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2006年9月21日 (木)

森麻季さん賛美に思う

10月28日付記)
恐縮ですが、まだこちらを初めてご覧になって下さっている方にお願いです。森麻季さん関係は、そろそろ下記駄文よりも、こちらをお読み頂ければ幸いです。
駄文に変わりはないけれど。

下記に追加:印象に残った、森さん関係のブログ記事
涙のアリア /6*6
ソプラノ歌手森麻季さんってすごい
森麻季さん

森麻季さんが素晴らしい、というブログの記事を何度も拝見しました。綴った方の素直な感嘆振りが伝わってきて好感を持ち、とうとうCDも聴いて、彼女の技術力と声の美しさに打たれもしました・・・これだけ努力を実らせた優秀な歌姫がどんどん熟成していくのであれば、声の質と歌いぶりからみて間違いなく、たとえばグルヴェローヴァのような超一流の域に達することが出来るでしょう(ちなみに、不調のときのグルヴェローヴァより、おそらく疲れをうまくカヴァーして歌っているカーネギーホールでの森さんの方が、はるかに音程も声の当たりも良いです)。

一方で、「待てヨ」という気にもさせられました。
森さんは幾多の国際コンクールで入賞したから凄いのか? 世界的な名歌手に認められたから凄いのか? はたまたカーネギーホールでコンサートを開き、それがCD化されたから凄いのか?
記事を綴られたJIROさんは、もちろん「感心した本当の理由はそんなことではない」ことによく留意されて綴っておられるのですから、あれこれ考える必要もないのでしょう。

しかしとにかく、私も愛好家の一人として、名声への予感だけに気をとられて「素晴らしい」などと単純に思い込むのは、侘しくてなりませんでした。

海外の有名オペラ劇場に出られるということや、それなりのレーベルからCDが出るということは、コマーシャリズムに乗って安心した活動が出来る第一歩かもしれません。とはいえ、そこでコケた人も決して少なくありません(クラシックに限りませんネ)。
なおかつ、<クラシック>と括られる音楽ジャンルは、日本で、あるいは日本人演奏家にとって、充分に一般の人々の支持を集めているとは考えられません。ふだん民間会社で接する人たちの多くが、<クラシック>音楽というだけで、
「しゃれていてあこがれるけれど、首を突っ込む度胸はない」
等々、熱愛とは程遠い心理で接しているのが現実です。

職業で<クラシック>をやる人たちには、「市場をひろげる」ことに懸命な人もいれば、「足場固めのために質を追求する」人も大勢います。いずれにも、それなりに支援者が沢山いる。
ただ、<クラシック>に携わる人、それを支援する人に欠けがちなのは、
「聴衆の心の底を掴む」
ことへの積極的な試行錯誤ではないか、という気がしてなりません。
間違っているでしょうか?

この点、最近嬉しかったのは<大阪クラシック>の試みです。
タダ、あるいはタダに近い報酬で、街角のあちこちで誰にでもクラシックを聴いてみてくださいヨと訴えた
「浪速の心意気」
的発想は、見事に大きな果実を手にして幕を閉じたようです。
それでも、ブログを漁って幾つもの反応を読んでみると、お客の立場で接した人の感想は
「なんてったってクラシックだからな」
調の表現が、まだまだ半数以上を占めるのです。では、聴いた音楽に対してはどのように心を打たれたのか・・・そこまで言及した文には殆ど出会えませんでした。

20年程前、『寄席芸人傳』という漫画がありました。どこまでがフィクションでどこからがノンフィクションなのか分かりかねましたが、とても惹きつけられて、よく読んだものです。何故か? それは、この漫画の背景に
「芸は客が育てるもの」
との精神が貫かれていたからです。・・・素人は、せめてそうした客でありたい。

ブログは井戸端会議の延長なのでしょう。誰かが
「あのコンサートは良かった」
とか
「この演奏家、よく分かんないけど素敵なんだよね」
とか、あるいは
「いやあ、こんないい曲をあんな演奏でやられたんじゃなあ!(例:当ブログのSound-sumples)」
と、(中傷になってはいけませんが)活発に紹介されたり、それを読んで興味をひかれたりすることで、私たち素人が、たとえわずかでも、日本の音楽家を支える力の担い手になる・・・特に、素敵だと思った音楽家から目を離さず、ひたすら純朴な気持ちで「追っかけ」を続けることが、ひいては<クラシック>に限らず、また音楽家のためだけでもなく、音楽そのものがこの国の人たちの心にいっそう染み込んで行く下地になれば素晴らしいなあ、と、そんなことを思っている次第です。

長々、屁理屈ですみません。

最後に。
森さん(国内演奏会情報:個人ファンが作成)が海外でしか成長、活躍出来ない事態になったら、これは優秀な日本の野球選手が大リーグにばかり行ってしまうようになるのと、きっと同じです!
諏訪内晶子さん、五嶋また然り!
かたや国内には、茂木大輔さんのように、日々の思いをブログに素直に綴り続けている方もいらっしゃいます。
いい音楽を、それだけで素直に「いい」と言い切れば、後は何もいらない、そんな土壌が出来上がることを、心から楽しみにしたいと存じます。

