« モーツァルト一家ウィーンへ(2) | トップページ | アンサンブル教! »

2006年7月12日 (水)

モーツァルト一家ウィーンへ(1)

"ショスタコーヴィチ5初見ポイント"を見るには, ここをクリックして下さい .
"第43回TMF定期演奏会反省"を見るには, ここを クリックして下さい.

K.51 "La finta semplice"(「みてくれの馬鹿娘」)

モーツァルト一家は1767年9月10 日、ふたたびザルツブルクを離れ、 ウィーンに向かいます.
様々な事情でウィーン へはすんなり到着できませんでしたが、それについては伝記類をお読み下さい.
それに加え, 今回の旅では, ウィーンの皇室も人々もモーツァルト一家への関心どころではありませんでした(天然痘の流行も多いに影響してのことでした)。
窮余の策として、父レオポルドはヴォルフガングにオペラ・ブッファを作曲させる計画を立てました .
入手したリブレット は "La finta semplice"というタイトルでしたが、これは4年前にヴェネツィアでS.Prilloという人物が作曲・上演し、失敗に終わったものでした(rA.Einsteinの"Mozart, his life and works"で触れられています).
おそらくこうした理由からか、ヴォルフガングはなんとかうまく作曲をし遂げたものの, "La finta semplice"はユーモアに溢れた作品とは言い難いように、私には思えます。もちろん、これは作曲者の責任ではありません。 彼も父も、このリブレットが過去の失敗作のものだということは全く知らなかったのですから. これはもしかしたら、ヴォルフガングのオペラを最初から上演などしたくなかった興行主の策略だったのかも知れません!(海老澤敏「モーツァルトの生涯」によると、興行主は当時経営難だったようです。)

ヴォルフガング はK.45の交響曲(1768年1月作曲)をこのオペラの序曲に転用しました. またアリア No.7 は 「第一戒律の責務」K.35のキリストの霊のアリア( No.7)を短縮したものです."La finta semplice"の作曲は1768年7月に終わりました.
結局なぜウィーンでこのオペラが上演されなかったかについては伝記類でお読み下さい. すみませんが、ここではそれについて言及しません。
"La finta semplice"は翌年ザルツブルクで初演されることとなります.

オペラのストーリーは、そう混み入ったものではありません。.
二人の兵,フラカッソ(F,tenor) とその下士官, シモーネ(S,basso) は女嫌いのドン・カッサンドロ(C,basso) と、その馬鹿な弟のポリドーロ(P,tenor)が営む宿に滞在しています.カッサンドロにはジャチンタ(G,soprano)という妹が居り、ニネッタ(N.soprano)という家政婦も雇っています. フラカッソとジャチンタ, シモーネとニネッタのそれぞれが相思相愛 . けれどもカッサンドロの厳しい監視下にあります. そこで, フラカッソは妹のロジーナ(R,soprano) を呼び寄せます。ロジーナは賢い女性で、カッサンドロの宿に着くや否や, 「お馬鹿さん」になりきり, カッサンドロの用心をほぐしてしまいます. その上ポリドーロがロジーナをひと目見ただけで惚れ込んでしまいます. ロジーナはカッサンドロとポリドーロを手玉にとりますが、最後はカッサンドロの心のこもったプロポーズを受け入れます. ポリドーロ以外, すべてのカップルがハッピーエンドを迎えます.

リブレット最大の欠点はロジーナのキャラクターが際立たないことでしょう. また、物語は観客にインパクトを与えられるような目まぐるしい場面転換のセンスを欠いています。

オペラの構成は下記の通り (レシタティーヴォを除く) :

シンフォニア(序曲)
[Act1]
1.Coro(N,G,F,S) D dur(Allegro[3/4],87bars)

2.アリア(S) C dur(Tempo ordinato[4/4:14bars],Allegro[2/4:16bars],Tempo primo[4/4:19bars],Allegro[2/4:16bars],Tempo primo[4/4:12bars]...Total:77bars)

3.アリア(G) F dur (Allegro grazioso[3/4:60bars],Allegro[2/4:31bars],Tempo primo[3/4:34bars],Allegro[2/4:32bars]...Total:157bars)

4.アリア(C) D dur(Allegro non molto[6/8:80bars])

5.アリア(F) G dur(Allegro moderato[2/4:161bars])

