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2006年6月28日 (水)

K.34,35,36,38 短い帰郷の間に(1)

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K.34 & K.36

K.34(Offertorium"Scande coeli limina")がヴォルフガングの真作か否かははっきりしていません。自筆譜が残っていないのです。 (最初期の写譜は1988年に見つかっています。)
このオッフェルトリウムは79小節のアリア(ソプラノ独唱。Andante,2/4)と75小節の合唱(ヴィオラパートのない、クラリーニ2本とティンパニ(C,G)を含むオーケストラが伴奏)から成っています。
H.Federhofer (1962) , A.Einstein やCarl de Nys(1981) は K.34が当時のフランス風のスタイルによっていると見ています。同時に3人とも、合唱が歌うべき歌詞を独唱に割り当て、独唱(それもバス)に当てるべき歌詞を合唱に歌わせている、というこの作品の妙な構造に言及しています。(以下の歌詞翻訳をご覧下さい。)

<Aria(典型的な"ダ・カーポ" アリア)>
Scante coeli limina, (天の高みへと昇り給え,)
anima sanctissima,(崇高なる精神よ,)
per lampadum luces (灯火の光もて)
quos superi duces itineris obviam dant.(天はそなたを迎え入れる)

Sed questo? quid nati? (だがいかにして、いかなる秩序が,)
qui tacti amore,afflicti dolore, (密やかなる愛と傷つけられた痛みもて,)
hic orphani stat.(この身無し児を認めるのか?)

<Chorus>
Cara o pignora, protegam vos, (愛しき子らよ, 私がお前を守ろう,)
Coeli ut partia societ nos. (天にて我らが結ばれるように.)

新モーツァルト全集はアリアの旋律がK.330(ピアノソナタ、第1楽章) や K.358 (4手のためのピアノソナタの、おそらく第2楽章)と似ているとコメントしています。

ところで、姉ナンネルはヴォルフガングが1766年、ザルツブルクへの帰路、バイエルン滞在中に"Stabato Matel"を作り上げたと言っています。しかし、該当作は全く見当たりません。H.Federhoferは"Stabato Mater "が作られたというのはナンネルの記憶違いで、事実はゼオン修道院から依頼されて作ったこのK.34 がそれに該当するのではないか、と推測しています。ですがEinsteinによれば、ヴィオラのないオーケストレーションはザルツブルクの宮廷オーケストラの為の作品であることを表している、と示唆しています(実際、ザルツブルクで作られたヴォルフガングのミサはヴィオラパートを欠いており、Einsteinの発言の証左となっています)。

いずれにせよ、K.34 は K.33("Kyrie")共々、評価の低い作品です。

それはともかく、ザルツブルクへの帰郷後、ヴォルフガングは将来への布石となるべき3つの重要な仕事をしています。
一人前の作曲家とみなしてもらえるには、カンタータやオラトリオ、オペラといった、きちんとした声楽曲を作れるようになっていなければなりませんでした。
ただし残念ながらザルツブルクには少しでも規模の大きいオペラを上演出来るような常設会場はありませんでした。そこで、ザルツブルク向けには、ヴォルフガングは劇場用作品は2、3の小規模なものを残しているに過ぎません。

ザルツブルクでの初仕事は"Or che il dover"-"Tail e contanti sono(務めが我を強いる今こそ〜かくも偉大なるはジギスムントの事蹟にして:タイトルの訳は西川尚生氏「モーツァルト」による)"K.36でした。
これは「リチェンツァ」という類いのもので、レシタティ−ヴォとアリアからなりますが、特定の人物を讃える目的で書かれるのが通常の「レシタティ−ヴォとアリア」と異なります。
"Or che il dover"-"Tail e contanti sono" はザルツブルク大司教シュラッテンバッハの叙階式記念日(1766年12月21日)の為の作品です。
43小節の劇的なレシタティ−ヴォ・アコンパニャートと115小節の壮麗なアリアからなり、演奏に9分程度を要しますが、ヴォルフガングにしては個性的な作品とは言えません。
それでも、このK.36が彼の実り多き将来への第1歩となるのです。

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