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2006年8月 2日 (水)

「長い休符」の過ごし方(5)

トロンボーンについては、この楽器が生まれて以来、必ずアンサンブル楽器として使われており、用途は軍楽以外は専ら教会音楽だった、という事情が絡んできます。聴いた限りでは、デュファイのミサ曲以後、合唱のアルト以下の声部の補強に使われている例が多く(もっと前もあるのかも知れません)、モーツァルトのミサ曲、レクイエムでも同じことが踏襲されています。モーツァルトは1789年に「メサイア」の編曲も行っており、その際、ヘンデルは行なっていなかった合唱の補強を、やはりトロンボーンに受け持たせています。
したがって、トロンボーンには神聖なイメージが付き物であり、「幻想交響曲」のような思い切った使い方、あるいは先行するベートーヴェンの「田園」の嵐の雰囲気を出すための使用、は、19世紀でもまだ相当特別視されていたものと思われます。
ノリントンが最近ブラームスの交響曲全集をDVDで出しましたが、それに収録されたインタヴューで、第1交響曲の終楽章のトロンボーンによるコラールがいかに重要であるかを語っています。このコラールがあることによって、ブラームスは彼自身の「苦悩」を乗り越えた表明をする、という趣旨だったかと受け止めております。
ここまで見てくると、チューバやトロンボーンという楽器が、作曲者の明確な意思で、非常に重要なポイントで用いられてきたのだということが伺えます。

トランペットは、そういう意味では、作曲者に取り入れてもらった頻度こそ高いものの、いちばん辛い過程を辿っているかも知れません。
モーツァルトの「メサイア」編曲を聴くと、現代の我々には木管楽器やトロンボーンによる補強があまりに多すぎる気がするはずですが、もう一つ気づくのは、
「あれれ、トランペットがオリジナルほど活躍しない・・・」
ハレルヤコーラスからでも、トランペットのあの輝かしい高音が無くなっています。モーツァルトが編曲した当時、イギリスではまだオリジナルが演奏し続けられてたということですから、モーツァルト編曲版にはウラがありそうです。
この当時、ドイツ圏ではとくにトランペットとホルンの技術がバロック期に比べてかなり衰退していた、というのが、「ウラ」の正体だと言われています。かつ、トランペットは原則としてティンパニと一緒に使われるか、ティンパニを入れられない部分ではティンパニのかわりを務める役を担う、というのが専らになってしまった。
ですから、極端にいえば、古典期のトランペットは「打楽器」として考えなければならない、と相成るわけです。・・・それでも、私はベートーヴェンの第4交響曲第2楽章のトランペットが大好きですけれど・・・私が弁解しなくちゃならない気分になる必要はないか!

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