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2006年6月28日 (水)

K.34,35,36,38 短い帰郷の間に(3)

K.38 「アポロとヒュアキントス」

(この記事、誤りがありますので、後日修正します。)
1767年5月12日に初演された「アポロとヒュアキントス」ではK.35よりも技巧的な書法が とられています。作品全体は(おそらく演じるのがギムナジウムの生徒たちだったので)まだ充分に劇的とは言えません。それでもメリア役のソプラノが歌うアリアNo.4の独唱パートも素晴らしく、さらにNo.6から最後のNo.9に至る後半部には思わず唸らされます。
(ちなみに、初演したのがどんな生徒あるいは教官、研修生だったかは全て記録が残っており、台本に現れない・・・つまりまったく歌のない「アポロへの犠牲」役の二人の名前と年齢まで分かるのですから愉快です。)・・・付記7月7日:今日「超越の響き モーツァルトの作品世界」海老澤敏著 を入手。「アポロへの犠牲」は、「犠牲を捧げる祭司」の読み誤りであることを知りました。すみません。どいつ語モットオベンキョシマス。)

こちらも、アリアなどの調性の推移を追いかけてみましょう。ただし、編成、速度記号や小節数は今回は省略します。

<PROLOGUS(第1幕)>
Intrada(序曲):D dur[3/4]
No.1: 合唱(D dur [2/2])-Solo(オエバロス, G dur[3/4])-Chorus(D dur [2/2])
No.2 :ヒュアキントスのアリア(B dur[2/4]-F dur[3/8], then "da capo")
No.3:アポロのアリア(E dur[3/4]-E dur[2/4],then "da capo")
No.4:メリアのアリア(D dur[3/4]-G dur[3/4],then "da capo")
No.5:ゼヒュルスのアリア(A dur[3/4])
No.6:二重唱(メリア & アポロ. F dur[3/4]-B dur[2/4,アポロのSolo]-Fdur[3/4])
<CHORUS II dus(第2幕)>
No.7:オエバロスのAria(Es dur[3/8]-c moll[2/4],then "da capo")
No.8:Duett(メリア & Oebalis. C dur[2/4])この二重唱は、すぐ後にK.43の第2楽章となります。
No.9:Terzetto(メリア,アポロ and オエバロス. G dur[3/4])

D-D-B-E-D-A-F-Es-C-Gという推移です。 K.35と似ていて、計画性が伺われます。ただ、最後のト長調は、K.35に比べて、最後を華々しく効果を狙ったものとして注目しておくべきかと思います。

物語のオリジナルはオイディウス「変身物語」第10巻(岩波文庫では下巻の68頁から72頁)にあります。
しかし、オイディウスの「変身物語」には オエバロス(ヒュアキントスとメリアの父), メリア(ヒュアキントスの妹)やゼヒュルスは登場しません。他の伝承ではゼヒュルスがヒュアキントスばかり贔屓するアポロをねたみ、西風を操って(ゼヒュルス=ゼフュロスは西風の神です)アポロの投げた円盤をヒュアキントスに当て、死に至らしめることになっているそうです(私の探した限りでは出典は見いだせませんでした)。それでも、ゼヒュルスはK.38の物語のようなアポロのの恋敵、ということにはなっていません。
新モーツァルト全集の註によると、最初の台本用素材は「アポロとヒュアキントス」の話ではなく、ヘロドトスの「歴史」第1巻中の次のような話でした。 クロイソス王の子息アティスが、結婚を間近に控えているときに、イノシシ退治に出掛け、従って行った仲間が誤った方向に投げた槍で背中を貫かれて死んだ、というものです(ヘロドトス「歴史」I-35からI-45を参照。岩波文庫では上巻)。
したがって、台本はこの二つの話が組み合わさったものとなっています。
なお、たどった限りではヒュアキントスの親の名はオエバロスではありませんでしたし、弟の名は掲載されているものの、姉妹についての言及は見いだせませんでした。また、アポロという神の性質も大変に興味深いのですが、以上は話の本筋からあまりにそれますので止めておきます。、とくにアポロについてご興味のある方は「ホメーロスの諸神讃歌」(ちくま学芸文庫)をお読みになることをお薦めします。
なお、台本はラテン語です。ラテン語劇の上演はギムナジウムの伝統行事だったそうですが、そうなった経緯にはK.35同様、イエズス会の強い影響が伺われます。
(モーツァルトの伝記類をご参照下さい。)

<物語>
アポロが宮廷の大事な客として、また メリアの婚約者としてオエバロスに招かれてやってきます。アポロはオエバロスの息子、ヒュアキントスと以前から大変仲がいいのでした。そこでアポロとヒュアキントスはさっそく連れ立って円盤投げに出掛けます。メリアに片思いのゼヒュルスは、二人の後をこっそり追い、アポロの投げた円盤を風であやつってヒュアキントスの頭に当てます。
ゼヒュルスはその足でオエバロスとメリアに「ヒュアキントスが死にそうだ」と報告に戻ります。
あとから失意のアポロが戻ってきますが、メリアは彼を強く非難します。
しかし、オエバロスは瀕死の息子から真犯人がゼヒュルスであることを知らされます。 ゼヒュルスは行方をくらまし、メリアはめでたくアポロと結婚します。



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