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2006年7月12日 (水)

モーツァルト一家ウィーンへ(2)

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K.50 "Bastien und Bastienne(バスティアントバスティエンヌ)"

この有名なヴォルフガング初のジングシュピールについては、出来るだけ簡単に済ませましょう.
「バスティアンとバスティエンヌ」がルソーの「村の占師」のパロディだということはよく知られた事実です.しかし、海老澤敏教授によると, レオポルドが「わが子息の全作品リスト」に"Operetta Bastien und Bastienne, ドイツ語テキストによる, 最近ヴォルフガングがウィーンで音楽を付けた "と記している以外に、この曲に関するはっきりした資料は存在しないとのことです.
最初のモーツァルト伝を書いたニッセンは, "Bastien und Bastienne"は当時催眠術で有名だったメスメル博士の注文を受けて作曲されたのだ、と言っていますが、それが事実かどうかは今日なお疑われています。

"Bastien und Bastienne"は「インテルメッツォ(幕間劇)」の系列に属するものであって、オペラ・ブッファ系ではありません. "オペラ・ブッファ"は歴史的には正統オペラから分岐したものです(たとえばまだセリアとブッファが分化する以前の作、モンテヴェルディ「ポッペアの戴冠」第1幕第2場の兵士のやり取りや、第2幕第8場をご参照下さい。ここにはコミカルな要素が取り入れられています。最近気鋭の日本の音楽学者さんで、最近までいいなあ、と思っていた方が、ある著書で「オペラ・ブッファの起こりはインテルメッツォだ」とお書きになっていて、私は瞬時にその方への敬意を失ってしまいました!). "Bastien und Bastienne"は、従って、内容・質ともに"La finta semplice"より気楽なものになっています.
前項を再度ご覧頂ければあり難いのですが、"La finta semplice" は"Basten und Bastienne"に比べ、かなり厳密に設計されています. 調整の推移を観察してみましょう. Act1では, 前半部では調は平行的に変化し、後半では下属調へ向かっての動きとなります.少しずつ場面の枠を広げるのですが、芝居はまだ本格的には開始していないんですよ、という設計です。第2幕は属調的推移で終幕へ向けての期待が高まるよう配慮されています. Act3では, 最初の3曲はC を主音とした長調・短調に静的に留まって緊張を高め, 突如幸せに満ちたニ長調に転じ, ついにはト長調 (ニ長調の下属調) に落ち着かせて、お客様には安心してお帰り頂く、という具合です。

"Bastien und Bastienne"のほうは、こんな具合です:
(Bn=Bastien[tenor], Be=Bastienne[soprano], C=Colas[bass])

Intrada[G]-1.アリア(Be[C])-2.アリア(Be[F])-3.very short intermezzo[D]
-4.アリア(C[D])-5.アリア(Be[G])-6.アリア(Be[B])-7.Duetto(Be,C[F])
-8.アリア(Bn[C])-9.アリア(Bn[G])-10.アリア(C[c])-11.アリア(Bn[A])
-12.アリア(Be[F])-13.アリア(Bn,Be[Es])-14.Recitativo(Bn,Be[B])
-15.Duetto(Bn,Be[B])-16.Terzetto(Bn,Be,C[D-G])

ヴォルフガング はあらかじめト長調を中心に据え, 場面に合った関連調性へと気軽に移行できるよう仕掛ける腹積もりで臨んだようです.

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