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2006年6月 1日 (木)

"ロンドンの楽譜帳" K.15a-K.15ss(1)

K.16になって、いよいよモーツァルト最初の交響曲に触れることができるわけですが、その前に、彼が残した「ロンドンの楽譜帳」を忘れるわけにはいきません。
「ロンドンの楽譜帳」は、1764年8月から9月末にかけてヴォルフガングが(おそらく自主的に)試みた39の習作及び3つの習作断片からなるものです。何故こんなものを残したか・・・一家の大黒柱である父レオポルドが重病に臥し、一家はロンドンでの興業活動を休止せざるを得なくなったからです。
幸いなことに、レオポルドは無事回復し、彼らは旅先で路頭に迷わずにすみました。
しかし、後世の我々にとってもっとありがたいのは、「ロンドンの楽譜帳」で様々な実験を自主的に行った8歳のヴォルフガングが、ここで急速な技術的発展と楽想の深化を達成したことです。
「ロンドンの楽譜帳」の成果が後の彼の傑作群を予告していることは、以下のような例から伺うことが出来ます。

たとえばK.15p("ソナタ楽章ト短調")には、これまでの彼の作品には見られなかった激しい情熱を感じ取れます。この習作は彼の最初のト短調作品であることも念頭に置いて下さい。

また、いくつかの小品の中では対位法の試みもすすめています( cf.K.15f, K.15h, K.15z, K.15hh)。
全般に和声的な色付けも豊かになっていますが、それはK.6-9のような「音の付け足し」によるものではなく、活き活きとした動きを持った、私達の耳に自然に聞こえる方法によっています。

最も大きな特徴は、作品規模の拡大傾向がみられることです。K.15t は98小節、 K.15v は103小節となっています((2)をご参照下さい)。これまでで最も長い作品、というわけではありませんが (K.14の第2楽章は160小節でした)、父の指導によらず自主的に作ったものとしてはK15t と K15vが実質上ここまでではヴォルフガングの最長作品だといっていいでしょう。内容もK15までに比べると一層充実しているものと思います。

「ロンドンの楽譜帳」は、日本版でもよい楽譜がでています。私のように1小節ごと(正直に言えば1拍ごと)つっかえつっかえ弾くような人間にも充分に楽しめる作品群です、是非お弾きになって味わっていただければと存じます。(廉価なものではナクソス盤のCDも出ていますし、幾つかの「モーツァルトピアノ作品集」にも収録されているのを確認はしています。)



Mozart: London Sketchbook (1764/5)


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販売元:Naxos

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