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2007年1月 8日 (月)

ウイーン・リングアンサンブル in 松伏

2007年1月7日、埼玉県松伏町の田園ホールエローラで、素晴らしいニューイヤーコンサートを聴くことが出来ました。
演奏者は「ウイーン・リング・アンサンブル」。9人の変則的な編成から成る団体です。時々臨時に結成されるのか、主催の松伏町に意図があって大々的な宣伝を控えたのか、大変重要なことが、プログラムには記載されていませんでした。
このアンサンブル、全員が実はウィーン・フィルのトップクラス奏者です。楽器別に、ウィーン・フィルでの略歴を記すと、以下の通りです。

第1ヴァイオリン:ライナー・キュッヘル~1950生、1971入団。首席コンサートマスター
第2ヴァイオリン:エクハルト・ザイフェルト~1952生、1976入団、第1violin奏者(良く2プルト目で弾いていらっしゃいます)
ヴィオラ:ハインリヒ・コル~1951生、1983入団。ヴィオラ首席奏者
チェロ:ゲアハルト・イベラー~1958生、1988入団。キュッヘル氏、ザイフェルト氏、コル氏と共にウイーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団のメンバーとなっている。
コントラバス:アロイス・ポーシュ~1959生、1981入団。リスト上ではコントラバスパートの筆頭にお名前が記載されています。
フルート:ヴォルフガング・シュルツ~1946生、1973入団。リスト上ではフルートパートの筆頭にお名前が記載されています。
クラリネット:ペーター・シュミードル~1941生、1968入団。リスト上ではクラリネットパートの筆頭にお名前が記載されています。
クラリネット:ヨハン・ヒントラー~この方だけ、詳細を把握していませんが、同じパートにハンス・ヒントラーという方がいらっしゃり、その縁者かも知れません。
ホルン:ギュンター・ヘーグナー~1943生、1971入団。ホルン吹きの方には良く名前が知られているはずです。

コンサートは、
「ホールも楽器なんだなあ」
ということをよくよく感じさせてくれる、面白い立ち上がりでした。最初は、鳴りがこなれず、音が籠って響きが充分に拡がらない。それが、あまり立たないうちに曲中で次第に、まずはメンバー同士が共鳴し始め、次にメンバー全員を覆う紫雲のように漂い、そんな過程を経て初めて、客席まで音楽が伸びて届いてくるのです。これは、奏者がホールといかに付き合うか、を身につけようとしたら、恰好のヒントではあります。
次に嬉しかったのは、9人という選抜メンバーでありながら、ちゃーんとウィーン・フィルの音色がしたことでしょう。技術さえしっかりしていれば、厳密なアンサンブルをしようと無理な努力をする必要がない。ウイーン・フィルはそれを体現したオーケストラです。何十人いても、たった9人でも、同じ技術力、同じ精神で音楽をしているから、何も変わらない。したがって、批判的に物理的に聴けば、アインザッツなんかしょっちゅうズレます。が、実際問題として、音楽として聴く上では、ズレには何も支障が無いばかりでなく、むしろ響きに暖かみさえ加える点で歓迎すべきものでもあります。・・・みっともない、非音楽的なズレ、は、彼らのように音楽がすっかりしみ込んだ人達は絶対に起こしませんから。
もうひとつ、特筆すべきは、ここ25年ほどのフルオケでの正規のニューイヤーコンサートと違い、リングアンサンブルのニューイヤーコンサートには、ボスコフスキー時代のユーモアが随所に生きていたことです。
「ハンガリー万歳」でのラストの掛け声。
「観光列車」で車掌の帽子を被っておどけるフルート。
ワルツ「水彩画」に挟み込んだ、力強い足の踏み音。
アンコール2曲目の「ラデツキーマーチ」、トリオではフルートとクラリネットが、どちらかがヒマだと相手にちょっかいを出し合う。・・・近年のニューイヤーコンサートでは、絶えて見られなくなった光景です。これをみることの出来た人は、最高に幸せなはずです。

弦楽器が伴奏に回る際のキザミのリラックスしきった奏法は、日本の弦楽器奏者すべてに是非見せたい。日本のオケマンのキザミは、プロもアマも問わず、手首を固め、肘を固くしているので、響きが拡がりません。この点は一流奏者でもしばしば見せる欠点です。ウイーンの連中に学ぶ謙虚さが必要なのではないでしょうか?
弦とのバランスに、もう条件反射的に楽々と自分を抑えたり主張したりする感覚を備えている管楽器陣、またコントラバスも見事でした。ホルンは、「ウイーンの森の物語」で、たった一人で、ですよ! 近くで鳴る角笛が、だんだん遠くへコダマとして消えていく有り様を見事に描ききった吹きぶりでした。・・・ああ、こういうのを、いつも身近で聴くことが出来たら、奏者たちはもっと工夫をするんだろうなあ。。。

プログラムは以下の通り。
「こうもり」序曲
「芸術家の生涯」
ポルカ「アリス」(J.シュトラウス1世)
「ハンガリー万歳」
「ウイーンの森の物語」
ポルカ・シュネル「観光列車」
(休憩)
「天国と地獄」序曲(オッフェンバック)
「パニッツァ・グルーヴ!」(藤倉大)
「トリッチ・トラッチ・ポルカ」
ワルツ「水彩画」(ヨーゼフ・シュトラウス)
ワルツ「人生の電鈴」(ランナー):ヴァイオリン2、ヴィオラ、コントラバス
オペレッタ「ほほえみの国」メドレー(レハール)
「天国と地獄」~カンカン(オッフェンバック)
(アンコール)
「青きドナウ」
「ラデツキー行進曲」

