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2006年10月 2日 (月)

Mozart:16歳の傑作交響曲群

1772年、イタリアへ最後の旅をする前のモーツァルトには、有名なK.136〜K.138を含む素晴らしい<機会音楽>もあります。ですが、それらより前に、同じ期間に書かれた交響曲を、ざっと見ておくことにしましょう。

これらは、第16番・17番を除き、4楽章構成のウィーン風交響曲です。
ただし、J.ハイドンの影響を受けた、と考えるのは、この時点ではまだ妥当ではありません。

8曲作られた交響曲の中でもっとも有名なのは第21番イ長調K.134です。ドーミソド・ド・|ドーシで始まる第1楽章の晴れやかさは、これ以前のモーツァルトにはなかったものですが、以後は初期弦楽四重奏曲(やはり1772-3年の作品)にも引き継がれ、16歳の新境地を特徴づけています。
また、この一群の交響曲を特徴づけるのは、緩徐楽章の素晴らしさです。テーマに半音階進行的なひねりを加えた15番、カノンを取り入れた16番、後半部に物悲しさを見せる17番・・・いずれも捨てがたい魅力に満ちています。とくに第17番のアンダンテは昔ラジオ番組のテーマに使われたこともあるはずの、有名な曲です(ミーーーソファミレ|ドという主題)。

謎めいた側面も持っています。モーツァルトは生涯あれほど
「フルートは嫌い」
と公言してはばからなかったのに、この年の交響曲はフルートの美しいものが多いのです。第18番、第9番、第20番、第21番の4曲ありますが、どれもフルートパートは非常に生き生きしています。ザルツブルクにはこの頃フルートの名手がいたのでしょうか? 詳しく伝記を調べてみないと分かりませんね。

第15番ト長調K.124:2Ob,2Hr,弦五部(2月21日)
1.Allegro (3/4) 111小節、ソナタ形式への途上にある3部形式
2. Andante(2/4) 56小節(ハ長調)、2部形式
3.Menuetto(28小節)& Trio(24小節)
4.Presto(2/4)131小節 ロンド形式

第16番ハ長調K.128:2Ob,2Hr,弦五部(5月)
1. Allegro maestoso(3/4)137小節、ソナタ形式への途上にある3部形式
2. Andante grazioso(2/4)67小節(ト長調)、2部形式。弦のみ
3. Allegro(6/8)105小節、ロンド形式

第17番ト長調K.129:2Ob,2Hr,弦五部(5月)
1.Allegro(4/4)114小節、ソナタ形式(展開部は第1主題の素材による)
2. Andante (2/4)73小節、2部形式
3. Allegro(3/8)192小節。いわゆる「天国的なロンド」の走りです。
・・・この作品は1772年より前に取りかかられ、この年完成させたもののようです。

第18番へ長調K.130:2Fl,4Hr,弦五部(5月)
・・・モーツァルトにはめずらしい、ハイC(ハイシー、じゃなくて、ハイツェー、と読んで下さいね!)のホルンを1、2番に使っています。(ハイドンに比べ、モーツァルトはハイトーンのホルンをあまり使っていないそうです。)4本のホルンを用いたのはこれが初めてで、ヘ長調という調性も交響曲ではこれで3曲目、かつ最後となる珍しいものです。
1. Allegro(4/4)132小節、ソナタ形式(展開部は第1主題の素材による)
2. Andantino grazioso(3/8)120小節、コーダ付の2部形式
3. Menuetto(16小節) & Trio(21小節)
4. Molto Allegro(4/4)196小節、ソナタ形式でしょう。84〜106小節が展開部です。

第9番ハ長調K.73: 2Ob(2Fl),2Hr,2Trmp,弦五部(おそらく初夏)
(1769-1770作とも言われている)
1.Allegro(4/4)105小節、ソナタ形式への途上にある3部形式
2. Andante(2/4)51小節、単一主題の三部形式(ヘ長調)
3.Menuetto(24小節) &  Trio(21小節)
4. Molto allegro(2/4)176小節、ロンド形式

第19番変ホ長調K.132:2Ob,2Hr,弦五部(7月)
オペラの序曲風にきこえますが、ウィーン風の4楽章構成です。
これもハイ Esのホルンを1番に用いています。
1. Allegro(4/4)148小節、ソナタ形式(反復記号なし。展開部は60〜89小節)
2.Andante(3/8)151小節(変ロ長調)、複合三部形式
・・・異稿あり(56小節、2部形式)。
3.Menuetto(40小節) &  Trio(28小節)
4. Allegro(2/2)139小節、ロンド形式

第20番ニ長調K.133:2Ob(第2楽章でFlに持ち替え),2Hr,弦五部(7月)
1. Allegro(4/4)182小節、ソナタ形式
・・・ちょっと変わったソナタ形式で、展開部と再現部の切れ目が明確ではありません。第1主題の型通りの再現はなく、126小節から第2主題が再現されます。
2.Andante(2/4)103小節(イ長調)、コーダ付の三部形式
3. Menuetto(28小節)& Trio(30小節)
4. Allegro(12/8)100小節、ソナタ形式

第21番イ長調K.134:2Fl,2Hr,弦五部(8月)
これも高い音のホルンですね。29番と同じです。
1. Allegro(3/4)173小節、コーダ付のソナタ形式(初、です。)
2. Andante(2/4)、73小節(ニ長調)、コーダ付の三部形式
3.Menuetto(30小節)& Trio(28小節)
4. Allegro(2/2)141小節、ロンドソナタ形式でしょう。コーダ有り。

スコアはベーレンライター版交響曲全曲スコアの1(第9番),2(第15番),3に分散しています(ベーレンライター社のサイトでは第3巻しか出てきませんでした)。NMA(ありゃ、まだ在庫があるんだ!)でも3セクションに別れての収録ですが、第11分冊1冊の中で全て見ることが出来ます。
9番と15〜19番はシモーネ指揮イ・ソリスティ・ヴェネティのCDが格安です。21番はベーム/ベルリンフィルの単独盤に入っていたと思いますが、20番は記憶していません。いま、Web上では見つけられませんでした。最近、アーノンクールによる初期交響曲集がまとまりましたが、こちらには9,15〜21番すべてが収録されています。9番の一部はリンク先のサイトで試聴できます。

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