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2007年4月10日 (火)

グリーク:ピアノ協奏曲、若干のポイント

許される時間も少なく(という割にいつも綴ってはいるのですが)、気持ちのゆとりも少ないままですが、グリークのピアノ協奏曲に付いて「合わせ」のポイントが分かりやすい対比サンプルを何とか用意出来ましたので、ご披露致します。

協奏曲でオーケストラとソロのタイミングが合わないと、指揮者のせいにされる事が多いですね。
ですが、ほんとうは、合わない演奏ほど、指揮者は合わせるための調整に四苦八苦しています。
「合わない」演奏の場合、「合わない」ことをどの程度解消出来ているか、に、指揮者の度量が大きく反映されていますし、
「あれ? この協奏曲の演奏、ソロとオーケストラがずれているのに、あんまり気にならないな!」
と評価を受けられさえすれば、指揮者としては充分名誉な事なのではないかと思います。

で、ここに用意するのは、残念ながら「指揮者が調整しきれなかった」ケースとと、大変素晴らしい事に、調整を感じさせないほどぴったり合っているケースの対比です。
リンクをクリックして音を聴いて比べてみて下さい。

第1楽章:Animato(31-)

〜とくにオーボエを聴いて下さい。 ピアノの伴奏としてはいるときに、明確に遅れています。ブレスの調整ミスです。また、ピアノに応答してメロディを吹く部分では、ピアノの歌うニュアンスと違う歌い方をしていて、気になります。記譜上は、オーボエの吹きかたでも間違いではないのですが、このオーボイストはピアニストの流儀を完全に読み損ねています。
・合っている例

第1楽章:練習記号Dへのつなぎ
トゥッティがピアノから音楽を受け取るときに躊躇している事が分かります。
・合っている例

第2楽章:練習記号Aの部分
〜伴奏にはいる弦楽器がどんどん遅れて行きます。こちらの演奏のピアニストは重めの響きを好んでいるのですが、それを「遅い」と誤解してしまっているために、このような現象が起きます。
・合っている例

第3楽章
・(ニュアンスが)合っていない例〜
ピアノ
のほうは「流れ」があるのに対し、
オーケストラ
は同じ主題の演奏をするときに音楽が停滞してしまっています。
第2楽章と同じ誤解に基づくものです。
・合っている例〜
ピアノ
オーケストラ

以上から伺われるように、「音楽が合う」協奏曲を演奏するには、
・オーケストラの個々のメンバーが、ピアニストの特徴、訴えたい音楽をキチンと理解出来ている事
・上記の理解を、オーケストラの中での自律的なアンサンブルでカヴァーしあえること
が非常に大切な要件となってきます。

この点、グリークの協奏曲は、構造が複雑でない分、オーケストラの出来がバレてしまう、非常に恐ろしい試金石でもあります。
どうぞ、よくご研究下さいますよう。

スコアを眺めて、ピアノと合わせるべき勘所はどこかをお探しになり、印をしておく事をお薦め致します。
また、ピアノの譜面が複雑で読み切れない場合、私は
「聴き覚え」
でピアノの主要な流れを各自がご記憶頂く事に
「そんな安易な!」
と申し上げるつもりは全くないどころか、むしろ推奨したい、とさえ考えております。
ただし、「聴き覚え」を選択なさる場合は、お財布がお許しになる限り数多くの演奏を聴き比べるのが望ましいと思います。最低でも3人の、タイプの全く異なるピアニストの演奏を選択なさるとよいと思います。
ちなみに、今回引用した「合っている」方の演奏は若き日のミケランジェリのもの。この演奏を指揮しているアルチュオ・ガリエラという人については残念ながら昔から詳しい事が知りたくても全く分からずにおりますが、協奏曲演奏にかけては右に出る者のいない名指揮者だと感じております。ミラノ歌劇場管弦楽団、と、ソリストから指揮者、オーケストラまでがイタリア人ぞろいなのに、見事に北欧の音がするのは大変な驚異です。ガリエラはグリークの協奏曲はリパッティとの共演でも遺しています。
合っていない方の例はクラウディオ・アラウがソリストです。オケはコンセルトゲボウ。指揮者は、若き日のドホナーニ。合わなかった原因は色々推測出来ますが、ひとつにはドホナーニにはアラウとの共演はこの当時(1960)にはまだ重荷に過ぎたでしょうし、コンセルトゲボウはアラウのようなタイプには慣れていなかった可能性も高いかと想像しております。

録音があるのかどうかわかりませんが、この二人と全く違う個性を、というのであれば、ルービンシュタインだろうなあ。。。
あるいは、リヒテル・アシュケナージ・コチシュなんかに録音があるのなら、この三人の対比にも興味があります。それぞれに発想が全く違いますから。まっすぐなリヒテル、知恵者のアシュケナージ、他者への許容度が極端に狭いコチシュ。コチシュのかわりに(コチシュとはむしろ対照的な傾向を多く持った人ですけれど、ぴあにズムというテンでは親近性がありますので)シフ、という選択肢もありそうな気がします。
・・・ただ、いま、どんな人がグリークのコンチェルトを録音しているのか、本当に全く知りませんので、勝手に並べてみました。ご容赦下さい。

いろいろお聴き比べになってのご感想も頂けると、参考になりますので嬉しいです。

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