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コメント

ウィーン・フィルの響き、聽けてよかつたですね。
うちの嫁はんが以前、ウイーン・リング・アンサンブルを聽いたことがあると云つてゐたのを思ひだしました。
記事を拜見して、私もぜひ一度聽いてみたいと思ひました。
「ボスコフスキー時代のユーモア」、いいなあ~

あ、さうさう、簡單で美味しい料理をひとつ傳授しますね。
キャベツを買つてきて、葉つぱのすきまにベーコンの薄切りを挾みます。
それを大きな鍋に入れて適當に煮ます。
(ニンジンや玉ネギを一緒に入れるとさらに旨いです)
煮たつた頃あひで、市販のブイヨン(小さなブロックになつたヤツ)を適量入れます。(味見をしながら量を加減してください)
キャベツが柔らかくなつたら出來上がりです。
食べる時は深皿にとつて、各自で鹽・胡椒で味付して食べます。
お好みで、粉ミルク(甘くないもの)を入れても美味しいです。
私が獨身時代によく食べてゐた、お手輕な料理ですが、成功する確率はかなり高いし、なにより面倒がなくてよいですよ~


投稿: 仙丈 | 2007年1月 8日 (月) 01時35分

kenさん


「ホールも楽器なんだなあ」
ということをよくよく感じさせてくれる、面白い立ち上がりでした。

これ、やっぱりそうですよね。
私もコンサートに行って、なんか最初は居心地が
悪いのが、だんだんとそこの場所の音に馴染んでくる
ことが多いです。

これが、私の脳内での聴覚調整(?)によるものなのか、
プレーヤーのその場での音響調整によるものなのか、
はてまたホール自体の物理的調整(スピーカーの
エージングに相当?)によるものなのかわかりませんが、
私はずっとこの感覚を抱いておりました。

ですが、そのことを裏づけしてくれる意見には
今まで会ったことがなかったので、この記述を
読んで嬉しく思った次第です。

それでは!

投稿: イワン | 2007年1月 8日 (月) 11時27分

リング・アンサンブル、一昨年だったかにサントリーで聴きましたよ。まあなんつうか、「これで不満があったら貴方はウインナ・ワルツとは一生縁がない」と言って差し上げても過言ではない、というような印象です。まさに堪能しました。リーダーのキュッヒル氏は奥さんが日本人で、ご本人も日本語が堪能なこともあって、毎年お正月にこのアンサンブルで来日しているようです。

開演前の全日空ホテルのラウンジに織田無道がいて、休憩時間にドクター中松をみかけました。

投稿: キンキン@ダイコク堂 | 2007年1月 8日 (月) 16時54分

それから「ホールも楽器」のご意見、私もピアノのリサイタルなんかでよく感じます。休憩をはさんだ前半後半でまったく印象が違いますね。いくつか理由があって、

(1)聴いているこっちの意識が会場に慣れた
(2)弾いている演奏者の意識が会場に慣れた
(3)前半を終えて楽器が馴染んだ(含:再調律)

という3つの要素が絡まり合っているんだと考えています。

(1)は、会場に至るアクセス手段が地下鉄だったりすると露骨ですね。ゴーゴーとやかましい環境に耳が慣れて、閾値が上がってしまうんでしょうか。それに、移動で体が疲れてますからね。

(2)については休憩中に演奏者が気持を切り替えるので、そのときに会場の音響に調和するんじゃないかと思います。やはり、響きを自分の呼吸にする(いわゆる「間」をつかむ)には時間が掛かるのでしょう。どんなにリハをやっても、客が入ると全然響きが違いますからね。それに、その日の客の質とかは演奏しているとよく分かるそうなので、相乗効果があるんでしょう。いわゆる「乗ってくる」というヤツですね。

(3)については、裏方やってるときに見てますと、開場の直前までがんがん練習しているピアニストだと前半と後半であまり音が変わらない場合もあります。前半にはもう最大のポテンシャル出してるんでしょう。ただし、こっちもリハのときから聴いているので単純比較はできないですが。。。

投稿: キンキン@ダイコク堂 | 2007年1月 8日 (月) 17時11分

仙丈さん(お料理の伝授つき!)、イワンさん、キンキンさん、たのしいコメントありがとうございます。
それぞれに触発もされ、詳しくお話したいこともありますが、取り急ぎ御礼のみです。
一点、アマチュアながら弾き手の立場での感想を簡単に言いますと、本番前のカラの客席と本番中の人のいる客席とでは・・・考えてみれば当たり前なのですが・・・反響が全く違います。いい演奏家は、本番でその違いを認識するのが早く、響きの設計を本番用に変えるのも上手いように感じております。リングアンサンブルの面々の奏法は、この点じつに理にかなっていて、なんといいますか、自分も楽器もいい具合にリラックスさせていくんです。見た目が、とても楽しかった!家内も喜んで聴いたでしょう!!

投稿: ken | 2007年1月 8日 (月) 22時45分

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