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2006年9月30日 (土)

Shostakovich :3万4千人の黙せる声の為の怒りの音楽

上演前の記事はこちら

Yevtushenkoreading

本文記載の前にお断りしておきます。本記事はいかなる政治的意図や思想に偏するものでもなく、「詩そのもの・音楽そのもの」による「平和の訴え」だと感じております。記事の最後の皮肉な文面が、記者の姿勢を明確に物語っています。この点ご留意下さいますよう、心からお願い申し上げます。(前記事に引き続き、語学音痴による俄か訳です。誤訳ご容赦頂きますとともに、疑わしい点はオリジナル記事を参照下さるようお勧め致します。)
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NewYorkTimes Web 2006年9月29日掲載

3万4千人の黙せる声の為の怒りの音楽
(リンク先はオリジナル記事)

2001年9月11日テロ攻撃に対して示された音楽界の反応は、クラシック音楽はもはや同時代の悲劇に対して影響力も表現力も無くしてしまった、という印象を残したままです。しかしこれは、こんにちの作曲家が実利と癒しを指向しているせいなのでしょう。

1962年に作曲されたショスタコーヴィチ交響曲第13番(「バービイ・ヤール」)は、異なったケースを示しています。その総譜は、暗くて辛辣で、イェフトゥシェンコの激しい怒りをうたった詩の上に築かれていますが、詩の内容はナチが1941年9月29日から30日にかけ、キエフ近郊の谷間で約三万四千人のユダヤ人を銃弾にさらした虐殺をテーマとしたものです。而して、音楽はいまも(ショスタコーヴィチの作品の大部分がそうであるように)狂気と痛みの昇華をしっかり握りしめ続けているのです。

ユダヤ伝承博物館はバビ・ヤール虐殺65周年を「バービイ・ヤール回想:イェフトゥシェンコとショスタコーヴィチの詩と音楽」を催して追悼しました。イェフトゥシェンコ氏は自作のいくつもの詩の朗読で出演し、「バービイ・ヤール」を、ロシア語版と英語版を切れ目無く行き来しながら、熱をこめて活き活きと読み上げることから始めました。氏はさらに「I would like」を朗読しましたが、これはパスポートや人為的な境界のない世界についてのインターナショナリスト的ヴィジョンをうたったものです。さらに2つの詩がアンコールされましたが、そのうち「バビ(バービイ)・ヤールと名付けられた少年」は理想を描きながら力強くもある、夢への言及です。(註:「バビ・ヤールと名付けられた少年」については上演前の記事を参照)

夜の音楽の部はオール・ショスタコーヴィチプログラムでしたが、MishaとCipaのDichter夫妻の、リズムに厳格で激烈な奏法による「2台のピアノのための協奏曲作品94」演奏で幕を開けました。夫君の方は、明るくしなやかな声のバス歌手Valentin Peytchnovが「プーシキンの詩によるモノローグ作品91」を歌うのを伴奏しました。プーシキンの詩は、慎重で、沈みがちで、落ち着かないユダヤ人世帯を描いたものです。

メインの音楽は、バービイ・ヤール交響曲第1楽章の2台ピアノ版でした。これはショスタコーヴィチがフルスコアでの初演に先立ちソヴィエト当局の検閲に供するために準備したものです。この版は、当然のことながら、ピアノでの演奏にむけて作品の色彩が減らされていますし、管弦楽版に代えて聴かれなければならない理由はまったくありません。それでも、Patrick Gardnerは、Dichter夫妻の逞しくてときに火を吹くような演奏と、Riverside Choral SocietyならびにKirkpatrick ChoirおよびRutgers大学グリークラブの支えをガッチリと受け、輝くような上演を指揮し遂げました。

この記念祭はバービイ・ヤール記念碑とはかけはなれた場所でなされたからでしょうか、ショスタコーヴィチ生誕百年祭関係のニュースにはなりませんでした。そのうえ、プログラム冊子にリンカーンセンターのチラシを挟み込んでいましたが、これは来月のヴァレリー・ゲルギエフのショスタコーヴィチ交響曲チクルスの宣伝でした。チラシの文句は遺憾で不適切で、こんな具合です。
「『バービイ・ヤール』体験の再チャンスですヨ!」
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記事中言及されているプーシキンの詩をご紹介しようかと思ったところ、楽譜とテキストが出せないところにしまい込んであることに気づき断念しました。。。
「馬鹿者めが!」
「Hey Maido, don't let me down...」

10月1日付記:
ふるたこさんから「バビ・ヤール」の「バビ」は「バービイ」とした方が原発音に近い旨、ご教示頂きましたので、本記事の該当箇所を修正をしたことをご報告しますとともに、心から御礼申し上げます。

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