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2006年9月18日 (月)

Mozart:宗教音楽1772年

1772年に作曲された宗教曲は、前に触れた4つのキリエ(未完2・完成2)の他に大作2作品があります。

・リタニア変ロ長調K.125(3月)
・レジナ・チェリ変ロ長調K.127(5月)

作曲時期は自筆譜によって確認出来ています。

同じ調であることからも伺える通り、作風はよく似ており、この年5月以降に作られるシンフォニー、並びに翌年以降のザルツブルクでの諸作品の響きを予見させるものがあります。
音楽としてすわりが良いのは先に作られたリタニアの方です。
5月作曲のレジナ・チェリは、この頃対位法の学習に凝っていたためか、カノン的なものを含むポリフォニックな応答を頻繁に取り入れ、楽譜を見ている分には面白いものの、3楽章しかないにもかかわらず聴くには飽きがくる仕上がりだなあ、と、私は感じます。

リタニアK.125には、幾つかの面白い特徴があります。その構成を見ながら触れておこうと思います。
(編成はOb2[Fl2]、Hr2、Trmp2、ヴィオラを含む弦五部。
1.Kyrie-4/4拍子、Molt allegro(22小節):Adagio(6小節、ここから合唱):Molt allegro(88小節)
 〜おおむねホモフォニックな合唱で、祝祭的です。
2.Panis vivus-3/4拍子(OboeはFluteに持ち替えられる)、Andante、107小節
 〜ヘ長調のソプラノのソロ。97-98小節のヴァイオリンには
  有名なK.136の第2楽章に出てくるのと同じ動きがあります。

3.Verbum caro factum-4/4拍子、Adagio、9小節
 〜ニ短調(教会調のドリア、と言った方がいい)の、
  短いながら荘厳な合唱。
  レクイエムK.626の原型となるような、分散和音の伴奏です。
4.Hostia sancta-4/4拍子、Molto allegro、101小節、変ロ長調
 〜S,A,T,Bの独唱と合唱が交錯します。アタッカでTremendumに続きます。
5.Tremendum-4/4拍子、Adagio(9小節、ト短調)、Allegro(10小節、変ロ長調)
 〜ト短調部分はTremendumの言葉が割り当てられており、
  これもレクイエム、ないしはドン=ジョヴァンニの
  原型と見なすことが出来そうです

6.Panis omnipotentia-3/4拍子、Andante、112小節
 〜テノールのソロ。56小節を境として2部構成であると見ていいでしょう。
  2曲目とともに、技巧的な唱法を要する部分は限られています。
7.Viaticum-4/4拍子、Adagio、14小節
 〜変ロ短調という複雑な調は、Wolfgangの作品には非常に珍しいものです。
  歌詞の表す人間の複雑微妙な思いを調性で表現しようと
  したものでしょう。
8.Pignus-2/5拍子、速度表示なし。180小節
 〜この作品中、最も長い合唱曲。対位法的な応答処理が目立ちます。
  ここにクライマックスを配したと思われます。
  演劇理論、旋律論などが要求するクライマックスの位置に
  即しています

9.Agnus Dei-4/4拍子、Un poco adagio(ソプラノソロ)48小節、
 続いて変ロ長調の合唱が19小節。
 静かに終わるのではなく、フォルテでの"miserere nobis"
 で締めくくられます。
 〜ソプラノソロは当作品中最も華麗で技巧的です。
  合唱がフォルテで終わるのは、冒頭とのキリエの気分統一のため。
  しかし、テンポにより敬虔な祈りを表現しています。
  
レジナ・チェリK.127でも、第2楽章ではオーボエがフルートに持ち替えられます。
脇道にそれますけれど、先日「ヴェトナムの雅楽」の映像を見ていたら、管楽器を担当する人がオーボエ系の楽器(シャルマイか?)から横笛に持ち替えていました。西欧で見られるオーボエとフルートの持ち替えも、ヴェトナムのそれも、起源は同じなのかな? 面白く感じました。
1.Allegro maestoso、4/4拍子、84小節
 〜Allelujaをフォルテピアノで歌う工夫が面白い曲です。
2.Andante、3/4拍子(92小節):Adagio、4/4拍子、42小節
 〜ソプラノソロと合唱が交錯します。
  独唱部はミヒャエル・ハイドン夫人のマリア・マグダレーナが初演。
3.Allegro、3/8拍子。182小節。Wolfgangが前年までに作曲したイタリア風シンフォニアのロンドを踏襲しています。終結部が紋切り型なのは、やむを得ないのでしょうか?
 〜これもソプラノソロと合唱が交錯します。

スコアは新全集の他、Carus 40.055/07(K.125. ISMN M-007-08745-6)、同40.048/07(K.127他。ISMN M-007-08735-7)が新しく出版されています。
CDは相変わらず、全集盤に収録されたものしか見当たりません。

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