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2006年9月27日 (水)

Mozart:C.バッハのソナタ編曲K.107-1772年

ヴォルフガングが自分自身の協奏曲を作るのは翌1773年からです。他のジャンルに比べるとだいぶ遅い感じがしますけれど、彼らしいソナタの作曲がもっと後、1775年(19歳のとき)からであることも視野に入れると、決して遅いわけではないことが分かります。
いったい、協奏曲やソナタは音楽家が自らの技巧を華麗に披露するためのジャンルであり、その伝統は19世紀に入ってもパガニーニやヴィニャエフスキーのヴァイオリン協奏曲、リストショパンのピアノソナタに受け継がれていくのです。
ヴォルフガングが16歳になるまで、レオポルドはその手の作品を息子に書かせませんでした。息子の自立を考える親として、期が充分に熟し、技巧も精神も自立に必要なだけの準備が整うまで待つ、というのは当然ではなかったかと思います。

K.107は、ヴォルフガングが敬愛してやまなかったクリスチャン・バッハのクラヴィアソナタ3曲(作品5の2,3,4)を協奏曲に仕立て直したものです。単なる編曲ではなく、協奏曲らしい体裁を整えるために様々な工夫をしています。
工夫の基本は次の3点かと思います。

1)第1楽章第1主題呈示部を序奏として、独奏呈示部の前に付加する
2)楽章中間部・緩徐楽章は独奏と合奏の「会話」をこころがける
3)各楽章には原則として独自に創作したコーダを加える

以上をこなすだけでも・・・とくに独自の創作部分がオリジナルとごく自然に接続するためには・・・原曲に対する相当な理解が必要です(和声、主題構造)。ヴォルフガングはこの課題を、クリスチャン・バッハの音楽世界にきちんと入り込んだ上で、そつなくやり遂げています。
上記3点を除いた主な工夫は、各曲で以下の通りです(、第1番第1楽章[たまたま事例がありませんが]を除き、耳での確認です)。
なお、オーケストラはヴィオラを除く弦楽器です。

第1番ニ長調(3楽章)
(第2楽章)
*平板さを避けるため55・56小節に2小節を付加
*対話強調のため57-60小節をオクターヴ上に

第2番ト長調(2楽章)
(第2楽章)
*原曲の第1,第2変奏を順番変更(逆転)
*原曲の第5変奏を省略(冗長さ回避)

第3番変ホ長調(2楽章)
(第1楽章)
*103-106、右手声部をヴァイオリンに移動〜会話

スコアはNMAペーパーバック版には収録されていません。
Baerenreiterのピアノ協奏曲全曲(3冊)の第3分冊にあります。

CDは、BRILLANT "Mozart Piano Concertos"(11枚組)の1枚目に、クリスチャン・バッハのソナタ原曲と共に収録されていますが、協奏曲はチェンバロに各パート1人という、トリオソナタにヴァイオリン1本を加えたような演奏です。また、オリジナルのソナタはクラヴィコードで演奏されています。
1枚ものでも出ています。ピアノで弾いていますから、こちらのほうがいいかもしれません。ただし、クリスチャンの原曲は入っていません。

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