても、ほんとうはとてもやさしいのです。

「見上げなさい。枝々に生まれる、春の緑の初々しさを。」

積極的にそう言って下さる方もいます。

なので、試しに枝枝を見上げます。
緑が初々しいのは、現象としては確かに目に入ります。
ですが、心が見えない目でいる私には、所詮、それはそれだけのことです。
仰って下さっている事が、別に「現象」としての初々しい緑をさしているのではない、と、おそらく脳の一部は理解をしている。
でも、それ以上の広がりは、私の目までは脳からの指示が届かない。

そういうとき、既に自らが盲目に苦しみ、克服してきたベテランさんは、ただ関係のない冗談や、共通に楽しみに出来る将来を、ただ楽しげに話してくれます。

今日は、そのような来客があり、子供たちを交えて、時間をかけてゆっくりと楽しみをクレッシェンドして下さいました。私の盲目を、盲目のまま容認しておいて下さった。盲目の苦痛が、幾分和らいで、今夜を迎えることが出来ました。

電話や、こうした文字媒体は、そう言う点では、逆に短く、そっと、である方が効果的である事も分かりました。
そう、そのような電話も2つばかり頂けた。

今日は、ここまでがやっと分かった、ということで充分、と感じつつ眠りたいと思います。

実生活では感情障害で会話が意に任せない反動でしょう、ここでの私はどうしても饒舌です。

眠る前に、「盲目」を見事に描いた音楽作品を省みておきましょう。
緩やかなクレッシェンド、という意味で連想される有名曲ではありませんで、

ベルリオーズ「幻想交響曲」 :アンドレ・クリュイタンス/パリ音楽院管弦楽団
1964年5月10日 東京文化会館でのライヴ録音

脇道ですが、この録音、当時まだ珍しかったステレオでのライヴ録音であることにも意味があります。また、お気に入りの演奏が別にある方も沢山いらっしゃると思いますが、この録音の最大の特徴は、ライヴにしては会場の音をかなり豊かに拾っており、<演奏の第1音が鳴る一瞬前には既に音楽が聞こえる>という不思議な経験を、家にいながらにして出来る貴重品でもあります。・・・この演奏会当時は私はまだ幼児ですから、ナマは聴けたはずもなく、この録音を初めて耳にしたときには、大変悔しく思ったものでした。なお、私の持っているのはもう20年も前に出た旧盤ですので、上のリンクのCDのほうが、より良い状態で音が聴けるかも知れません。他にお気に入りがある方も、日本でなされた「幻想交響曲」の最高の名演として、一度耳にして頂く価値があると思います。

「幻想」そのものに、簡単に話を戻しておきましょう。

盲目となった自己の心、をこれほど見事に捉えた音楽は、後にも先にも皆無ではないでしょうか?
よく知られている通り、作曲者ベルリオーズがジュリエットを演じた人気女優に叶わぬ恋をした事がきっかけで生み出された作品でもあり、「標題交響曲」のハシリ、かつは最初にして最後の傑作として知られていますので、音楽全体が
<片思いから失恋、失恋による狂乱、狂乱による地獄行>
というストーリーのみを念頭に聴かれがちな作品でもあります。
(学生時代に小林研一郎さんの指揮で演奏しました。小林さんのお考えも当時からは変化している事とは思いますが、あの当時は小林さんの解釈も「現実」主義で一貫していました。)
いや、聴き方はそれで間違っている訳ではないのでしょう。作曲者の意図からも外れてはいないでしょう。
ただ、とらえるべき「恋」とは、あこがれの美しいひと、生身のそのひと、に対するものだけ、と考えるのでは狭すぎるのかもしれない、と思うようになりました。

私は、恋しています。一生抜け出せそうにない恋をしています。
それが故に、盲目です。
「幻想」の主人公と同じく、ひとときも苦しみから解放されず、「薬」のもたらす「安らぎの幻想」だけに頼って生きています。
ベルリオーズが、「幻想交響曲」を通して、
「お前はそのままでいいのかい?」
と、さっき、あらためて問いかけてきました。
(じつは、今日は音を聴いた訳ではありません。上のCDが机の脇においてあるのが目に入っただけなのです。)

「答えは、急がないからな」
・・・そうも言ってくれているのなら、ありがたいのですけれど。(22:22)

|

« 『象さんの子守歌』:井上直幸 | トップページ | いのち »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/95716/6020937

この記事へのトラックバック一覧です: 幻想:

« 『象さんの子守歌』:井上直幸 | トップページ | いのち »