6.アリア(R) A dur(Andante[2/4:87bars])

7.アリア(P) B dur(Allegro[2/2:126bars])

8.アリア(C) F dur(Moderato e maestoso[2/2:125bars])

9.アリア(R) Es dur(Andante un poco adagio[2/2:52bars], Allegro grazioso[3/4:31bars], Andante un poco adagio[2/2:47bars], Allegro grazioso[3/4:35bars]...Total:165bars)

10.アリア(N) Tempo di Menuetto(B dur[3/4:62bars])

11.Finale(R,N,G,F,P,S,C)
D dur (Un poco adagio[2/2:2bars,R] , Allegro[2/4:61bars,R,F,P,N],)
G dur(Allegro[3/8:56bars,C,P,R,N,F],Andante[2/4:9bars],Allegro[2/4:71bars])
G dur(Simone appears.Molto allegro[3/8:150bars])...Total:349bars

[Act 2]
12.アリア(N) G dur (Allegretto[2/4:72bars])

13.アリア(S) D dur (Allegro[3/8:174bars])

14.アリア(G) A dur (Allegro comodo[2/4:26bars],[6/8:24bars],[2/4:16bars],[6/8:31bars]...Total:97bars.

15.アリア(R) E dur(Andante[4/4:62bars])

16.アリア(C) C dur (Allegro[4/4:62bars])

17.アリア(P) G dur (Adagio[2/2:16bars],Allegretto[3/8:30bars],Moderato[2/4:19bars],Adagio[2/2:10bars],Allegretto[3/8:30bars],Moderato[2/4:20bars]...Total:125bars)

18.アリア(R) F dur(Allegro grazioso[6/8:44bars],Allegretto[2/4:46bars],Tempo primo[6/8:41bars],Allegretto[2/4:47bars]...Total:178bars
19.Duetto(F,C) Allegro [4/4:87bars]
20.アリア(F) B dur (Grazioso[2/4:92bars.from bar 69,Allegro])
21.Finale:G dur,413bars.(すみません、詳細を省きます)

[Act 3]
22.アリア(S) C dur(Un poco Adagio[2/4:66bars])

23.アリア(N) C dur(Tempo di Menuetto[3/4:124bars])

24.アリア(G) c moll(Allegro[4/4:91bars])

25.アリア(F) D dur (Andante maestoso[2/2:132bars],Tempo di Menuetto[3/4:39bars],Tempo primo[2/2:64bars]...Total:235bars)

26.Finale : G dur ,441bars(すみません、詳細を省きます)


音楽上の問題は:
(1) No.7(ポリドーロのアリア)前後のレシタティーヴォが長過ぎる。アリアの前に150小節. アリアの後に134 小節もある. しかも、レシタティーヴォになっている場面は、実は喜劇の大きなポイントである、ロジーナがポリドーロとカッサンドロの前に現れてお馬鹿さんに成り切る部分。それがレシタティーヴォで延々と扱われたのでは、お客は飽きるでしょう. 世慣れた作曲家ならリブレット作家に変更をさせることも出来たのでしょうが、 ヴォルフガングは当時の状況下と年齢から、そこまで出来ないでしまったのでしょう。
(2) 作曲者がパイジェッロとかロッシーニ(まだ生まれていないか・・・)だったら, アリア No.8(カッサンドロ) はもっと面白く仕上げたのではないかと思います("blo,blo.blo..."). ヴォルフガングの付けた節はいささか単調です.

これらの諸問題にも関わらず, ヴォルフガングは出来うる最大限の努力をしたと言って良いでしょう.
どの幕のフィナーレもたいへん活き活きしていて彩り豊かです. アリアの作曲にもキャラクター作りへの神経が行き届いて、かつ"ダ・カーポアリア"になることを避けています. どの曲のメロディも親しみ深いものです. 場面によってテンポも自在に変化させています(ヴォルフガングはK.35 とK.38を通じて既にこのテクニックを身につけていました). これらのことだけでも、驚くべき価値は充分にあります。 "La finta semplice"の作曲者は、このときたった12歳だったのですから!

|

« モーツァルト一家ウィーンへ(2) | トップページ | アンサンブル教! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/95716/2616749

この記事へのトラックバック一覧です: モーツァルト一家ウィーンへ(1):

« モーツァルト一家ウィーンへ(2) | トップページ | アンサンブル教! »