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2006年6月30日 (金)

ザルツブルクでの他の成果(1767年)

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短い帰郷の間に、ヴォルフガングは少なくともあと2つ、音楽上で重要なことをしています。

ひとつはカンタータを作ったこと。"墳墓の音楽"K.42,がそれですが、おそらくこの年の聖週間の為に作曲され、4月7日の聖金曜日にザルツブルクの大聖堂、あるいは他の教会で演奏されたと考えられています。
台本はドイツ語、という点がカトリック圏であるザルツブルクでは珍しいことかもしれません。内容は具象的でない受難劇、とでもいうべきものです。
カンタータの編成は
Solo soprano(天使)
Solo Bass(魂)
Chorus (四部合唱)
2Ob(最後の合唱にだけ使われます), 2Hr, 2Vn, Vla, Vc e Basso, Organo

Mozartk421
最初のレシタティーヴォの自筆譜(クリックすると拡大します)

音楽の構成は以下の通りです。
1.Recitativo(solo Bass)
2.Aria(solo Bass,Allegro, D dur[2/2], 196bars.
〜中間部[Bars 119-163] は印象的な、激しいニ短調です。
3.Recitativo(solo Soprano)
4.Aria(solo Soprano, Andante Alla breve,g moll[2/2]74bars. )
〜穏やかながら美しいアリアです
5.Recitativo acompagniato(solo Bass)
6.Duetto(Andante, Es dur[3/4],142bars)
7.Recitativo(solo Soprano)
8.Coro(速度表示等はありません。 C dur[3/4]187bars)

基本的な調の構成は D-g-Es-Cです。

このカンタータの新しいスコアは2005年にCarus (51.042/07)から出ています。
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一方で、ヴォルフガングは、父の指導のもと、4つの "パスティッチョ"協奏曲とでも言うべき編曲作品を仕上げています。
どのクラヴィア協奏曲も3楽章からなっていますが、どの楽章も自身の作ではなく、おそらく当時高名だった作曲家たちのものです。
研究者たちのおかげでこんにち私たちはオリジナル作品がなんであるかを(K.37の第2楽章を除いて)知っています。けれども、そのオリジナルそのものを聴くことは、音楽学の門外漢で素人たる私たちには困難です。

K.37
1.Allegro, F dur[4/4],168bars:Hermann Friedrich Raupach, op.1-5
2.Andante, C dur[3/4],66bars:(Unknown)
3.Allegro, F dur[3/4],189bars:Leontzi Honauer, op.2-3

K.39
1.Allegro spiritoso, B dur[4/4],133bars:Hermann Friedrich Raupach, op.1-1
2.Andante staccato, F dur[2/2], 92bars:Johann Schobert, op.17-2
3.Molto Allegro. B dur[2/4],121bars:Hermann Friedrich Raupach, op.1-1

K.40
1.Allegro maestodo, D dur[4/4], 152bars:Leontzi Honauer, op.2-1
2.Andante, A dur[2/4],72bars:Johann Gottfried Eckard, op.1-4
3.Presto, D dur[3/8], 224bars:Carl Philipp Emanuel Bach, Wq117

K.41
1.Allegro, G dur[3/4], 193bars:Leontzi Honauer, op.1-1
2.Andante, g moll[2/4], 81bars:Hermann Friedrich Raupach, op.1-1
3.Molto Allegro, G dur[3/4],140bars:Leontzi Honauer, op.1-1

C.P.E.Bach以外のオリジナル作者はモーツァルト一家が西方旅行中に面識を持った人たちばかりです。
モーツァルト親子がどういう方針で編曲に臨んだかは、オリジナルの楽譜を知らない私にはコメント出来ませんが、おそらく父レオポルドは、オリジナル作品の第1部分を使って序奏部を作ること、ただし、序奏部ではオリジナルの第1部に含まれる属調への転調をしないこと、というアドヴァイスはしたことでしょう(K.107に触れる際は1つだけ原曲と対比出来るサンプルがありますので、そのときあらためて考えてみたいと思います。)

K.37の第2楽章にレオポルドが施した修正が分かる自筆譜のサンプルをお目にかけましょう。
(クリックすると拡大します。)
Mozartk372

ちょっと見にはヴォルフガングのもともとの思いつきの方が面白いんじゃないか、と思うのですが、実際に弾いてみると、そちらは協奏曲のなかで効果的に響かないことが判明します。レオポルドの修正がいかにふさわしいものだったか、思い知らざるを得ません。
1989 年4月21日に収録された映像(「旅路のモーツァルト」ディスク1収録)、ハイドルン・ホルトマンは基本的にはレオポルドの修正に添って演奏していますが、ヴォルフガングのアイディアにも配慮することを忘れていません。こうした姿勢で演奏に臨んだ例は他の録音などでは聴いたことがなく、「脱帽!」でした。

さて、モーツァルト一家は9月11日に再びザルツブルクを離れます。すでに11歳になったヴォルフガングですが、神童を売りにする時期は過ぎつつあり、それを見込んでなるべく早く、一層ふかい教育を彼に施すのがレオポルドの目的だった、と言われています。
これまでの最初期作品も、眺めてくると発展過程は興味深いものでした。
いまのところ、彼は形式観を身に付け、台本のある音楽も無難にこなすほどの力量まで備えたところです。
この先は、そんな彼に複雑な社会条件が試練をもたらしていきます。
どんな条件が、どんな作用を彼の音楽にもたらしていくのでしょう?
・・・きちんと見渡せる自信は私にはまだまだありませんが・・・



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