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コメント

kenさん、コメントをありがとうございます。

なお、トラックバックを頂いたとのことですが、あいにく、私のサイトのTB一
覧に含まれておりません(こうしたことは、ココログでは、過去にも経験した
ことがあります。多分、システム上の問題だと思います)。そして私のサイト
からもTBさせていただいたのですが、貴サイトにはすぐには反映されません。
時間をおいてから突如、反映されることがありますので、これは、暫く様子を
見たいと思います。(2006年09月23日12時30分現在)

駄文をお読みいただいてご趣旨をご理解下さったようで有難く存じます。「ド
ミンゴに見いだされたからすごい。」
「カーネギーでリサイタルを開いたから、一流」、という考え方はしていない
つもりです。

敢えて言うなら、逆でしょう。上手いからコンクールで優勝したり、カーネギー
デビューが可能なわけです。

私はこのような、形式的、世俗的評価基準をわざと使っております。

kenさんは、もっと多くの人がクラシックを聴いてくれないか、という私と近
い気持ちをお持ちのようです。

私のサイトの過去ログ(クラシック、クラシック音楽のカテゴリー)をご覧頂
くと分かると思いますが、クラシックマニアがコンサートに行って感想を綴る
サイトとは、書き方が違います。

押しつけがましくならないように、この音楽(CD)良かったら聴いてみてくだ
さい(森麻季さんの稿はもう少し強引な書き方になっていますが)、という語
り口になるように心がけてきました。

おこがましいようですが、それまでクラシックを聴いたことがない方から、な
んども、「薦められたのを聴いたけど、実に良かった」というメールを頂戴す
ることがありました。有難いことです。

そして、森麻季さんを紹介するときに、実際の音声ファイルをアップロード出
来ればそれに越したことはありませんが、勿論それは違法行為なので、文章で
演奏の素晴らしさを表現するしか手段がありません。

しかし、素人の私がいくら森さんが上手いと書いても、常連の読者の方はさて
おき、初めてご覧になる方は、私を信頼する根拠がないのですから、このよう
なときは、「ドミンゴのコンクールで優勝し、カーネギーでデビューし、海外
のオペラハウスで歌っている人なんですよ」という書き方が、easygoingです
が、最も手っ取り早い方法なのです。それが、kenさんが「侘びしくてならな
い」とお感じになった、あの一節を文章に含めた理由です。


クラシックを一般の人に広めようと言っても限度があります。ずっと昔山本直
純さんが「オーケストラがやってきた」というクラシック入門番組を十数年
TBSで毎週日曜日に放送していました。テレビの電波に載せるのは、不特定多
数の人々にクラシックに触れて貰う一番の方法ですが、例えば「N響アワー」
はもともとクラシックを好きな人しか見ません。山本さんのような人がいない
のです(ご指摘の通り茂木さんなどの活動はありますが、電波に乗ることはあ
りません)。

そしてとにかく何が何でも視聴率優先の民放がクラシックをゴールデンタイム
に取り上げる可能性は殆どゼロに近い。

ですから、私はブログで取り上げるようにしております。

但し、クラシックが非常に多くの人に聴かれる世の中は来ないと思います。ヨー
ロッパですら、限られています(ロンドンに4年ほどいたので、わかります)。


クラシックの「市場開拓」は確かに大切です。しかし、芸術が大衆に迎合して
はいけないと思います。そこが難しいところです。

それでも、昔に比べると(失礼ながらkenさんのお歳が分からないので)、随分、
各演奏団体は努力していると思います。

「N響ほっとコンサート」
http://jiro-dokudan.cocolog-nifty.com/jiro/2006/09/nn_a372.html

など、以前は考えられなかったことです。

長くなりました。

今後とも、よろしければ駄文にお付き合いいただければと思います。

それでは、失礼いたします。

投稿: JIRO | 2006年9月23日 (土) 13時13分

JIROさん、丁寧かつ深いコメントありがとうございました。貴ブログの方へコメントを綴らせて頂きましたが・・・ご指摘の様々な点、本当に難しい話だなあ、と、呆然とした次第です。心から御礼申し上げます。

投稿: ken | 2006年9月23日 (土) 16時29分

初めまして。ブログ初心者です。
先日、トップランナーに森麻季さんが出演していたのを思い出し、記事を読ませて頂きました。
まったく偶然ですが、その時以前録画していた古いビデオを再生して見ていたのですが、そこで森麻季さんが歌っていたのです。
2000年5月のN響定期演奏会でした。
曲はモーツアルトのモテット(踊れ、喜べ、幸いな魂よ)です。ハレルヤのフレーズが印象的な曲です。
盛んな拍手でした。
その頃から、活躍していたのですね。
偶然が面白かったので、コメントしてみました。

投稿: 104ナカタ | 2006年9月30日 (土) 11時44分

104ナカタ様、コメント有り難うございました。
・・・偶然、って、心に残りますよね。
でも、偶然、で、こんな駄文を読んで下さって、コメントまで下さるなんて奇特です! 心から御礼申し上げます。
いい音楽家はみんなで応援しましょうね!

投稿: ken | 2006年9月30日 (土) 12時27分

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◆こんなに上手い人を聴いていなかったとは、不覚。 森麻季(もり・まき)というソプ [続きを読む]

受信: 2006年9月23日 (土) 12時06分

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